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■「記者日記:医師の説明 /埼玉」 義務を知らない人々

また毎日か…。







記者日記:医師の説明 /埼玉

毎日新聞 2009年2月6日 地方版
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20090206ddlk11070295000c.html

 「もう一度、一から説明しましょうか!」。医師は突然、声を荒らげた。昨年末、兄が大病をした。治療法の説明の場に私も同席し、質問しまくった。もちろん面白半分にではない。学会のガイドライン本(書店でも買える)を読み、病状の微妙な差によって治療法も違うことを知っていたからだ。

 だが、医師は「そんな細かいところまで聞いてきたのはあなたが初めてですよ」などと繰り返し、明らかにいらだっていた。揚げ句に、私が「念のため確認しますが……」と治療法のある細部についてたずねた途端、冒頭のようにキレてしまったのである。

 私はひるまず質問し続けたが、こうした場面に慣れていない人なら黙ってしまっただろう。医師と患者・家族を隔てる「壁」はまだまだ高いと痛感した。申し添えておくと、医師はその後も献身的に兄を診てくれた。

【平野幸治】






感情論はいろいろとありますが、

この文章が

極めて不快な印象を受ける原因の一つに

「医療に関する説明の責任と決定の義務」の問題が

あるように思えます。




(1)の本には患者さんの

「自己決定権」と「自己決定義務」

と書かれていますが、

現在、日本の司法では

「自己決定権」ばかり主張しそれが認められていますが、

その対になる

「自己決定義務」は認められていません。





ここに医療トラブル、医療裁判での

大きな落とし穴が待っています。






つまりは医療側は情報を

提供して、提供して、提供して、提供して、

それでも納得いかなければ

患者さんの「自己決定権」で

治療法を決めたり他施設に行くわけです。





しかし、患者さんに「自己決定義務」が

ないことが致命的な問題です。







5回説明を聞いて、5回同意したが、

治療を決定したわけではない、

6回目をしなかったから説明義務違反

…これ、最高裁判決なんです((1)P.105)。





「同意はしていたが決定はしていない」

というわけのわからない理屈が

いま、最高裁に吹き荒れています。





詳細は(1)のP.96から読んでいただきたいのですが、

医療ミスではなく「説明義務違反」の

判例が大量に作られています。




この記者がこれだけ質問して、

彼は「決定をする義務」があると

考えているのでしょうか?





そもそも、本人ではなく兄弟の治療説明に

どのような立場で臨んでいるんでしょう?






権利だけ声高に主張して

義務をはたさず、

そして、

「説明に同意をしたけれども

決定はしていないし、する気もない」




最後になって、

「さあ、決定するのは兄さんです」、

とでもいったんでしょうか?





大量の患者さんを診て、、

救急を診ている状態でこれをやられたら

通常ブチ切れます(心の中で)。




しかも、弁護士さんと違って、

医師の説明コストはただ。

いくら時間をかけても患者さん側は無料です。







新聞を読んで読者はどう思うでしょう?

「新聞でもこう書いてある。

こうしなきゃ、やらなきゃ損なんだな」

と思うひとが出てきても不思議ではありません。







権利ばかりを主張し、

あまりに義務を知らない人が、

マスコミによって再生産されないことを祈ります。




あと、誤植発見。





>申し添えておくと、医師はその後も献身的に兄を診てくれた。






文章のつながりが悪いので、

どうも変な感じがしていましたが、

記者さんは

きっとこう言いたかったんでしょう。






>申し添えておくと、医師にはその後も献身的に兄を治療させた。


すっきりです。






(1)

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コメント

困ったことにこの人、一介の記者ではなく、

「毎日新聞埼玉東支局長」

という、立派な肩書きをお持ちなんですよね。
○クザなんかは、下っ端のチ○ピラが一般人に対して因縁を吹っかけてくることはありますが、親分さんクラスになると結構話が通じる場合が多いんですが…この新聞社は上から下までチ○ピラ揃いですかね?

この懐かしい久留米支局の方といい
http://ameblo.jp/med/entry-10034335063.html
なかなか楽しい面子を支局長にそろえていらっしゃいますねぇ

紙面で放談会でも開催してみては如何でしょうか
こちらも楽しく盛り上がる事間違いなしです

そのうち、「説明を受けたけど、決定したわけではない」と説明を繰り返しているうちに、治療が決定できず、手遅れになる例が出そうですね。
その場合でも、「できることをせずに手をこまねいていた」と医師有罪になるんでしょう。

最近、手術中でも予想外の変化があったら、手を止めて患者家族に説明しなくちゃいけなくなりそうに感じています。

Seisan先生ともあろうお方が…

>最近、手術中でも予想外の変化があったら、手を止めて患者家族に説明しなくちゃいけなくなりそうに感じています。

加藤先生はそれを怠ったばかりにタイホされたじゃないですか。何を今更…。

こんた 様

毎日新聞公開全国支局長会議
テーマ:医療報道について

ぜひやっていただきたいですね♪

毎日クオリティー



>申し添えておくと、医師にはその後も献身的に兄を治療させた。


…ワロタ

難しい問題ですね。

私達はリハビリですが、

訴訟問題になるケースはほとんど聞いたことがありません。

しっかり理解しなくてはいけない重要なことですね。

それにしても司法がしっかり整って欲しいものですね。

ネット暴力 「表現の自由」には責任が伴う(2月8日付・読売社説)

今回の読売社説、日ごろ医師を誹謗・中傷しているマスコミ記者の皆さんには我が身のこととして熟読してもらいたいものです。他人に義務を要求する前に、記者自身が義務を履行しないと説得力がありませんからね。

(余談ですが「~してもらいたい」はマスコミ記者が偉そうに振舞うための常套句。読売も朝日も社説を見れば「~してもらいたい」ばかり。他人に文句をつけるだけで建設的なことはしない記者連中が、なぜこんなに偉そうに振舞っているのか、昔からの疑問であります。)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090207-OYT1T01193.htm

 全く身に覚えのないことを言いふらされ、非難されたら、どれほど嫌な気分だろう。

 インターネット上で他人を中傷する行為は、「表現の自由」をはき違えた卑劣な犯罪だ。

 警視庁は、男性タレントのブログに事実無根の内容を書き込んだとして、17~45歳の18人を名誉棄損容疑で近く書類送検する。殺害予告を書いた別の1人については、脅迫容疑で書類送検した。

 18人は、東京都足立区で20年前に起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件にこの男性タレントが関与したとするでたらめな話を多数書き込み、名誉を傷つけた疑いが持たれている。

 「炎上」と呼ばれるブログなどへの集団攻撃が一斉摘発されるのは、今回が初めてになる。

 悪質な行為を取り締まるのは当然だ。ブログなどを閉鎖に追い込むため、あおる者もいる。警察は今後も厳正に対処すべきだ。

 憲法で保障された「表現の自由」は、健全な社会を守るためにある。匿名に身を隠したネット上での言葉の暴力とは、無関係だ。

 ネットへの書き込みをめぐっては、自分のホームページに不確かな情報を掲載し、飲食店経営会社を中傷したとして、名誉棄損罪に問われた男性被告が、東京高裁で先月末、逆転有罪となった。

 ネットの個人利用者に限って名誉棄損の基準を緩めた1審の無罪判決に対し、高裁は「被害者保護の点で相当ではない」と批判した。妥当な判断である。

 ネットでの中傷被害は増えており、昨年も中高校生が自殺している。警察庁によると、警察への相談は、2007年に過去最高の約8900件に上っている。

 韓国では、事実に反する内容を書かれた有名女優が昨年秋に自殺した。これを受け、与党がサイバー名誉棄損罪などを新設する刑法改正案を国会に提出している。

 日本では青少年保護を目的とした有害サイト規制法が昨年6月に成立し、4月から施行される。

 罰則はないが、施行後3年以内に必要なら見直すことになっている。今回のような事件が相次ぐ場合には、罰則を伴う内容への改正や新たな法整備を検討する必要も出てくるだろう。

 誰でも情報を発信できる時代だが、それには責任も伴う。

 ネット利用者は、使い方次第で自らの手足を縛りかねないことを認識しておかねばならない。子どものころから、家庭や学校で安易な利用の危険性を教えていくことも大切だ。

(2009年2月8日01時25分 読売新聞)

で、読売新聞はいつからすべての記事を記名記事にしてくれるんでしょう。文責をはっきりさせるのが筋なんでしょ?

非常に不愉快な記事ですね。
あくまでも記者からの目線ばかりで主観論だけです。
物事を多面的に捉え、客観的に記事にするという記者本来の資質が欠如しています。
この記者は自分はすべてにおいて正しいと思ってるのでしょうか?
自分の態度、理解度が医師をいらだたせたとは微塵も疑わないのでしょうね。
医者の立場からすると、いくら説明しても本質を理解してもらえず、堂々巡りになってお手上げ状態になることがありますが、今回はさらに「新聞記者」の立場を表に出して反感を買ったのでしょうね。
私もそうですが医者には権力を振りかざされると本能的に反発するタイプは多いですよ。

文責なら

>(2009年2月8日01時25分 読売新聞)
こういうのは「主筆」さまの文責なんでしょ
きっと
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大学から地域(僻地ともいう)の救急医療で疲弊しました。
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田舎で開業、借金は天文学的数字に。


今は田舎で開業して院長になりました。
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