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■「機内出産の「美談扱い」とんでもない! 産婦人科医「医療トラブル、事故に等しい」と指摘」

 



学会に行く途中、機内で

「お医者様はいませんか」

というお知らせ。



みんな最初は手を挙げない。

むー。

しょうがないかな。



もう一度、医師はいませんか?

とコールがあると

手を挙げたのが

100人超……。



そりゃ、学会に行く途中だから

みんな顔見知りだけど、

最初に手を挙げづらいですよね。







マスコミは相変わらず

無責任な美談がお好き。

万が一何かあったら

偶然立ち会った医師の責任はどうなるんでしょう?





機内出産の「美談扱い」とんでもない! 産婦人科医「医療トラブル、事故に等しい」と指摘
2015/5/11 18:26
http://www.j-cast.com/2015/05/11234867.html

カナダから成田空港へ向かっていた飛行機の中で、女性乗客が出産し、同機は予定より早く成田空港へ緊急着陸した。幸い母子ともに健康で、出産の瞬間は機内のほかの乗客から拍手が起きたという。

新聞各紙やテレビなどマスコミはこのハプニングを「美談」のように取り上げた。その一方、出産を控えた妊婦が搭乗することの危険性を指摘する意見があり、安易に「美談」扱いすることに疑問を持った人もいたようだ。

「無事でよかったけどさ・・・」

2015年5月10日、太平洋上を飛行中のエア・カナダ9便ボーイング767の機内で女性客が出産。同機は緊急事態だとして、成田空港に予定より約30分早い14時ごろに着陸した。

国土交通省成田空港事務所やエア・カナダによると、出産したのはカナダ国籍で23歳の女性。着陸後は救急車で病院に搬送されたが、母子ともに健康だった。

新聞各紙やテレビは、赤ちゃんを抱いた父親が飛行機から降りてくる写真や映像などを伝え、「美談」として大きく取り上げた。こうした報道を受け、ツイッターでは、

「お母さんも赤ちゃんも元気で何より」
「感動で泣きそう」

と、まさかのハプニングを祝福する投稿が相次いだ。

その一方、出産を控えた妊婦が飛行機に乗って大丈夫なのか、と違和感を覚えた人もいるようだ。

「いい話だけど、まだ産まれないと思って乗ったのか」
「おいおい。無事でよかったけどさ・・・」
「妊娠していて飛行機に乗るなんて気圧の変化や環境の変化で色々と危険すぎる・・・」

と安易に「美談」扱いすることに疑問を持った人も少なからずいたようだ。


予定日28日以内は「健康上の支障がない」と認める診断書

国交省航空局によると、日本の法律で妊婦の航空機の搭乗を制限する規定はない。対応は航空各社によって異なるという。

国内の多くの航空会社に共通しているのは、出産予定日28日以内の搭乗時に医師が「健康上の支障がない」と認める診断書の提出だ。また日本航空は7日以内、全日空は14日以内の場合、さらに医師の同伴が必要となる。そのほかスカイマークやピーチなど格安航空会社(LCC)各社も日数の違いはあるが、いずれも診断書の提出や医師の同伴が決められている。

エア・カナダの場合はどうか。同社によると、経過が順調で、過去に早産の経験がない場合に限り、妊娠36週満了時までの搭乗が許可されるという。ただ、あくまで乗客の自己申告に基づき、今回のケースでも出産後に妊娠期間などは確認していなかったという。

産婦人科診療所いのうえクリニックの井上純院長はJ-CASTニュースの取材に、

産婦人科医師としては、まったく笑えないニュースだった。もしも何らかのトラブルがあって、専門的な緊急蘇生の措置が必要だったとすればどうなっていたか」

と指摘する。

産婦人科医からすれば、機内での出産は事故だと言っても過言ではない。今回はあくまで『たまたま良かったケース』に過ぎない」

と「美談」扱いすることに警鐘を鳴らす。






結局、

トラブルになっていたら大変だけど

偶然、いい結果だったので美談になった、

という結果ありきの話です。



航空機のトラブルは(1)にあるような

腹立たしいものもあります。



良きサマリア人法が

日本では制定されていませんので

(2)にあるようなとんでもない事も

可能性としてはあります。





専門家の意見としては

多分、悪い結果になっても

医師の責任は無い(3)

というのがが正しいのでしょうけど、

航空機のなかでDr.コールされたら

なんとも勇気が必要ですよね。




参考記事
(1)
■「やめたら死ぬんでしょ」 客室乗務員は手伝わず、AEDを頼んだが、持ってこなかった 「飛行機内で救命中、傍観乗客の視線と写真撮影でPTSDに」
http://med2008.blog40.fc2.com/blog-entry-218.html

(2)
航空機内での心肺蘇生の実施により心的外傷を負った1例
http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/08/cprtrauma.htm#31c

 ある夏の夜の深夜に日本にある自宅クリニック前の路上で急病人が発生した。クリニックの医師が診察したところ,上気道閉塞を疑われる所見で挿管は不可能と判断された。救急車を手配して,転送のため近所の大学の救急救命センターに電話中,患者は吸気のまま呼吸が停止し呼びかけにも反応がなくなった。緊急で気管切開を行い,気管切開自体は成功したが血管を傷つけてしまい,出血多量で死亡した。その医師を待っていたのは,警察による業務上過失致死罪の容疑による取り調べであり,さらには当夜,あれだけ「助けてください」とその医師にとりすがった患者の妻からの弁護士を介しての損害賠償請求の通知であった……(以下略)

(3)
「行き倒れ患者や乗り物内の救急患者の診療」
樋口 範雄(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
http://www.med.or.jp/doctor/member/kiso/d10.html

 よきサマリア人の挿話はルカによる福音書第10章にあり、欧米では誰もが知っている話である。強盗に襲われて半死半生の人が倒れていた。通りかかった祭司もレビ人も通り過ぎ、あるサマリア人だけが彼を助けて介抱し、宿屋に運んでその宿代まで負担したという話である。キリストは、この寓話を紹介した後、当時の律法学者に問う。「この三人のうちで誰がこの倒れた人の隣人であるか」と。

 では、医師は、このような行き倒れや乗り物内で救急患者に出会った場合、どうすべきか。解答は明白なようだが、実際には、たとえば国際線の航空機内で救急患者が出て(しかもそれは日常茶飯事的に起こるという)、乗務員が「お医者様はいらっしゃいませんか」と尋ねたときに、すぐに立ち上がるのをためらう医師がいるという。それにはいくつかの理由がある。

 ①医師も専門分化が甚だしく、自分が救急の専門家ではない場合、実際には役に立たない可能性がある。

 ②たとえ救急の場面に立ち会った経験のある医師でも、眼前に現れるのは、診たこともない患者であり、通常はこれまでの医療記録や経過も一切わからない。しかも航空機内に一定の医療器具があるといってもそれには限界がある。助けてくれる他の医療職もいない。 

 ③これらの要素の結果、最善の措置がとれなかった場合、何らかの法的責任を問われるおそれがある。

 アメリカのすべての州やカナダでは Good Samaritan law(よきサマリア人法)という法律が制定されており、最後の③の心配に対処している。要するに、故意やそれに準ずるような重過失がない限り、医師の責任を問うことはできないと明記する。

 実は、わが国にも似たような条文がある。民法698条において「管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない」と明記する。その前の697条は、「義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)」と述べて、「管理者」の定義を定める。要するに、法的な義務がないのに善意で他人を助けようとしたものについては、そのやり方に過ちがあっても咎めないという趣旨である。

 ところが、わが国においては2つの問題が残る。第1に、ほとんど誰も民法698条を知らないこと(それに対し、Good Samaritan lawは、あまりに有名でアメリカのほとんどの医師は知っている)。第2に、法律を少し学んだわが国の一部の医師は、民法698条は自分たちには役に立たないという。なぜなら、自分たちには応招義務があるから。

 医師法19条は「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と明記する。したがって、医師には救助義務があるので、その際に過失があれば責任を免れないというのである。その結果、これらの論者の結論は、過失のないようにきちんと救助義務を果たすべきだということにはならない。彼らは、そんなことになったらろくなことがないので「寝たふり」をすべきだという。

 だが、医師法19条は「診療に従事する医師」と述べており、航空機内の乗客に過ぎない医師にそれが当てはまるとは思えない。のみならず、医師法19条は罰則のない公法上の義務に過ぎず、民法で想定する義務が、この場合の医師にあるとは思われない。ただし、このような心配性の医師のためにも、それから善意の行為を促進するためにも、日本でも、よきサマリア人法と同旨の法律ができるのはよいことである。


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コメント

申告したのか?

少なくとも日本の航空会社は、搭乗前に医師の証明を要求したり、10ヶ月に入ったら搭乗させなかったり、機内で分娩にならぬよう注意します。
外国でも同じなら、この妊婦は妊婦であることを隠して乗ったことになるか、未熟児を分娩したかです。満期ならまだしも、未熟児だったらとんでもないことです。

山口(産婦人科) 先生

いつもお世話になっております。
いやはや、怒濤の忙しさでリプライが遅れて済みません。

この手の問題はいつになっても解消できませんね。
ご指摘のように未熟児ならとんでもなくヤバいですし、やはり一般の人はリスクを軽く見ているのではないでしょうか。
我々医師はトラブルに巻き込まれないように気をつけるしかないと思います。
今後ともよろしくお願い致します!!
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フルコースをこなしたため貧乏から抜け出せず。
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大学から地域(僻地ともいう)の救急医療で疲弊しました。
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田舎で開業、借金は天文学的数字に。


今は田舎で開業して院長になりました。
でも、教授に内緒で開業準備していたころのハンドルネーム”中間管理職”のままでブログを運営してます。

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