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■長野県千曲市が沈む 医療のカタストロフィ 「医師不足、消える病院…都市圏でも」

ネタ元は

demianさん

http://med2008.blog40.fc2.com/blog-entry-61.html#comment291

です。いつもありがとうございます。





>長野県千曲市で3月末、医師不足のため病院が閉じた。

長野県千曲市が沈みます。




多くの”脳外科医”が病院を去っています。

常勤医がいなくなった病院も

全国的に多数あるはずです。






産科や小児科崩壊のほかに、

「脳外科崩壊」

「外科崩壊」

「循環器内科崩壊」

「血液内科崩壊」

「消化器内科崩壊」

さらには、

「整形外科」「神経内科」

にくわえて、

「病理」「法医」などの”基礎医学”でも

崩壊がすすんでいます。







これだけひどい状況は、

医療崩壊」というか、

医療のカタストロフィ: catastrophe

破滅、大崩壊と呼んだほうが

いいのではないでしょうか?








現場では、

国の医療制度改革のたびに

医療の土台ごと崩れている印象です。











ここでは、

北里大学の産科でも

出産の予約枠が取れなくなっていることが

紹介されています。


>「予約は秋までいっぱいです。お産は受けられません」

>神奈川県相模原市にある北里大学病院の産科外来。3月末、海野信也・産科部長は、母親を伴って訪れた20代の女性に告げざるを得なかった。

>妊娠9週。予定日は10月末だ。体調不良が多いからと母親は「大学病院でみてほしい」と懇願した。だがここでは高齢出産などを優先。女性のような通常分娩(ぶんべん)の枠はすでに埋まっていた。


ただね、

このような方が一杯来られても

大学病院では受けないことも多いと思います。

マスコミがこのような症例を取上げるのも

どうかと思いますが。






だって、「体調不良が多い」だけで

正常産の方を取っていたら、

それだけで大学はパンクして、

本当に高度医療が必要な出産に対応できないのですから。



それでも正常産なのに

大学で出産した、

という方がいらっしゃったら、

クレーマーか、飛び込みか、

個人的によほど太いラインがあるのかも

しれません(笑)。



-------------------------------------

医師不足、消える病院…都市圏でも

asahi.com 2008年04月06日

http://www.asahi.com/health/news/TKY200804050228.html

 長野県千曲市で3月末、医師不足のため病院が閉じた。

 地域住民約4万人の医療を支えてきた長野赤十字上山田病院。19人いた常勤医師が最後は2人。医師不足が患者減を招き、収入減、赤字増という悪循環に陥った。

 4月からは診療所として当面、常勤医2人で外来診療を続ける。10あった診療科は内科と整形外科だけに。1日300人近かった外来患者はいま、まばらだ。250床の入院ベッドもなくなった。

 もともと経営は順調だった。減価償却費を除いた収支は黒字。病床利用率96%と、常にベッドは埋まっていた。

 崩壊の始まりは06年4月。19人いた常勤医のうち内科、外科、整形外科で1人ずつ減った。07年4月には8人に。外科と眼科がいなくなった。

 大学病院が地域病院から医師を呼び戻したのがきっかけ。それに定年退職や独立開業、突然の死亡も重なった。

 「地域に必要な病院なのに」。当時の院長らが翻意を求めて大学を回ったが「大学も医師は足りない」と逆に説得された。他の大学にも足を運んだが、状況は同じ。母体の長野赤十字病院も医師を派遣する余裕はなかった。

 住民の不安は大きい。

 長野市の公務員男性(52)の父は肺気腫で上山田病院に入院していたが、長野市内へ転院させられた。上山田病院と実家は車で5分だったが、今は30分以上。男性は休日に1日がかりで、長野市と独居の母が暮らす実家を回る。

 一つの病院の崩壊はドミノ倒しで他の病院の負担を増やす。上山田病院の救急外来は昨春休止され、年約3500人の急患は周辺の病院に向かうようになった。JA長野厚生連篠ノ井総合病院(長野市)はこの地区からの救急搬送が月に約100人へと急増。「満床」で受け入れを停止する頻度が増えた。「限界に近い。うちが倒れたら地域医療が崩壊する」と救急担当医は話す。(龍沢正之)

 ■現状は

 医療過疎は、大阪、神戸の都市圏周辺でも広がる。

 両圏から車で1時間の兵庫県丹波市に住む宮本正臣さん(35)は昨秋、自宅でくも膜下出血で倒れた。すぐそばの県立病院に運ばれたが、市境を二つまたいだ三田市民病院に転送された。脳神経外科医が当時、不在だったからだ。

 救急車で1時間。到着直後に再出血し緊急手術をした。「すぐ処置しなければ命の危険性が高かった」と主治医。再発の恐れも高く、宮本さんの不安は募る。「目の前に病院がありながら診てもらえないなんて」

 市内に二つある病院の勤務医は、県立病院が40人から半減、もう一つは15人が4人になった。常勤脳外科医は今、市内にゼロ。くも膜下出血を含む脳卒中は、がん、心臓病と並ぶ三大死因の一つだが、治療は事実上もうできない。

 都市部も危うい。兵庫県の西宮市や尼崎市などでも、ここ1年で4病院が脳卒中の救急をやめたり、制限したりする方針を出している。

 脳卒中の治療技術は進んでいる。血管が詰まる脳梗塞(こうそく)では、詰まりを溶かして手足のまひなど後遺症を大幅に減らす薬が保険適用になった。しかし、この薬は発症後3時間以内に使うという時間制限があり、治療チームの態勢も要る。実際に治療を受けられるのは都市部のごく一部だ。

 「予約は秋までいっぱいです。お産は受けられません」

 神奈川県相模原市にある北里大学病院の産科外来。3月末、海野信也・産科部長は、母親を伴って訪れた20代の女性に告げざるを得なかった。

 妊娠9週。予定日は10月末だ。体調不良が多いからと母親は「大学病院でみてほしい」と懇願した。だがここでは高齢出産などを優先。女性のような通常分娩(ぶんべん)の枠はすでに埋まっていた。

 県産科婦人科医会が調べた県内の分娩施設数は、02年に71病院103診療所だったが、07年は68病院70診療所。通常の出産を多くみる診療所が3割も減り、妊婦は産む場所探しに苦しむ。横浜市や川崎市でさえ、区によっては1カ所もない空白地帯がある。

 ■原因は

 地域を医師不足の大波が襲ったのは04年。免許をとった直後の医師の臨床研修制度が、新たに始まった年だ。

 それまで新卒医師は主に大学病院で研修した。新制度では、自分が選んだ病院で2年間、基礎的な診療能力を身につける。研修医は地方の大学病院を敬遠、大都市の民間病院などに人気が集まった。

 医師派遣の役割も果たしていた大学病院が人手不足に陥った。派遣先の地域の病院から医師を引き揚げた。

 2年の研修後も、研修医は期待ほど大学病院に戻らなかった。大学院で博士号を取るより、民間病院で腕を磨きたいという若手も増えた。06年以降も引き揚げは続いた。

 だが研修制度だけが原因ではない。以前から、産科や小児科などで不足感は強かった。

 そもそも医師数が少ないのだ。人口千人当たりの診療医師数(04年)は2.0人。経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国中27位。90年代は日本とほぼ並んでいた英国にも引き離されつつある。

 政府は80年代半ばから一貫して、医師養成数を削減してきた。「将来は医師が過剰になる」と分析したためだ。医学部の入学定員は07年度に7625人と、ピークの84年度より8%少ない。

 厚生労働省も、全体的な医師不足は認める。06年7月にまとめた報告書ではじいた必要医師数は、04年時点で26.6万人。だが実際に診療する医師は25.7万人と、9千人足りない。10年には1万4千人不足に広がる計算だ。

 ただこれは、病院にいる時間から研究、休憩などを除いて週48時間労働で換算した数字。小山田恵・全国自治体病院協議会長は「病院にいる時間を勤務時間と考えれば、不足は約6万人分に広がる」と反論。「いまの危機は、医療費を抑制し、医師数を削ってきた政策のつけだ」と憤る。

 ■解消策は

 厚労省の推計では、医師不足が解消するのは22年。それ以降は過剰になるという。

 推計通りでも、40年時点の勤務医数は今より7%増だが入院治療は1.4倍。医師も高齢化し、病院を離れて開業する率が高くなるとみる。開業医の働き方も検討がいる。

 診療科の偏りもある。産婦人科や小児科以外にも、外科などで若手が減り、関係者は危機感を募らせる。

 政府は、北海道・東北などで医学部定員を増やした。今春168人。だが暫定的な措置。一人前になるまで約10年かかり、即効薬ではない。

 長谷川敏彦・日本医科大教授(医療管理学)は「医師が受け持つ業務を見直し、効率よく働けるようにする必要がある」という。医師数以外にも、看護師らとの連携など考えるべき点は多い。
(編集委員・浅井文和、重政紀元、武田耕太)

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>医師数以外にも、看護師らとの連携など考えるべき点は多い。

ここで、医療の分業制について

更なる問題が生じます。




看護師は強力な看護協会なるものが存在し、

そして、

厚労省には

数々の”通達”で現場を混乱させることを

主な仕事にする(笑)、

医政局看護課があり、

医師よりも強大な力を持っています。




その看護師のトップがそろって

「医療行為に責任をもたない」

と言っています。




彼女らは(1)にある様に、

看護師の請け負う責任とは

「個人情報の漏洩をしない程度の責任」

であり、裁判では一貫して

医療行為については医師に責任を押し付けてきています。

(たとえば、全く医師が現場にいないときの行為でも

医師に監督責任があったとして同時に有罪にされる、など)







「医療行為はするけど、

責任は放棄するから、医師が取れ」

といって、

助産所で調子が悪くなった妊婦さんを

病院に投げ込んであたかも「病院が悪かった」ような、

助産師が取っている

ふざけた態度を改めない限り、

看護師が独立した医療責任を持ち、

分業をさらに進めることは難しいでしょう。



-------------------------------------
(1)田村やよひ (2002), "保健師助産師看護師誕生―名実ともに専門職に", EBNursing (中山書店) 2 (2)

保健師助産師看護師誕生―名実ともに専門職に

http://www.nakayamashoten.co.jp/kango/ebnf/2-2op03.html

田村やよひ 厚生労働省医政局看護課課長

 2001年秋の第153国会において,清水嘉与子参議院議員他の提案による議員立法で,「保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律」が成立し,2002年3月から「保健師助産師看護師法」となった.このため,今年の国家試験合格者から,免許申請をすると看護師免許証などが交付される.
 法律の改正理由の一つは,わが国の資格法のなかで,男女で資格名称が異なっているのは看護職のみであるという現状を変え,男女共同参画社会の理念にあった名称とすることである.二つめは,専門職にふさわしい名称とすることである.この観点から,今後の看護職への期待を述べたい.
 現在,男性の看護職員は約4万人(全体の4%弱)就業しているが,同じケア専門職である介護福祉士では約18%を占めていることからも,名称変更による看護職への男性参入が期待できる.このことによって,看護職の中性的イメージが広がるとともに,国民の多様な看護ケアニーズに,よりいっそう適切に対応していくことが可能になると考えている.
 専門職としてよりふさわしい名称に変えたことについては,国民・社会から,看護師の行うケアは,「なるほど専門職と呼ぶにふさわしいケアだ」と評価され,期待されるものになってほしいと願っている.
 そのためには,看護の対象となる人の人間性,個別性を尊重したケア,科学的根拠に基づいたケアの提供はいうまでもないが,これからの時代は,これらの看護のプロセスにおける配慮に加えて,看護の結果責任が問われる時代になると考えられる.これを看護職が正面からきちんと受けとめ,責任を負うことが必要になる.最近の看護事故裁判における厳しい判決は,このことを示唆しているともいえる.
 昨年の6月にも保助看法改正があった.翌7月からは,保健師と看護師および准看護師に対し,専門職として当然,求められるべき守秘義務が課せられている.漏洩した場合の量刑は,刑法に守秘義務が定められている医師,助産師と同じである.これは看護師などが医師と同等の個人情報を知り得る立場にあり,漏洩した場合は甚大な被害を看護の対象者に与え得るという認識に立っているからである.
 変化の激しい時代のなかにあって,看護職も社会の変化,国民のニーズに適切に対応できるよう,柔軟に,そして強い意志と確かなビジョンをもって進んでいきたいものである.保健師助産師看護師の誕生が,新たな時代を切り開く一里塚になることを確信している.




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コメント

今朝の朝日新聞は一面でこの千曲の永野修司赤十字上山田病院の話。三面で"医療再生へ 選択のとき"と題した週一の連載記事第1回です。
この三面の今週のテーマは医師不足都市圏まで 来週は 病院勤務医の過重労働がテーマ。

この4月に多くの病院が医師不足と診療報酬改訂で経営が悪化することはわかっていました。こういう記事は事が起こってからしたり顔で書いても、現状を知らせるだけですね。
しかも、医師不足の原因説明から始まるものだから、何度やっても表面的な話ばかりで、深まらない。
もう、04年の新研修制度や医師数がOECD加盟国中27位が原因なんてのは聞き飽きた。裁判の多さもわかってる。
そろそろマスコミが医療崩壊に果たした役割をしっかり検証し、懺悔しろ。

公立93病院で入院休止、医師不足など理由に…読売調査

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080406-OYT1T00008.htm?from=main1

 地方自治体が設置している公立病院のうち、2004年度以降に少なくとも93病院の141診療科が、医師不足などを理由に入院の受け入れ休止に追い込まれていたことが、読売新聞の全国調査でわかった。

 さらに少なくとも49の公立病院が経営悪化などで廃院したり診療所への転換や民間への移譲など運営形態を変えたりしたことも判明。公立病院を拠点とする地域医療が、各地で崩壊しつつある実情が浮き彫りになった。

 地方自治体が設置する病院は全国に約1000あり、調査は都道府県を対象に、医師不足の契機になったとされる新医師臨床研修制度が導入された04年度以降について実施した。

 今年2月までにいずれかの診療科で入院を休止したことのある病院は、公立病院の状況を把握していない10道県を除く37都府県で93病院。うち6病院は入院を再開した。休止理由について回答のあった42病院の9割は「医師不足」をあげた。

 診療科別では、産婦人科・産科の休止が44病院あり、次いで小児科の19病院。両科は、訴訟のリスクや不規則な勤務などで全国的に医師が不足しているといわれており、公立病院でもその傾向が表れた。

 北秋田市立阿仁病院(秋田県)では昨年5月から、小児科など五つの全診療科で入院を休止。湖北総合病院(滋賀県)は医師の退職で05年4月以降、3診療科で入院を休止した。

 一方、自治体財政の悪化などから、福岡県では四つの県立病院が民営化された。岩手県では06、07両年度、県立など計6病院を診療所に切り替えた。

 地域医療問題に詳しい本田宏・埼玉県済生会栗橋病院副院長は「地域医療の疲弊ぶりが如実に表れた。医療空白地帯が加速度的に拡大し、地方を中心に病院で受診できない人が続出するのではないか。医師確保を急がねばならない」と話している。

地方病院崩壊の足音

隣の市立病院ですが内科を含め崩壊中
耳鼻科の現象から始まり
この春からは脳外の危機、かろうじて皮一枚つながりました
更に内科は8名から6名に、受け入れ制限と外科の応援を頼むようです。
循環器はPCI受け入れ中止

まだ小児科と産婦人科が健在で助かっていますが
老人の受け入れはすでに困難かと

そのわりに4月からDPC導入という危険な技に走っています。
完全に死亡フラグがたちました

診療報酬が5年で3割減、DPC病院は自分の首を絞めている
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jcs2008/200804/505954.html
心臓カテーテルに対する入院期間の診療報酬点数や入院日数について、ここ5年間の削減幅を提示した。狭心症に対する入院期間点数は(DPCでは入院の種別を1種、2種、特定入院に分けている)、2003年度には1種が6143点だったものが2008年度から4172点(32%減)に、2種は4540点から 3356点に(26%減)、特定入院は3859点から2853点に(27%)、いずれもここ5年間で約3割削減されている

>元爺 さま
DPC移行ならPCI受け入れの中止は正しいかも知れませんね^^;;
もちろんそういうレベルの話ではありませんけど

過酷 救急医療 39時間勤務――ルポ にっぽん

http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY200804060137.html

 朝から立ちっぱなしで手術に立ち会っていた外科の浜田聡医師(42)が救命救急センター医師控室に戻ってきたのは、午後6時半。濃いひげをいっそう濃くして、頭をかきむしった。これから当直だ。

 東京都大田区の東邦大学医療センター大森病院。同様に朝から勤務する藤本愛医師(31)と研修医(25)も当直についた。午後7時半すぎ、夕食の出前を注文したとたん、重篤患者の受け入れを要請する電話(ホットライン)が消防から入った。

 脳動脈瘤(りゅう)のある80代の女性が意識障害という。動脈瘤破裂かもしれない。医師9人が1階の初療室に走った。

 10分後、顔が紅潮し目を見開いた女性が救急車で到着。「血圧は?」との声に、「190/110」。「わかりますか」と藤本医師が声をかける。「ニカルピン、ニカルピン」。浜田医師が降圧剤投与を指示した。

 すぐCT室へ。コンピューター断層画像が映し出された。最悪の動脈瘤破裂ではない。視床出血だった。ほっとした空気が流れた。

 看護師の携帯が鳴る。「先生、ホットラインです」。午後8時45分、20代の男性が運び込まれた。オートバイで乗用車と衝突した。顔は腫れ上がり、腕も折れている。

 男性が痛みで叫び声を上げる。再び看護師の携帯が鳴った。またホットラインだ。

 「(受け入れは)無理!」。浜田医師の声が響いた。

 午後11時前にやっと夕食にありつけた。その後も午前0時すぎに吐血した70代の女性が、早朝には交通外傷の患者が来た。眠る時間はほとんどなかった。

 救命救急センターの医師は全部で14人。研修医を入れて3人が当直につく。2交代制の看護師は約100人。午後4時半から午前9時までは30床を15人前後でみる。

 当直明けも医師の勤務は通常通り。医師たちはそのまま仕事を続け、夜まで働いた。午後8時15分、藤本医師が控室で栄養飲料リアルゴールドを飲み干した。この日5本目だ。「バタンキューで寝て、また明日ですね」。病院を出たのは午後11時前。勤務は前日から39時間に及んだ。

 若手医師(27)は「処置しても延命行為でしかないこともある」と漏らす。かつてなら「大往生」だった末期がんや施設入所の高齢者が心肺停止で次々と運び込まれる。「蘇生が患者や家族にとって幸せかどうかわからない」

 自傷も少なくない。ある日の明け方、100錠以上の鎮痛剤を酒と飲んだという30代の女性が搬送されてきた。意識はあり、命に別条はない。医師(35)は「この人は(救命救急センターの前の)2次救急で十分。こういう人を処置していて、本当に重篤な人を受け入れられないことがある」。

 9年目の医師に給料明細を見せてもらった。本給は15万円、当直は5回で5万6500円。総支給額は26万7020円だった。アルバイトで週に1日半、外の病院で診療し、泊まりもする。1日約9万円、泊まりは1回約4万5千円。

 救命救急センターの吉原克則准教授(54)は「勤務医が足りない。その影響が一番出るのが救急だ」と話した。

 ■「とりあえず診て」軽症の人搬送次々

 東邦大学医療センター大森病院が受け入れる救急車は年間7千台を超える。

 ある夜、39度の熱が出たと2歳の娘を救急車で連れてきた母親がいた。連絡を受けた看護師は「熱だけで救急車?」と声を上げた。

 診察した小児科医は「熱はあるが、しっかりしている。解熱剤を持っているということなので、何もせずにこのまま帰します」。「高熱にびっくりしたんでしょう?」と質問すると、母親は「そんなに心配していたわけではないけど、とりあえず診てもらおうと思って」と話した。

 また、ある日の午後、「気分が悪い」と自分で119番した一人暮らしの70代の男性が運ばれてきた。蒸れたような酸っぱいにおいが初療室に充満した。迎えた看護師が「まずはシャワーしましょうか」と服を脱がし始めた。男性は「寒いよ」と文句をいう。「大丈夫よ。ごめんね、寒い思いをさせて」と謝りながら裸にし、シャワーをかけた。姿を見せた医師は「乾いたら呼んで。このままじゃ診られないから」と立ち去った。

 「ズボン下」「ベルト」と男性はいちいち注文をつけた。看護師は「あれはうんちがついている。これ着ようね」と院内から探してきたシャツとズボンをはかせた。

 到着から約1時間後、医師が心電図をとった。男性は「点滴してよ」。「水飲めるの?」「飲める」。医師は「じゃあ、いらないな」。

 医師はたしなめた。「それとね、救急車をタクシー代わりに呼ばないでね」。男性は「金ないもん」。30分後、おしっこのついた靴下をはき、病院を後にした。

 ■「24時間医師」気概と誇りと

 別の日の午後、70代の女性が「体全体の脱力」を訴えていると救急隊から電話が入った。一人暮らしで自ら119番したという。

 血圧や脈拍、意識に問題はなさそうだ。電話を受けた当直師長は「ひとりですか? 親類の人に迎えに来てもらえるようにしてほしい。それを約束してくれるなら、受け入れます。親類の電話番号ありますね」。大したことがないのに入院されると、重症患者を受け入れるベッドがなくなってしまうからだ。

 約30分後、女性が運び込まれた。目を半分開け、上を向いている。

 女性は来るなり「おしっこ」。看護師がトイレに連れて行った。ベッドに戻ると、今度は「お水」。「苦しい、苦しい」とつぶやく。

 医師がすぐに診察したが、意識障害になるような不整脈はない。胸の音もきれいだ。念のため、CT(コンピューター断層撮影)検査とX線撮影、血液も調べた。

 「手が震えてしかたない」と訴える女性に、「大丈夫のようですよ」と医師。「問題ないんですか」と女性は消え入るような声で言った。

 看護師が親族に迎えに来るよう電話した。親族は「死んでもらっていい」と言ったという。

 「一晩泊めて」。女性は看護師に懇願した。

 親族に引き取られて女性は病院を去った。

 救命救急センターの吉原克則准教授は朝のミーティングで研修医に向けて言った。「医師はどこにいても24時間医師。飯を食って酒を飲んでいる時も。患者への愛情、倫理観、強い職業意識があって初めて医師たり得る。熱意がないとできない」。皮膚科や眼科、耳鼻科志望が増え、大学に残る医師が少なくなる今、あえて厳しい救命救急の現場で働く医師の気概と誇りを感じた。(編集委員・大久保真紀)

     ◇

 〈救急医療〉 1次から3次まで3種に大別される。平日夜間や休日に自分で病院に来る軽症患者用が1次、手術や入院などが必要とされ救急車を呼んで来るのが2次、2次以上で重篤な患者が3次。救命救急センターは3次で、東京都の場合は、消防庁から21の施設に直接受け入れ要請の電話が入る。2次救急病院は全国的に減っており、98年の3344が07年は3153に。

 東邦大学医療センター大森病院は1次から3次までを備える。それらを合わせた救急外来の患者は平日夜間が約100人、日曜日は約200人にのぼる。

たぶん、もう重力崩壊を起こしてしまって医者の存在がシュバルツシルト半径を超えてしまったんですよ。光すら脱出できない深い闇の穴の中に落ち込むしかないでしょうね。
日本医療のブラックホール化は順調に進行しているようです。
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中間管理職: このブログの管理人。
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某大学医学部を卒業
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医師免許取得: 医師にはなったけど、医療カーストの一番下でした。
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大学院卒業(医学博士): 4年間、院生は学費支払って給料なし。
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さらにアメリカの大学勤務: 激安給料
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日本の大学病院勤務: 労働基準法が存在しない。

フルコースをこなしたため貧乏から抜け出せず。
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大学から地域(僻地ともいう)の救急医療で疲弊しました。
 ↓
田舎で開業、借金は天文学的数字に。


今は田舎で開業して院長になりました。
でも、教授に内緒で開業準備していたころのハンドルネーム”中間管理職”のままでブログを運営してます。

ブログは主に
日本の医療制度(医療崩壊)、僻地医療事情、開業にまつわる愚痴と、かな~り個人的な趣味のトピックスです。

よろしくお願いいたします。


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