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■私のパブコメの反対意見を公開します 「医療事故調 第三次試案」

私こと中間管理職は

医療事故調 第三次試案」に

反対です。



パブリックコメントで当ブログから、

正式に”第三次試案に反対”の

文章を送ります。





原案が出来ましたので、

皆さんの参考になりましたら幸いです。

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産科医療のこれから
医療安全委員会をきちんと機能させるために ―WHOの勧告から―

http://obgy.typepad.jp/blog/2008/04/post-1341-29.html

を参考にさせてもらっています。


ななのつぶやき
医療安全調査委員会の第三次試案に反対します
http://blog.m3.com/nana/20080408/1

によせられた

鶴亀松五郎さんのコメントを

中心に論旨を展開させていただきました。

ありがとうございます。


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以下、提出用のパブコメ原案です。





メールタイトル
第三次試案に対する意見について」

(注: メールタイトルは上記と、厚労省が指定しております)

「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案-第三次試案-」に対する意見について

(注: 以下、管理人による本文)

 第三次試案に対して私は反対です。第三次試案が現実化された場合、医療現場は崩壊することでしょう。それは以下の理由によります。

1. 医療従事者への刑事罰が可能
2. 医療安全委員会において診療関連死の情報がメンバー以外(例えば裁判所、検察)に知らされて裁判の資料にもなる
3. 医療行政や医師を管轄する厚生省の中に医療安全委員会が置かれるため独立性がない
4. 診療関連死の分析は専門家以外のメンバー(一般市民や患者家族代表)も加わった委員会でなされる
5. 分析に時間がかかる
6. システムの問題ではなく医療従事者個人や個々の医療機関の責任に帰される
7. 勧告を実行するにあたっての財源や人的資源の保証がない

 政府の第三次試案は、WHOによる患者さんの医療安全ガイドライン(1)に真っ向から反対するものであり、現場医療を崩壊させるものに他なりません。以下に各項目について私の意見を述べます。



1.  医療従事者への刑事罰が可能

 現状では、「謙抑的」と言われる、検察による「お目こぼし」によってのみ医療は立件されないだけであり、医療は常に「灰色の行為」と考えられております。ひとたび結果が悪い場合は、日本では医療行為が刑事罰の対象になる可能性が高い、ということです。

 刑法上、医療行為に対する判断を行うことは厚労省の仕事ではありません。単に第三次試案では行政処分をさらに追加して行うことが可能である、という枠組みを作るだけであり、医療に対して更なる厳罰化が起きる可能性すらあります。

 少なくとも刑事罰、民事罰の軽減化には全く寄与する確約は全くありません。厚労省がそれを”確約する”というのなら、医療事故調の運用だけに任せるのではなく、”医療における刑事罰、民事罰の軽減”を明文化するべきです。


2. 医療安全委員会において診療関連死の情報がメンバー以外(例えば裁判所、検察)に知らされて裁判の資料にもなる

 診療関連死の患者名、報告者(医療従事者)、医療機関は決して第三者に明かされてはならない、というのは大原則でありますが、厚労省の第三次試案は、”行政処分の厳罰化”による”ムチ”によって報告させようとしています。

 このような劣悪な条件では、そもそもリスクのある環境での医療行為そのものが避けられるようになり、医療は萎縮することでしょう。なぜなら、「報告しないなら罪」、というなら「報告するようなこと自体を避ける」のが、組織として一番正しい判断だからです。最初から医療機関は”悪である”という前提にたってムチをふるうなら、誰もムチの下にはいなくなります。

 さらには、この報告が”民事裁判を誘発する”危険性が十分にあります。下記に書くように、そのようなリスクのある報告を、「提出しないと行政処分」という厳罰化の方向で医療を締め上げているのがこの第三次試案です。


3. 医療行政や医師を管轄する厚生省の中に医療安全委員会が置かれるため独立性がない

 医療安全委員会や医療事故調自体が、行政処分に直結し、さらには検察や裁判における資料になる第三次試案では、「事故調」ではなく、単なる「検察の出先機関」、新たな「行政処分機関」でしかありません。

 独立性が保たれた上で、真に医療事故の原因が究明されない限り、同じトラブルが何度でも繰り返され、しかもその真実はいつまでも見つかる事はないでしょう。


4. 診療関連死の分析は専門家以外のメンバー(一般市民や患者家族代表)も加わった委員会でなされる

 これは、心底、医療機関を震え上がらせているものです。なぜ、医療事故の被害者の会や一般市民が、専門知識もないまま、高度に専門的な医療事故について検討することが可能なのでしょうか?医療の限界や医療の現状、それ以前に”医療とは”という考え方からすでに異なる考えを持ち、「医療は悪である」と考えている被害者の会が医療を裁くのなら、それは医療における「魔女狩り」になることでしょう。

 なぜ、非専門家の”感情”を考慮するのでしょう?確かに患者さんのご遺族のかなしみは計り知れません。実際に現場で働いているものとしてそれは痛感します。しかし、「医療の進歩」のためにこの第三次試案があるのではなく、単に「怒りに任せたこぶしの落しどころ」を見つけるだけの会議なら、医療はその”感情”のまえに叩き潰されることでしょう。

5. 分析に時間がかかる

 第三次試案の過程では最悪の場合は、厚労省が行政処分を行い、さらに警察、検察が動き、裁判となる事が予想されます。どこでどのように情報を共有するのでしょう?どのくらいの人材がどのくらいのスピードで、全国の病院にフィードバックするつもりなのでしょうか?

6. システムの問題ではなく医療従事者個人や個々の医療機関の責任に帰される

 現実問題として、第三次試案は、個人の行政処分の拡大、届けての義務化など、厚労省の行政処分が強化されていますが、さらには捜査機関への通知を行うことを定めており、単に「個人への厳罰化」がすすんでいるようにしか思えません。

 実際に、警察は医療事故の際、医療事故調とは独自に動き、刑事司法はなんら影響されることがないことが関係者からの発言でもうかがえます(2)。この第三次試案は「医療の刑事免責」などでは全くなく、逆に「行政処分による強制届出と、それによる自らを有罪にする資料提出の義務化」になっています。

 第三次試案は、医療の厳罰化の方向に向かっています。これを唯一押さえているのが、捜査機関の「謙抑的」な操作姿勢という、「医療はそもそも悪なのだが、全部取り締まると病院がなくなるので、しょうがなくお目こぼしをする」という、捜査機関の恩情でのみ医療機関は存在が許される事になるでしょう。

7. 勧告を実行するにあたっての財源や人的資源の保証がない

 これはどの程度の範囲をどのくらいの人間でおこなうか、それ以前に原因特定のための”解剖”を行う人材も予算もない状況であるのが現状です。法医学や病理解剖は、実際には24時間、ボランティアに近い状況で行われ、従事する人間も劣悪な環境で労働を強いられています。


 もしもこの第三次試案が現実化したらどうなることでしょう?

 「医療の正しさを厚労省が決める」事になるでしょう。現時点でも医療制度そのものより財務省による医療費削減を大命題としている厚労省が、医療そのものの是非を一つ一つ決めていくことこそ、恐ろしいことだと考えます。医学的には正しくても、お金がかかる医療は「日本では正しくない医療」として、否定されることでしょう。

 判断を”非”専門家の感情にゆだねると医療は、感情第一になるでしょう。医学的な正しさとは別に、「被害者の感情」を中心に、まるで「人は病院では死ぬはずがなく、もしも病院で死んだら、医療機関は悪い」かのような、狂ったイメージがすでにあります。医師の仕事は今後、「患者さんや家族の感情を逆なでしない」、医学的に正しいのではなく、「患者さんが怒らない」医療をすることになるでしょう。

 そして医療機関に対しては「行政処分の厳罰化」によって、さらに厚労省の圧力が重くのしかかるでしょう。結果的に、この第三次試案で得をするのは、権利を強化できる厚労省だけなのです。



 検討する点は多々あると思います。以下の点の訂正が必要であると思われます。

1.医療の刑事免責が必要
(そのためには刑法の見直しが必要)

2.厚労省による行政処分の厳罰化を撤回

3.判断基準の明確化が必要
(どこまでが届出範囲なのか不明であり、その基準を提示していないため現場が混乱しています)

4.第三次試案の「行える限界」を明示すべき
(第三次試案は誤解をワザと生んでいる。刑事責任や民事責任追求の軽減化という、「厚労省の仕事ではないこと」をあたかも「出来る」かのようにうたっている。しかし厚労省が刑事責任や民事責任を追及出来るわけではない。基本的に誤解を生んでいます)

5.捜査機関の「謙抑的」な姿勢に頼るのではなく、医療行為そのものが「基本的に違法ではない」という明文化が必要

5.医師法21条の届出先は、警察の刑事課であり、最初から「医療は悪」という決め付けであり、改正は当然必要


 再三繰り返しますが、私は第三次試案に反対の立場です。このままの第三次試案の施行は、さらなる医療への厳罰化につながり、日本医療に甚大な被害を与える事でしょう。



引用文献
(1)WORLD ALLIANCE FOR PATIENT SAFETY
WHO Draft Guidelines for Adverse Event Reporting and Learning Systems

http://www.who.int/patientsafety/events/05/Reporting_Guidelines.pdf

6. CHARACTERISTICS OF SUCCESSFUL REPORTING SYSTEMS PP.49-51

(2)臨時 vol 42 小松秀樹 「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案 第三次試案」に対する意見(前半)
2008年4月10日発行
虎の門病院泌尿器科 小松秀樹

http://mric.tanaka.md/2008/04/10/_vol_42_1.html
懸念2 医療事故調を設立しても刑事司法は独自に動く


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ぶっちゃけ、

医療事故調 「パブコメ」に意見を出してみよう!!
http://med2008.blog40.fc2.com/blog-entry-68.html

に書いてあるように、

様式1(個人用)(Word)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1030&btnDownload=yes&hdnSeqno=0000037309

をダウンロードして、

いろいろな意見を参考に、

文章をコピペしたり自分の意見を加えたりして、

そして書いたWord文章を添付して、

電子メールアドレス:IRYOUANZEN@mhlw.go.jp
厚生労働省医政局総務課医療安全推進室 あて

にメール送れば終了、

というお手軽さです(笑)。




みなさん、

じゃんじゃん送ってください(笑)。





また、パブコメそのものについても

ご意見いただけましたら幸いです。






関連記事

コメント

http://www.nhk.or.jp/special/onair/070423.html
全然関係ないレスで恐縮ですが
2月だったかな、
http://ameblo.jp/med/entry-10075490223.html
で話題になった、
"トリアージ 救命の優先順位"
再放送が延期になっていましたが、明日14日22時から再放送されるようです

関係なくても感謝

こんた先生

>"トリアージ 救命の優先順位"
>再放送が延期になっていましたが、明日14日22時から再放送されるようです
 大感謝です! 今日はとっとと帰って録画するビデオテープ探します!

パブコメを募集し、それに応募して、現場の声を少しでも届けるのは大事だと思いますが、いままで、パブコメを元に「方針変更」となったことはほとんどないかと思います。ま、お役人のアリバイづくり(勝手に一方的に作った法律じゃないよという)のためのものなのでね。
でも、こちらとしても「ちゃんと反対していたよ」というアリバイをつくっとくためにもやっぱり応募しとかないといけませんかね。

でも、この第3次試案で、誰が幸福になるんでしょう。それを考えてない時点で、意味のない法律になり下がるんでしょうね。

ヤボを承知でマジレスw。

>この第3次試案で、誰が幸福になるんでしょう。

新たな天下り先が出来る厚労省に決まってるじゃんw。

NoTitle

初めまして!
アリバイ会社をやっているものです。

参考になります!!

また覗きに来ますね☆
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中間管理職: このブログの管理人。
ID上、ブログではmedさんとも呼ばれてます。

某大学医学部を卒業
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医師免許取得: 医師にはなったけど、医療カーストの一番下でした。
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大学院卒業(医学博士): 4年間、院生は学費支払って給料なし。
 ↓
さらにアメリカの大学勤務: 激安給料
 ↓
日本の大学病院勤務: 労働基準法が存在しない。

フルコースをこなしたため貧乏から抜け出せず。
 ↓
大学から地域(僻地ともいう)の救急医療で疲弊しました。
 ↓
田舎で開業、借金は天文学的数字に。


今は田舎で開業して院長になりました。
でも、教授に内緒で開業準備していたころのハンドルネーム”中間管理職”のままでブログを運営してます。

ブログは主に
日本の医療制度(医療崩壊)、僻地医療事情、開業にまつわる愚痴と、かな~り個人的な趣味のトピックスです。

よろしくお願いいたします。


中間管理職 

Author:中間管理職 
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