2009/03/06
■公社、荏原病院の末路 「深刻な医師・看護師不足、東京都の危機的な病院運営《特集・自治体荒廃》
週刊東洋経済なる雑誌を知っていますか?
私は結構大好きで、
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…まあ、そんなことは関係ありませんが、
公社に移管した
荏原病院は悲惨な末路を迎えています。
深刻な医師・看護師不足、東京都の危機的な病院運営《特集・自治体荒廃》
週刊東洋経済 2009/03/03 | 17:20
http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/bef135f9d48e6732c489f51fc19fd570/
かつて年間約1000人のお産を扱っていた荏原病院(大田区)の産科は、今や見る影もない。
都立だった荏原病院が、東京都保健医療公社に移管されたのは06年4月。「より地域に根ざした、弾力的かつ効率的な運営」が目的だった。都と東京都医師会などが出資する公社への移管に際して、産科や救急など行政が担うべき医療は減らさないというのが住民への説明だった。
ところが、移管から1年後、荏原病院では地域医療の要である産科を維持できなくなった。原因は看護師の大量欠員だ。入院患者への対応がままならず、07年7月に病棟を1棟休止。東邦大学が産科から派遣医師を引き揚げた。そして同10月、妊婦受け入れ縮小に追い込まれた。
かつて大田区では、5人に1人の赤ちゃんが荏原病院で生を受けていた。現在は院内助産所で月に1人程度の出産を扱うのみ。ピーク時に7人いた産科医は現在4人。うち2人は、年度内の離職が決定している。
「産科医を新たに確保して、4月からお産を再開する予定。将来的には、非常勤を含め最低7~8人の産科医を確保したい」と公社は説明する。だが、一度崩壊した産科に、医師が戻ってくる保証はない。
荏原病院の過酷な夜勤 看護師欠員で病棟閉鎖も
定数316に対し、欠員58人――。荏原病院の常勤看護師不足は、悪循環を生んでいる。最大の問題は、夜勤回数が激増したことだ。
「公社化に一貫して反対してきたが、ここまでひどくなるとは」。都職員の労働組合である都庁職病院支部の長井ノブ子さんが嘆く。
人手不足で夜勤の体制は3人から2人に縮小。1人の仕事量は1・5倍になった。ICU(集中治療室)勤務の場合、月に10回以上の夜勤をこなす必要がある。「地域柄、入院患者は高齢者が中心で、ナースコールも多い。夜間勤務で休憩は30分取れればいいほう。将来が見えない若手や体力的限界を感じたベテランが次々に辞めている」(長井さん)。
荏原病院は毎月のように募集をかけているが、看護師は集まらない。
「公社病院の専属職員になることへの抵抗がある」と、ある中堅看護師は推察する。都立病院では数年ごとに病院間の人事異動がある。が、公社病院にはそれがない。専属職員になれば、原則、退職まで職場が変わらない。「都立や民間病院と比べ、待遇がいいわけでもない。勤務が過酷で、交通の便も悪い荏原病院に職員が集まらないのは当然だ」(同)。
むろん公社も事態を深刻に受け止めている。「研修制度の充実」などの施策を掲げ、地方の看護学校から費用持ちでツアーを組んでまで、職員集めに奔走している。それでも、看護師不足は解消されていない。
保険外診療に乗り出す公社化予定の豊島病院
今年4月には、豊島病院(板橋区)も公社に移管される。
その豊島病院も状況は厳しい。昨年10月、2年前から休止していた産科を一部再開したばかり。逆子や双子など中リスクの妊婦に限り、ひと月に5件程度のお産を扱うレベルにとどまる。NICU6床、GCU(NICUの後方病床)19床は稼働していない。「行政が担うべき医療が削減されるのでは」と危惧する地元住民からは、公社化に強い反発が起きた。山口武兼副院長は「GCUは今年4月、将来的にはNICUも再開したい」と語るが、一度低下した機能を取り戻すのは容易でない。
豊島病院は今後、新たな医療にも取り組むという。先例では、大久保病院(新宿区)が、アンチエイジング(老化防止)やメタボ治療のための週末入院などを実施している。
「ガン治療での免疫細胞療法や歯科インプラントなど、都立時代にはできなかった保険外治療を提供したい」と山口副院長は意欲を見せる。が、東京都が出資する病院が、保険外治療に力を入れるべきなのか。地域に必要な医療がおろそかになるおそれはないのだろうか。
都立病院でも医師不足は深刻だ。墨東病院(墨田区)が発端の“妊婦搬送不能事件”は同病院での産科医の大量欠員がそもそもの原因だった。
昨年10月4日、脳内出血を起こした江東区の妊婦(36)が墨東病院を含む7病院に搬送を断られたうえ、最終的に搬送された墨東病院で出産後に死亡した。同病院は産科医の手厚い配置を義務づけられた総合周産期母子医療センターでありながら、妊婦が運ばれた日の当直はわずか1名の研修医という
ありさま
だった。
墨田区、江東区など東京東部地区で唯一、ハイリスク出産を受け入れる墨東病院には、妊婦の搬送依頼が引きも切らない。千葉や埼玉など他県からの搬送も2割を占める。その最後の砦が、産科医不足に困窮している。
定数増、24時間保育… 待遇改善が急務
昨年6月末の1人退職後、墨東病院の産科医は定数9人に対し4人に減少した。2人当直体制を維持しようとすると1人の医師が月に11回の当直に従事する必要がある。ハイリスク出産を受け入れる周産期センターの指定を返上する案も出たが、墨東病院がなくなれば、東部地区の周産期医療は壊滅状態になる。地元の開業医の協力を得て、その後、平日は2人当直、土日祝日は1人当直で対応することになった(1人当直の休日に「事件」が発生したことにより、昨12月からは大学などから応援を得て全日2人当直へ移行)。
激務と訴訟リスクの増大で、産科医療はどの病院でもパンク状態だ。
「脳出血の妊婦受け入れは、以前であれば、どの都立病院でも可能だった。ところが今や扱える病院が減り、医師もいなくなっている」(都立府中病院産科の桑江千鶴子部長)。
都立病院の医師減少の一因として、給与の低さも指摘されている。06年度まで、都立病院の医師の給与水準は全国47都道府県中で最低だった。その後、手当の創設など、思い切った是正が行われたが、「都立病院の給与水準は低い」とのイメージが定着している。一方、自治体病院ゆえに、暴力を振るう患者やホームレスなど、ほかの病院が受けたがらない患者も集中する。勤務がハードで医師が集まりにくいため、医師確保を大学からの派遣に頼ってきた。都は08年度に「東京医師アカデミー」を開講。独自の専門医養成に着手したが、その成果が出るまでには数年かかる。
前出の桑江医師は「早急に思い切った待遇改善をしなければ、周産期医療に未来はない」と言い切る。「今すぐ医師が増えないなら待遇改善でくい止めるしかない。20代の産科医の半分は女医。すべての都立病院での24時間保育の実現や、緊張を強いられるオンコール(呼び出し待機)への手当が必要だ。東京が変われば全国の公立病院が変わるはずだ」(桑江氏)。
医療充実への世論の後押しもあり、都は今年度に産科医への手当を創設した。1件につき4750円の異常分娩業務手当がその代表例だ。全診療科の部医長職医師に対しても平均で120万円前後の年収増を行った。ただ、手当の創設は産科など一部の診療科にとどまる。
常勤医の定数増も課題だ。「最低でも今の1・5倍は必要だ」と断言するのは、府中病院の青木信彦院長だ。同病院は定数132人の常勤医を上回る非常勤医を雇うことでやりくりしているが、限界にきている。
多くの医師が「都立病院で働きたい」と思うような環境づくりが、今こそ求められている。
勘違い、なんでしょうか、
それとも暗に
「もう都立ではないので
勝手にやらせてもらいます。
かまわないでください」宣言
なんでしょうか。
>ガン治療での免疫細胞療法や歯科インプラントなど、
>都立時代にはできなかった保険外治療を提供したい
(豊島病院)
都立というだけでも
マイナスだったのに、
保険外診療に力点の置くということで
一気にうさん臭さが
倍増した印象です。
逆に言うと、
そうでもしないと
おいしい絵が描けない、
ということなのでしょう。
おまけ
経済紙について。
経済誌の発行部数は
全サラリーマンの10分の一
とか聞いたことあります
(うろ覚え)。
つまりは、
経済誌を読んでいるだけで
トップ10%に入れるよ、とか言うつられ文句で
読み始めるようになりましたが、
いろいろな世間の動きが
なるほど分かるようになってきました。
逆に言うと、
いろいろと勉強しなくちゃいけないことが
世の中にはごまんとあるということらしいです。
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コメント
これまで自分は国立病院医師であれば”社会インフラ”として,少々の過重労働にも
耐えてきましたが,昨今は民間病院と同様のビジネスマンとしての働きを求められるように
なりました(近隣の民間病院よりもず~っと安い給料で).
個々のレベルでは医は仁術と今でも思いたいですが,やはり
世の中が医は算術という流れである以上は,医療以外の知識を身につけて
ビジネスマンとして”稼ぎ出す,しぼりとる”算段を身につけなくてはいけないんでしょうねぇ.
そうしないと職場のインフラ整備もままなりませんし・・・
2009/03/06 09:15 by 2等兵 URL 編集
さんざん都立病院の赤字を責めておいて、それを解消しようとするとこういうことを言いだす。二枚舌ですね。地域住民が求める医療と病院の収益が二律背反なのはもはや自明なのに。
ところで東洋経済誌、いいですね。毎号ではないが、私もよく読んでいますよ。よく掘り下げた記事が多いと思う。
2009/03/06 10:18 by 暴利医 URL 編集
コンビニ受診が急増 苦闘する東京ER
受け入れ先のない救急車をなくす-。墨東、広尾、府中の各都立病院に「東京ER」(救急救命室)が設置されたのは2002年。指の切り傷から、交通事故の外科手術まで1ヵ所で対応するのがERだ。「いつでもどんな患者でも必ず受け入れる“駆け込み寺”。都立病院として絶対必要な機能だ」。府中病院の青木信彦院長はこう力説する。
だが、設置から6年。 ERは患者の予想以上の増加で悲鳴を上げている。3病院合わせた救急患者数は、ER開設の前年度と比べ約4万人増加し、07年度には13万人に達した。
急患数を押し上げているのは、7割を占める軽症患者だ。「昼間は仕事が忙しくて」「朝だと混んでいるから」などという理由で訪れる患者が少なくない。いわゆるコンビニ受診が起きている。
東京ER・広尾の中島康医長は「都立病院の敷居が下がり、患者が殺到した。2次、3次の患者への対応がおろそかになっていないとは言い切れない」と語る。
事実上、32時間連続勤務 なり手が少ないER専門医
同じく24時間365日の消防と警察は3交代勤務。一方、東京ERの医師に交代勤務はない。通常勤務は午前9時から午後5時まで。5時から翌朝9時までは「当直」(宿直)だが、仮眠をとる暇もない。そして朝9時には再び通常勤務が始まり、夕方5時まで続く。
「せめて2交代。 24時間勤務の後は、休めるようにしてほしい」。中島医長の訴えは悲痛だ。医師たちの矜持だけで支えてきたERは、限界を迎えている。
東京ER・府中ではわずか2人の常勤医が研修医30人の育成に取り組む。だが、過酷な現場を経験した研修医は研修を終えるとほかの科に移る。そしてERに戻ってくることはほとんどないという。「ER専門医は全診療科について高度な知識を要する。増やしたいのだが、なかなかなり手がいない」(青木院長)。
「根本的な解決には、都民の意識改革も必要」と中島医長。 “救急医療”としてのERのあり方を再構築する段階にきている。
Fig. 10の診察室が並ぶ府中病院のER室。タ方になると患者でごった返す
2009/03/06 10:41 by URL 編集
切られた馬謖がどうなろうと知ったこっちゃない、俺は涙は流した、とね。
そりゃ、給料も安く、仕事も将来の発展が見込めないとなったら、みんな辞めますわな。
で、東京ERとかいう野戦病院の先生、ちゃんと時間外勤務手当貰ってます?都立病院のあまりに安い給与体系ですら、かなりの高給になるはずですが。もしかして、「当直手当」とかでごまかされてませんか?だとしたら明確な労基法いはんですよ。
大体、3病院で年間13万人ってwww
平均して1日100人以上の時間外受診。あまりにアホ過ぎて、あきれるを遥かに通り越してます。
「医師の過重労働を防止し、より安全な診療を行うため、ER受診の際は一律診療代と別に5000円いただきます」くらいのことをしたらいいのに。そうすりゃ、大幅に減りますよ。入院は金を取らなかったらいいわけですから。
2009/03/06 11:02 by Seisan URL 編集
都立病院医師...こんな人たち
都立病院医師の給与水準/石原都政で全国最下位
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-11-15/2008111514_01_0.html
松村氏が都立病院医師の年間給与水準の推移をただしたのに対し、中井敬三病院経営本部長は総務省の資料を基に~~二〇〇六年度には六十一自治体中最下位に後退した事実を明らかにしました。~~~中井病院経営本部長は「都立病院の医師の充足率は高い」などと答えました。
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医師充足率が高い=つまり、公立病院中、最低の給与水準でありながら、都立病院にしがみついている、もしくは我こそはと就職しているアホ医者がいるということですな。
...そんな医者、さっさと死んで下さい。
医師を補充している医局は黙って引きはがしをしましょう。
2009/03/06 15:51 by Hekichin URL 編集