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2008.06/07 [Sat]
■夕暮れ時に考えること
5歳ぐらいのとき、2人で
どこまでも遠くへ歩いていったことがあります。
…
私は
小さなとき、
海沿いの小さな町に住んでいました。
「じゃあね」
と遊んでいた友達と別れ、
夕暮れの中、
私は何を思ったか、
「あっちの方に行ってみようか?」
と、となりの子に言いました。
「…うん」
「じゃあ、行こう!」
そして私たちは家とは
逆の方向に歩いてきました。
夕暮れの町は
太陽の色に染まり、一色になっていました。
まぶしいぐらいの光です。
長い長い影が出来ます。
影を踏んだり、踏まれたりしながら
歩いていきます。
私たちはうきうきしながら、
夕凪の町を歩いていきました。
家とは逆方向に。
海のそばに住んでいると
迷子になることは
めったにありません。
なぜ?
それは、
海のそばに住んだ事がある
子どもなら知っているように(笑)、
海岸線が見えている限り
迷ったら海まで歩いて、
そこから右か左に行けば
どうにかなるのです(笑)。
かなり遠くまで歩いてきました。
でも、まだ大丈夫。
楽しい。
どこまでもいけるんじゃないだろうか。
そう思えるほどでした。
「大丈夫かな?」
その子は言いました。
「へーき、へーき。大丈夫だよ」
私はずんずん先へすすみました。
でも、私たちは何かの拍子に
すっかり迷子になってしまいました…。
どこが海か、
どこが山か、
自分がどこにいるのか
さっぱり分からない場所に
入り込んでしまったのです。
気付くと
周囲は暗く、陽はすっかり落ちていました…。
そして、
いつの間にか
一緒に歩いていた子がいません。
たった一人になってしまった私は
急に心細くなって、
泣いてしまいました。
大きな声で泣きました。
どの位泣いたか分かりません。
ふと、途方にくれていた私の前に、
一緒に歩いていた子が
警察官と一緒に小走りで
駆け寄ってくるのが見えました。
その子は警官にしっかり答えていました。
「…ええ?ずいぶん遠くまできたねえ。」
…
その子は、
私が悪い、
とは一言も言いませんでした。
でも、
私は罪悪感で一杯でした。
私が、行こう、って言ったからだ。
私が、大丈夫、って言ったからだ…。
警官はパトカーに乗せて
私たちを送ってくれました。
パトカーで家までつれてこられた
私たちを見て
周囲が大騒ぎになったことは
言うまでもありません(笑)。
母親は、何度も警官に頭を下げ、
そして私の頭も押さえて下げさせました。
私の目頭は泣きつかれて腫れたままでした。
そして、一段落した後、
母親にはゲンコツで、
しっかり怒られました。
あとにも先にも
パトカーに乗ったのは
このときだけです(笑)。
私は私のせいにしなかった
その子のことをとても気に入りました。
「大冒険だったね」
と私がのん気に言うと、
その子は明らかにいやそうな顔をして
「でも、とっても怒られたよ」
と言い返されました。
…
去年、その子が亡くなりました。
いつしか
私も、その子も大きくなり、
ともに故郷を離れていました。
そして、
その子は去年、
不治の病にかかりました。
去年は、夏休みをつぶして
育った故郷の
海沿いの町に行きました。
迷子になった道や、
さび付いた歩道橋や、
すっかり新しくなってしまった小学校や、
それでも変わらないグランドや、
取り壊されている古い病院を
いっぱい写真に収めました。
…
戻ってきて、
たくさんの写真を
その子にあげると
とても嬉しそうな目をして
いっぱい話をしました。
もちろん、迷子の話も。
でも、その子の中では
自分が悪くて、
警官に捕まってしまった
話になっているようでした(笑)。
「パトカーに乗せられたときは
刑務所に連れて行かれるかと思ったよ」
「…大騒ぎになったもんね、あのあと…」
2人で笑いました。
…
その子は十分に
がんばって、
がんばって、
それから
遠くに行ってしまいました。
お別れのとき、
私は子どもの頃と同じぐらい泣きました。
いつまでも泣きました。
夕暮れのときには、
小さかった頃、
目が腫れるまで泣いたことや
警官と一緒に走ってくるあの子のことを
時々思い出したりします。
「もう少し行けるかな?」
「へーき、へーき」
…
夕凪のときに思い出すのは
そんなことばかりです。
長文読んでいただきありがとうございます。
どこまでも遠くへ歩いていったことがあります。
…
私は
小さなとき、
海沿いの小さな町に住んでいました。
「じゃあね」
と遊んでいた友達と別れ、
夕暮れの中、
私は何を思ったか、
「あっちの方に行ってみようか?」
と、となりの子に言いました。
「…うん」
「じゃあ、行こう!」
そして私たちは家とは
逆の方向に歩いてきました。
夕暮れの町は
太陽の色に染まり、一色になっていました。
まぶしいぐらいの光です。
長い長い影が出来ます。
影を踏んだり、踏まれたりしながら
歩いていきます。
私たちはうきうきしながら、
夕凪の町を歩いていきました。
家とは逆方向に。
海のそばに住んでいると
迷子になることは
めったにありません。
なぜ?
それは、
海のそばに住んだ事がある
子どもなら知っているように(笑)、
海岸線が見えている限り
迷ったら海まで歩いて、
そこから右か左に行けば
どうにかなるのです(笑)。
かなり遠くまで歩いてきました。
でも、まだ大丈夫。
楽しい。
どこまでもいけるんじゃないだろうか。
そう思えるほどでした。
「大丈夫かな?」
その子は言いました。
「へーき、へーき。大丈夫だよ」
私はずんずん先へすすみました。
でも、私たちは何かの拍子に
すっかり迷子になってしまいました…。
どこが海か、
どこが山か、
自分がどこにいるのか
さっぱり分からない場所に
入り込んでしまったのです。
気付くと
周囲は暗く、陽はすっかり落ちていました…。
そして、
いつの間にか
一緒に歩いていた子がいません。
たった一人になってしまった私は
急に心細くなって、
泣いてしまいました。
大きな声で泣きました。
どの位泣いたか分かりません。
ふと、途方にくれていた私の前に、
一緒に歩いていた子が
警察官と一緒に小走りで
駆け寄ってくるのが見えました。
その子は警官にしっかり答えていました。
「…ええ?ずいぶん遠くまできたねえ。」
…
その子は、
私が悪い、
とは一言も言いませんでした。
でも、
私は罪悪感で一杯でした。
私が、行こう、って言ったからだ。
私が、大丈夫、って言ったからだ…。
警官はパトカーに乗せて
私たちを送ってくれました。
パトカーで家までつれてこられた
私たちを見て
周囲が大騒ぎになったことは
言うまでもありません(笑)。
母親は、何度も警官に頭を下げ、
そして私の頭も押さえて下げさせました。
私の目頭は泣きつかれて腫れたままでした。
そして、一段落した後、
母親にはゲンコツで、
しっかり怒られました。
あとにも先にも
パトカーに乗ったのは
このときだけです(笑)。
私は私のせいにしなかった
その子のことをとても気に入りました。
「大冒険だったね」
と私がのん気に言うと、
その子は明らかにいやそうな顔をして
「でも、とっても怒られたよ」
と言い返されました。
…
去年、その子が亡くなりました。
いつしか
私も、その子も大きくなり、
ともに故郷を離れていました。
そして、
その子は去年、
不治の病にかかりました。
去年は、夏休みをつぶして
育った故郷の
海沿いの町に行きました。
迷子になった道や、
さび付いた歩道橋や、
すっかり新しくなってしまった小学校や、
それでも変わらないグランドや、
取り壊されている古い病院を
いっぱい写真に収めました。
…
戻ってきて、
たくさんの写真を
その子にあげると
とても嬉しそうな目をして
いっぱい話をしました。
もちろん、迷子の話も。
でも、その子の中では
自分が悪くて、
警官に捕まってしまった
話になっているようでした(笑)。
「パトカーに乗せられたときは
刑務所に連れて行かれるかと思ったよ」
「…大騒ぎになったもんね、あのあと…」
2人で笑いました。
…
その子は十分に
がんばって、
がんばって、
それから
遠くに行ってしまいました。
お別れのとき、
私は子どもの頃と同じぐらい泣きました。
いつまでも泣きました。
夕暮れのときには、
小さかった頃、
目が腫れるまで泣いたことや
警官と一緒に走ってくるあの子のことを
時々思い出したりします。
「もう少し行けるかな?」
「へーき、へーき」
…
夕凪のときに思い出すのは
そんなことばかりです。
長文読んでいただきありがとうございます。
*Comment
お友達のご冥福をお祈りします。
ふと、高校時代に友人を亡くして医師を目指した昔のことを思い出しました。
日々の勤務の忙しさに、すっかり足が遠のいてしまっていましたが久しぶりにお墓参りに行ってみます。
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