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■臓器移植法 「12年も何してた? A、B、C、D…「死の定義」を駆け込み採決」


WHOは、渡航による臓器移植を制限し、

自国で移植を行うことを

勧めています。




今回は、新型インフルによって指針の決定が

1年伸びる見通しです。




現行の臓器移植法では臓器提供のできない

小児科の患者さん。

制度のはざまにあって、

救命可能な生命は、どのようになるのでしょう?









【日本の議論】12年も何してた? A、B、C、D…「死の定義」を駆け込み採決
2009.5.10 18:00

 臓器移植法の改正案が今国会中の5月下旬にも採決される可能性が出てきた。脳死を「人の死」と認めた移植法施行から12年。この間、わが国の臓器移植をめぐっては、圧倒的なドナー不足や子供の脳死の問題などが度々指摘されてきたものの、法的には漫然と放置されてきた経緯がある。なぜ今なのか。「生」と「死」の境界線をめぐる議論を紹介する。


「内圧」と「外圧」

 改正論議の背景には「内圧」と「外圧」の2つの要因がある。

 まず、「内圧」。きっかけとなったのは、4月3日の自民党の大島理森国対委員長の発言だった。同党役員連絡会で大島氏は「今国会で結論を出すべきだ」と語った。

 現行法は、「施行後3年の見直し」が規定されていたにもかかわらず、結果的には12年間にわたって本格的な議論はほとんど行われてこなかった。

 大島発言の裏にあると噂されているのが、大島氏と親しく、自らも生体肝移植を受けた経験を持つ河野洋平衆院議長の意向だ。

 自民党総裁も務めた河野議長は、今期限りでの議員引退を表明している。「自分の在任中に、ぜひ採決を」という意向が大島氏に伝えられたのではないかと見る向きは多い。解散、任期切れが間近に迫っている現状では、今の衆院議員らに「次期国会」はない。採決するなら今国会だ。

 野党は民主党の鳩山由紀夫幹事長が4月10日に、「党議拘束を外すなら審議を進めるべき」と採決に前向きな発言。採決に向けた流れが一気にできた。


消えた「外圧」

 改正論議を進める「外圧」は、「移植を取り巻く国際環境の変化」だ。

 昨年5月、国際移植学会は、横行する臓器売買に反対し、自国内で臓器移植を完結させるよう努めてもらう宣言を出した。その流れを受け、WHO(世界保健機関)が今年1月、移植で使う臓器の国内での「自給自足」を促す新指針を承認。5月18日からの総会で正式決定される見通しとなっていた。

 日本は、臓器提供者に比べて、待機者の方が圧倒的に多い。15歳未満の脳死の子供からは臓器提供ができないこともあり、現在の臓器移植法のもとでは「自給自足」はとても無理。死を待つしかないという危機感が、議員たちだけでなく、移植患者団体などを「法改正へ」と突き動かしてきた。

 ところが、国会での議論が熱を帯び始めようとしている5月7日。衝撃的なニュースが入った。WHOが、18日から開始予定の総会で、指針の討議を議題から外し、1年先送りすることを決めたのだ。WHO事務局が、新型インフルエンザ対策に追われていることが理由という。

 「外圧」が消えたことが、国内の議論にどう影響するかは、見極めにもう少し時間が必要となりそうだ。ただ、臓器移植を取り巻く環境に猶予が与えられたとしても、それは1年にすぎないことは、はっきりしている。


現行法の問題点

 現在の臓器移植法は、「脳死状態にある人が、臓器提供の意思を生前に書面で表示していた時に、家族が拒まない場合に限り、『脳死を人の死』として、臓器を摘出できるとする」ことを柱にした法律だ。民法の遺言規定にならって15歳を提供意思の線引きとしたため、15歳未満の子供は臓器提供できない点にも特徴がある。

 問題点の1つとして指摘されているのが、「伸び悩む脳死提供数」の実態だ。臓器斡旋機関「日本臓器移植ネットワーク」(東京)の調べでは、脳死臓器提供数は法施行から21年2月9日までで81件あり、345人の患者が臓器の移植を受けることができた。

 その一方で待機患者数は提供数を大きく上回っており、心臓移植を待つ患者だけでも4月現在で134人。うち5年以上待機する患者は24人もいる。

 世界各国に比べて日本の臓器提供数は少ない。日本移植学会によると、例えば、人口100万人当たりの年間心臓提供者は日本は0・05人。米国は10・1人で、日本より200倍も差がある。アジアでも、韓国1・3人、台湾1・8人と差は歴然だ。

 提供数伸び悩みの一因として、世界に比べて、現行法の提供要件のハードルの高さを挙げる声がある。WHOの現在の指針では、「本人の意思が不明の場合は家族の同意で臓器提供が可能」だが、日本では、本人の書面による意思表示が不可欠な要素となっている。


子供の移植にも論点

 脳死の子供から、臓器提供ができないことも改めて浮き彫りになっている。重い心臓病を持つ幼い子供は移植をする際、自身の体格に合う小さいサイズの心臓提供が必要となってくる。しかし、日本では15歳未満の子供の心臓は移植対象にならないため、海外に渡って移植するのが、事実上、助かる唯一の道となっているためだ。

 「日本人が日本人の手で助けられるような日本にしてもらいたい」。4月14日に憲政記念館(東京)でかれた臓器移植法の改正を求める決起集会。海外渡航移植のための募金活動を前に、生後9カ月の長女を亡くした岡田由紀さん(31)はそう訴えた。 

 日本移植学会の調査では、移植法施行から平成20年11月末まで、海外での心臓移植希望者で18歳未満の患者は98人で、うち57人が移植を受けた。ただ、19人が渡航前に、11人が渡航後待機中に亡くなっている。

 海外渡航移植は、乳幼児にとって、飛行機などを使った長時間・長距離の移動中にトラブルが発生する可能性もあり、特に補助人工心臓の装着が難しい乳児は「綱渡り」の状態という。渡航後もすぐに臓器提供者に巡り合うとも限らない。

 計1億円以上といわれる渡航・手術費用も患者家族には大きな負担になっている。費用工面のため、患者家族らは募金活動をして、寄せられる善意に頼らざるを得ないケースが多く精神的な負担は計り知れない。

 渡航先の米国で心臓移植待機中に亡くなった息子=当時(1)=の母親の中沢奈美枝さん(34)は、「亡くなる運命だったのであれば、日本で看取りたかった」と訴える。


4つの法案

 現在検討されている改正案は4本。そのうち、「A」「B」「C」と呼ばれる3つの改正案が、すでに衆院に提出されている。

 現行法の問題点の一つである「移植可能年齢」をめぐっては、「A案」は本人の拒否がない限り年齢に関係なく、家族の同意で提供できる。「B案」は意思表示の年齢を15歳から12歳に引き下げる。「C案」は年齢に関しても現行通り、さらに脳死判定基準を厳格化するという移植待機患者にとっては「後退」をにじませる内容。

 この3案に加え、自民、民主両党の衆院厚生労働委員会筆頭理事らを中心とした有志議員が4月下旬、4番目の改正案を「D案」としてまとめた。臓器提供の年齢制限を撤廃する一方、15歳未満の臓器提供は家族の同意に加え、病院の倫理委員会など第三者の判断を取り入れるといった内容。条件付きながら現在は認められていない15歳未満からの臓器提供が可能になる。

 いずれも、「帯に短し、たすきに長し」「一長一短」というのが、周囲の反響だ。

 「A案」には日本人の死生観にかかわる「脳死を一律に人の死」とすることを明記しており抵抗感を示す人は少なくない。

 「B案」は、「A案」や「D案」と同様に子供への臓器移植に道を広げようとしているが、乳幼児への提供には対応できておらず、効果が限られている。

 「C案」には、結果的に厳しくなる基準に、「臓器提供が増えない」という反発が強い。

 「D案」には、「ABCの各案には、本質的な違いがある。なぜ、この時期に3案を折衷したような新案がでるのか。理解できない」(日本移植学会の寺岡慧理事長)といった反発がある。


人の線引き

 議論の俎上にあがっている4つの法案は、「脳死」と「人の死」の境界についても、違いを持っている。

 日本人にとって社会通念上、死は「心停止、自発呼吸停止、瞳孔散大」によって判断されてきた。しかし医学の発展は、終末期の光景を多様なものにした。

 「脳死」とは、呼吸の調節や内蔵の働きなどの管理を行う脳幹を含む脳全体の能力が、元に戻らなくなった状態を指す。医療機器の助けを借りるとはいえ、呼吸はあるし(自発呼吸はない)、心臓は鼓動している。現行法では、移植を前提とした場合のみに、適正な判定が行われた上で、「脳死」が「人の死」とされる。

 「A案」は、「脳死を一律に人の死とする」ことを大前提に置いている。

 「B、C、D案」は、「臓器提供の場合に限って、人の死とする」という現行法内容を維持する内容になっている。

 「A案」に対しては、「脳死状態でも体はピンク色で、ひげも伸びる。温かい体を脳死(人の死)だと言われても納得できない」(3月25日、改正慎重派の会合での発言)といった感情がつきまとう。「脳死を一律に人の死とすると、医療側の判断で治療打ち切りのケースが出てくる。医師も国会議員も『人の死』を決めることはできないはずだ」(阿部知子衆院議員・社民)といった懸念も強い。

 一方、日本移植学会は、「移植医療とは関係なく、脳死診断は患者の絶対的予後を知るために行われる純粋な医学的診断行為」と指摘し、A案を支持する。臓器移植患者団体連絡会の大久保通方代表幹事も、「A案は、脳死を人の死と思えない人は拒否権がある。今まで通り治療を続けられる。脳死になったら、誰でも臓器を提供しなければいけないわけではない」と強調する。

党議拘束外し

 大島発言を端緒に、一気に改正論議が盛り上がった4月。国会議事堂裏にある議員会館には、「賛成」「反対」「推進」「慎重」といった様々な考えを持った団体などが、個別に議員に説明をしたり、勉強会を相次いで開催する光景が連日のように見られた。

 医学、法律、哲学、宗教、倫理、生命観、文化観が複雑に絡み合った問題に、議員たちも判断に迷っている。しかも、これほどのテーマにもかかわらず、委員会での議論はまだ一度も行われておらず、「採決には時期尚早」と話す議員も多い。

 共同通信が4月下旬から全国会議員を対象に実施した調査では、実に回答率が20%にとどまったという。この種のアンケートとしては、異例の回答率の低さが議員たちの逡巡を物語る。

 採決は党議拘束を外して行われる見通しだが、駆け込み採決の感は否めない。どの案が可決されるのか。あるいは4案とも廃案となるか。見通しもまったく立っていない。





ちなみに、A、B、C、D案の

まとめはこちらをご参照ください。

東京新聞 2009年5月1日 朝刊
PK2009050102100047_size0.jpg

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009050102000050.html




人の死をどのように定義するか。

科学的に決定できる

単純なことではなく、

”死生観”にもかかわる問題です。




「和田移植」以来、迷走を続ける

日本の移植医療。

移植側の助けられるはずの生命と

ドナー側の受容できない死。




今国会の議論が

どのようになっていくか

注目しております。





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コメント

脳死の人から臓器移植する際に、その人は脳死なので痛みを感じないことになっているのに、鎮痛剤を投与することが多いという話を聞いたことがあるんですが、実際、どうなんですかね? 移植医療に携わっている先生がいらっしゃれば、お聴きしたいです。
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