2010/06/25
■開業つれづれ:効果2倍 副作用2.6% 「イレッサ:遺伝子変異の肺がん患者に使用、生存期間2倍に--東北大など研究チーム」
効果があるのですが、
いろいろと問題の多いイレッサ。
肺がんの場合、
イレッサを選択しなくてはいけない状況は
他に選択肢はほとんどない気がします。
”★ イレッサの副作用でご家族を亡くされた方を探しています。情報をお寄せください”
という、イレッサ薬害被害者の会(1)。
でも、
その段階でイレッサを使わなければ
他に治療薬はあまりなく、
もしもうまくいけば生存期間が2倍になる、
という状況。
もしも、同じ状況なら
イレッサを選択したでしょうか。
しないのでしょうか。
副作用と効果。
今回のケースでは
生存期間は平均2倍に伸びます。
しかし、
間質性肺炎は2.6%の確率で起き、
1人/230人(0.4%)
の確率で死亡します。
薬には
100%の効果はなく
(あるとすれば魔法の薬です)、
100%の副作用もない
(あるとすればそれは”毒”です)。
そんなときに
医師と患者さんはどのように
考えるのでしょう。
イレッサ:遺伝子変異の肺がん患者に使用、生存期間2倍に--東北大など研究チーム
毎日新聞 2010年6月24日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/science/news/20100624ddm012040080000c.html
◇2.6%に重い副作用も
特定の遺伝子が変異した進行性の肺がん患者に、治療薬「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)を使うと、通常の抗がん剤治療より生存期間が2倍になることが、東北大などの研究チームが実施した臨床試験で分かった。また、呼吸困難につながる間質性肺炎の副作用も改めて確認。チームは間質性肺炎の既往者を除くことを条件に、新たな治療法として推奨するよう提唱している。
24日付の米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表した。
08年に日本で肺がんのために死亡したのは6万8847人で、がんの死因で最も多い。うち約80%が腺がんなどの「非小細胞肺がん」で、細胞のがん化にかかわる遺伝子「EGFR」の変異が原因とされる。その変異は日本人女性の肺がん患者の3分の2、男性の15%で見つかっている。
チームは遺伝子変異が見つかった非小細胞がんの患者230人の半数に最初からイレッサを使い、残る半数は抗がん剤が効かなくなった後にイレッサを投与。その結果、最初からイレッサを使った場合の平均生存期間は30・5カ月で、抗がん剤のみの13・9カ月と比べ2倍に延命できた。抗がん剤後にイレッサを使用した患者の生存期間は23・6カ月だった。
一方で、イレッサを最初から使った患者の
2・6%で間質性肺炎
の重い副作用が発生し、
うち1人が死亡
した。また、遺伝子変異がない場合に投与すると症状悪化の傾向がみられた。【山田大輔】
(2)のような理解に苦しむ
民事訴訟もありますが、
効果2倍と副作用2.6%、
どう考えますか、
という問題です。
副作用なく効果だけほしい
というのは無理な話なんですが、
それを理解してくれない方が多くて
医療現場は大変です。
理解できない方が正しくて、
理解するまで説明すべき
というのが現在の裁判所の立場のようです。
正しいと思いますか?
速効で承認をとったイレッサ。
希望通りの効果、
しかし副作用が出て裁判。
厚労省の承認が萎縮し、慎重になり、
さらに日本で未承認という
ドラックラグが発生する…。
こうやって医療は
形を変えていくのです。
(1)
イレッサ薬害被害者の会
http://homepage3.nifty.com/i250-higainokai/
(2)
■”モルヒネを使って死亡させた” 「イレッサ副作用死:投薬訴訟 遺族が控訴 /静岡」
http://med2008.blog40.fc2.com/blog-entry-779.html
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コメント
延命治療
そんなに意義のあることでしょうか。
死は必ず そして 遍く全ての人におとずれます。
マツゴに及んで 生に汲々とするのは無様なことです。
治るものは 何をしなくても治りますし
治らないものは 何をしても治らないと おもふょ。
2010/06/25 11:39 by ターミナル URL 編集
ターミナル
>そんなに意義のあることでしょうか。
>死は必ず そして 遍く全ての人におとずれます。
>マツゴに及んで 生に汲々とするのは無様なことです。
>治るものは 何をしなくても治りますし
>治らないものは 何をしても治らないと おもふょ。
その言葉、自分の子供や親にも言える?
2010/06/25 13:19 by XY URL 編集
横レス申し訳ありません。
子供には言えませんがw親には言いますよ。延命治療が全額自腹なら。
幸い日本はその類は大部分、下手すると全額「他人の金」ですから実際は言わずに済むのはまあ有難い事ではありますw
2010/06/25 14:00 by 10年前にドロッポしました。 URL 編集
お気遣いなく
積極的な治療はおこなわずに
発見後 半年で他界いたしました。
黄疸が発症して検査を受けた時点で
本人は癌の告知を受けたようです。
治療に振り回されることなく
死を迎えるまでの時間を
有意義に過ごせたことは
故人にとっても家族にとっても
幸せだったと思っております。
2010/06/25 15:38 by ターミナル URL 編集
NoTitle
2010/06/25 16:38 by 放置医 URL 編集
どうしよう!!
イレッサ以外の選択はなさそうなのですが、
本当に勧めてよいものか悩んでいます。
(本人はまだ望みを持っているところが私にとって辛いところです)
2010/06/25 19:31 by saki URL 編集
>どうしよう!!
イレッサなんか使わずに
死んだ方がいいらしいよ。
一介の医師としては理解できん…。
2010/06/25 19:51 by XY URL 編集
理解できなくても
2010/06/25 23:48 by はまぐり URL 編集
> どうしよう!!
「末期の」というのがよくわかりません。
「手術はできないと言われた」ということでしょうか?
そもそもですが、治療方針は当事者の意思を尊重するのが
昨今の主流かと思います。
リスクとベネフィットについての説明を主治医から受けて
その上で本人が望みをもっているなら、そうさせればよい
のではないかと思います。
2010/06/26 00:37 by 精神科医です URL 編集
精神科医ですさま
末期でなく進行がんです(同じか?)。
StageⅢBということなので
私としては、もう・・・・なのです。
2010/06/26 07:39 by saki URL 編集
NoTitle
決めるのは本人
でも、訴えるのは家族(+弁護士)です。
本人の思いと家族の思いは違うものです。
皮肉なことですが、家族関係が悪いとトラブルになりやすく、
死んでしまった本人が証言してくれることはありません。
医師を助けてくれるのは、数々の同意書や承諾書などの証拠だけです。とは言っても家族やマスコミが騒ぎ立てることは違いないでしょうが。。。
2010/06/26 15:26 by uchitama URL 編集
とりあえず
ターミナルに化学療法なんて言ってないよこの記事。
あと進行がんと言っても臓器べつに予後は全く違うし。
2010/06/28 01:22 by へるちょんぺ URL 編集