2014/05/08
■「月に吠えらんねえ(1)」清家 雪子
詩のマンガが来ました。
清家 雪子さんで(1)。
しかも萩原朔太郎主人公で。
個人的に注目していたマンガ家さんが
こんなディープな世界に突入してくれるとは、
いやあ、これはいいです。
クリックするとAmazonに飛びます。
月に吠えらんねえ(1) (アフタヌーンKC)
私は本屋さんで
見かけた瞬間に購入してしまいました。
これは大当たりでした、個人的に。
興味ある方は、一話を試し読み出来ます。
http://www.moae.jp/comic/tsukihoe
↓こちらが作者のブログです。
月吠ノート
月刊アフタヌーン連載中の漫画『月に吠えらんねえ』の情報ノートです
http://hoerannee.blog.fc2.com/
いつかは
こういう作品が出るとは思っていましたが、
こんな形になるとは思いませんでした。
皆さん、読んだことありますか?
青空文庫の萩原朔太郎の
「月に吠える」。
「月に吠える」の序文を
読んでみたら
何だこりゃ?
ってすぐに思うはずです。
青空文庫 萩原朔太郎「月に吠える」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000067/card859.html
序
萩原君。
何と云つても私は君を愛する。さうして室生君を。
(以下略)
北原白秋
をい、をい、
北原白秋さん。
私が初読のときは、
なんだこりゃ???
……って、思ったものですよ。
このBLの香りに満ちあふれた北原白秋の文章。
しかも、後日、北原白秋は
「いやあ、あれは冗談だよ」
とか、しれっと言ってしまうのです
(出典忘れました。うろ覚え)。
ちなみに
「萩原朔太郎全集」も
この北原白秋の序文から始まっています。
萩原朔太郎全集なのに
北原白秋さんに序文から
雰囲気、乗っ取られている。
うわああああ。
もう一人が室生犀星。
朔太郎の大の友人です。
こいつらもどうしようもありません。
室生犀星と朔太郎の会話。
「いつ君は鎌倉へ移る?」
「近日中。」
「早く行けよ。居ない方が気持ちが好いから。」
しかしその言葉は限りなき友情を示す反語によって語られていた。
(「田端に居た頃(室生犀星のこと)」 筑摩書房 萩原朔太郎全集 第8巻 P.568)
め、めんどくせー!
もう、好きにしてください、って感じ。
BL痴話げんかにしか読めないよ、
まったく。
萩原朔太郎は
自殺した芥川龍之介に対して
「芥川龍之介の死」
という文章を書いています。
これがまた、芥川、萩原、室生の
3人の友情というかなんと言うか、
おまえら一体……
という感じです。
しかし芥川君が訪ねてきた時、私の顏を見るとすぐに叫んだ。
「君は僕を詩人でないと言つたさうだね。どういふわけか。その理由をきかうぢやないか?」
「要するに君は典型的の小説家だ。」
「僕は君を理解してゐる。
それに君は、君は少しも僕を理解しない。否。理解しようとしないのだ。」
(芥川)
「室生君と僕の關係より、萩原君と僕のとの友誼の方が、遙かにずつと性格的に親しいのだ。」
この芥川君の言は、いくらか犀星の感情を害したらしい。歸途に別れる時、室生は例のずばずばした調子で、私に向かつて次のやうな皮肉を言つた。
「君のやうに、二人の友人に兩天かけて訪問する奴は、僕は大嫌いぢや。」
その時芥川君の顏には、ある悲しげなものがちらと浮んだ。それでも彼は沈默し、無言の中に傘をさしかけて、夜の雨中を田端の停車場まで送つてくれた。ふり返つて背後をみると、彼は悄然と坂の上に一人で立つてゐる。自分は理由なくして寂しくなり、雨の中で手を振つて彼に謝した。――そして實に、これが最後の別れであつたのである。
(筑摩書房 萩原朔太郎全集 第9巻 P.287〜抜粋)
この直後に芥川は自殺してしまうのです。
3人の友情の微妙な感じが出ています。
まるで三角関係みたいな感じです。
最後に三好達治。
これまたいろいろ朔太郎ラブ度が高い人ですが、
一番弟子でもあり、
もういろいろな感情を
抱いている人です。
岩波文庫の萩原朔太郎詩集は
三好達治が選者になっています
あとがきから抜粋してみました。
「月に吠える」はそのようにして、この国の現代詩に一つの際立った眺望をもった近代的見渡しの窓口を開いた点で全く独創的であった。
一種革命的魅力で以て当時の青年たちを強く捉えた。
しかしながらこの詩風の一時期は、極めて短小な時日の後に終熄した。
閃光的な燃焼の後にふっつり久しく沈黙した。
それが再び詩集「氷島」に再度その爆発的表白を試みた時には、しかしながら既に何かしらそこにはもはや取りかえすすべもなく失われ変質されたものが私には感じられるのである。
百木揺落の粛殺たる声に私の耳はついに耐ええないのかも知れない。
あんなにキラキラして独創的に輝いていたのに、
見る影も無く枯れ落ちた草木のように見え、
私には耐えることが出来ません、
ってことでしょうか。
三好達治にとって、
萩原朔太郎はどれほど大きな存在だったのでしょう。
萩原朔太郎を中心に、
先輩に北原白秋、
友人に室生犀星、芥川龍之介、
後輩に三好達治、
という人間関係が見えてきます。
豪華ですけど、
この中にいたら病みそう。
こういう人間関係が見えてくると
文学って強烈に面白くなるというか、
はまってしまう要素が
大きくなります。
こちらが管理人の持っている関連ある詩集。



ちなみに
八木重吉だけは
今回の作品とは関係ありません。
雨が
あがるように
しずかに
死んでいこう
打ちのめされてしまいました。
ビーンと響くような言葉。
これまたすごい詩人さんなので
今回の作品が気になる人は
ぜひぜひ手に取ってみてください。
おまけ。清家 雪子さんの著作。

石川啄木や正岡子規、
芥川龍之介や夏目漱石については割愛。
終わらなくなってしまいますので。
ということで、
かなり個人的なツボにはまった
「月に吠えらんねえ(1)」。
清家雪子さんが
どんな世界を描き出してくれるか
今後も大変楽しみにしております。
(1)当ブログ関連記事
■開業つれづれ:「まじめな時間(1)」清家 雪子 「秒速5センチメートル」マンガ版作者
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(2)関連書籍
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萩原朔太郎詩集 (岩波文庫)
中原中也詩集 (岩波文庫)
立原道造詩集 僕はひとりで 夜がひろがる
宮沢賢治全集〈1〉 (ちくま文庫)
北原白秋詩集 (新潮文庫)
永遠の詩(8) 八木重吉
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