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■「―南淵明宏医師の名誉毀損敗訴判決、言い訳レター-今後も南淵証人弾劾証拠に永続的に活用可能」

陰ながら応援させていただいております、

”紫色の顔の友達を助けたい”
http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/

に、

かの有名な”いろもの”

南淵明宏医師の名誉毀損敗訴判決が

載っております。




>この手術室にゼニと名声が埋まっている

という発言をされたり、

勤めていた病院を

無断バイトや、

バイト先の病院から

ベンツをもらったりして

解雇され、

心臓のグラフトのビデオを撮っているとき、

ビデオが回っていなくて、

グラフトをやり直した疑いがあったりとか、

なんだかすごいです(笑)。






諸事情は先生のブログを

読んでいただくとして、

この”南淵明宏医師”、



>自分が全く使用したこともなければ文献も読んだことがない人工心肺や専門外の小児心臓手術に専門証人として出てきた
くらいですから、今後も、検察側や民事裁判でも証人としてあるいは、被告として裁判に関わってくる可能性があるでしょう。



という方です。

マスコミが注目するような事件には

当然、

首を突っ込んでくることが予想されます。





以下、超長文になりますが

”紫色の顔の友達を助けたい”

より

引用させていただきました。








弁護側証拠採用決定―南淵明宏医師の名誉毀損敗訴判決、言い訳レター-今後も南淵証人弾劾証拠に永続的に活用可能

http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_f738.html


2008年5月15日 (木)
弁護側証拠採用決定―南淵明宏医師の名誉毀損敗訴判決、言い訳レター-今後も南淵証人弾劾証拠に永続的に活用可能
1. 弁護側証拠一部採用



 前々回のブログ



検察官の「混乱」と「弁護側証拠に全て『不同意』」-30字と62430字―



http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/3062430_6609.html



でお知らせしましたが、前回の公判日の前日に検察官から弁護側証拠の全てに「不同意」との連絡がありました。



 これに対して、弁護側は今日(5月14日)の公判で「証拠調請求に関する意見書」を提出。最終的に弁1(言い訳レター)、弁2(弁1の封筒)、弁8(医学新聞)、弁9(南淵医師敗訴判決)が正式に証拠採用が決定しました。



2. 今後の南淵医師証人関連裁判で弾劾証拠に活用



 なにしろ、自分が全く使用したこともなければ文献も読んだことがない人工心肺や専門外の小児心臓手術に専門証人として出てきたくらいですから、今後も、検察側や民事裁判でも証人としてあるいは、被告として裁判に関わってくる可能性があるでしょう。そんな時には、是非、弁9をバンバン活用していただきたい。



『いろもの』に負けられるか!



http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_3432.html



「エセ・ブラックジャック」の正体



http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_fab4.html



3.「自由な証明」



 ところで、法律家の方ならご存じのいわゆる「自由な証明の対象」[i]であることが、弁護側の意見の主旨でした。裁判長はこの「自由な証明の対象」について以前に、「他の週刊誌や単行本からの証拠は別として、弁1、弁2、弁8、弁9については、すでに公判で証人に提示しているので、証拠採用してもよいのでは。」旨話を検察官と弁護人に簡単に話しをして、特に論争されることもなく決定しました。



4.各証拠と該当公判部分



弁1 

標目:手紙(2005年12月1日)

作成者:南淵明宏

立証趣旨:地裁判決及び被告人に対する南淵の評価など

(略)



弁2

標目:封筒(2005年12月1日)

作成者:南淵明宏

立証趣旨:弁1の手紙が封入されていた封筒の記載など

(略)



弁9


標目:横浜地裁2004年8月4日判決(判例時報1875号119頁)

作成者:横浜地方裁判所



立証趣旨:南淵が、自分の勤めている病院の医療過誤により死亡した元患者の遺族に協力したため解雇された」と発言したため、この発言が名誉毀損に該当するとして、南淵が勤務していた病院が南淵を訴えた裁判で、横浜地方裁判所が、南淵が退職したのは、病院に無断で他の病院でアルバイトをしたり、ベンツの供与を受けたりしたことが発覚したためであると認定し、南淵の上記発言は真実でなく、真実と信じるについて相当の理由もないとして、名誉毀損の成立を認めたことなど



証拠:



「弁護側証拠 第9号証



判例時報 1875号 119-129頁



▽医療法人の経営する病院に勤務する医師が無断アルバイトを理由に退職したにもかかわらず、医療過誤の事実を患者側に伝えて解雇されたなどと週刊誌の取材やテレビで発言した場合、病院の社会的評価を低下させたとして、医療法人の医師に対する損害賠償請求が認容された事例



(損害賠償請求事件 横浜地裁 平成13年(ワ)961号



平成16年8月4日 民事第5部判決(控訴<控訴取り下げ>・確定)



 一 Xは、複数の病院及び診療所を設置運営している医療法人であるところ、平成8年8月3日付で無断アルバイトが発覚してA病院を退職した医師Y(=南淵明宏)が、週刊誌の取材やテレビ番組などで、同病院の医療過誤により死亡した元患者の遺族に協力したため解雇されたなどと発言したため、右発言により名誉を毀損されたと主張し、Y(=南淵明宏)に対して、3500万円の損害賠償を請求した。



 これに対し、Y(=南淵明宏)は、(一)Y(=南淵明宏)の発言内容は、真実であるか、真実と信ずるにつき相当の理由があるから、その発言には違法性がなく、また、Y(=南淵明宏)には名誉毀損の故意・過失がない、(二)Y(=南淵明宏)は、突然に解雇され、かつ、虚偽の事実を流布されたことにより名誉を毀損されたものであり、右発言は、これを回復・擁護するために必要なものであったから、違法性はない、などと主張した。



 二 本判決は、(一)Y(=南淵明宏)が無断で他の病院でアルバイトをしたり、ベンツの供与を受けていることが発覚し、院長から退職を求められ、これを了解して退職したのにかかわらず、週刊誌の取材やテレビ番組などで、病院の医療過誤により死亡した元患者の遺族に協力したため解雇されたとの印象を与える発言は、真実であるとは認められず、また、そう信ずるに相当の理由も存在しない、(二)医療過誤事件での出廷する日が近づくと医療法人から執拗な嫌がらせがあり、病院側の代理人が何度も電話をかけてきたりしたとの発言は、真実とは認められず、また、そう信ずるにつき相当の理由も存在しない、(3)病院の医療過誤で患者が死亡しても、その死因などを説明することは病院ではタブーだった旨の発言も、それが真実と認められない以上、公正な意見・論評とは認められない、などと判断したうえ、右発言は、いずれもXの社会的評価を低下させる名誉毀損行為に当たり不法行為が成立するとし、Y(=南淵明宏)に対して、慰謝料400万円と弁護士費用40万円の支払を求める限度で本訴請求を認容した。



 三 人の名誉は、古くローマ法の時代から人格権の中でももっとも重要な権利として不法行為法の保護を受けてきたが、名誉毀損と不法行為の成否については、摘示された事実が真実であると証明されたとき、あるいは真実と信ずるについて相当の理由があるときには、不法行為が成立しないとするのが確定した判例理論である(最一判昭41・6・23民集20・5・1118、本誌453・29)。



 そこで、本件では、主として、もとA病院に勤務していた医師Y(=南淵明宏)の、同病院の医療過誤により死亡した元患者の遺族に協力したため解雇されたなどとする発言の内容が真実であるかどうかが争われたが、本判決は、関係証拠を検討の上、右発言内容は真実であるとは認められず、また、そう信ずるにつき相当の理由も存在しないと判断し、Y(=南淵明宏)の不法行為責任を肯認した。



 本判決は、特に目新しい判断を示したものではないが、
問題の医師は、人気漫画「ブラックジャックによろしく」に登場する心臓外科医のモデルで、「ブラック・ジャック解体新書」などの著書がある医師であるとして知られ、社会の関心を集めたケースであるので、事例的意義があるものとして紹介する。






〈参照条文〉民法709条・710条・723条



〈当事者〉



原告 医療法人社団 愛心会



同代表者理事長 高橋良裕



同訴訟代理人弁護士  濱 秀和



同 宇佐見方宏



同 奥田圭一



同 後藤正幸



同 菅沼 真



同  重 隆憲



同訴訟復代理人弁護士  宮崎良夫



被告 甲野太郎(=南淵明宏)



同訴訟代理人弁護士 畑山 譲



同. 浜田 薫



【主文】 



一 被告(=南淵明宏)は、原告に対し、440万円及びうち金100万円に対する平成12年11月26日から、うち金150万円に対する平成12年12月24日から、うち金150万円に対する平成12年3月7日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。



二 原告のその余の請求を棄却する。



3 訴訟費用はこれを20分し、その3を被告(=南淵明宏)の負担とし、その余を原告の負担とする。



四 この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。



【事実及び理由】



第一 請求



一 被告(=南淵明宏)は、原告に対し、3500万円及びうち金3000万円に対する平成12年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。



二 訴訟費用は被告(=南淵明宏)の負担とする。



三 第一項につき仮執行宣言



第二 事案の概要



 本件は、原告が、平成12年11月26日発行の会報誌「考心」に掲載された被告(=南淵明宏)の寄稿文並びにそのころ被告(=南淵明宏)が取材を受けることにより掲載された同年12月24日発行の「読売ウイークリー」の記事及び平成13年3月7日放送の日本テレビ「きょうの出来事」の放送内容に、原告の設置運営する乙山病院(以下「原告病院」という。) における医療過誤により死亡した元患者の遺族に被告(=南淵明宏)が協力したため原告病院を解雇されたなど、原告の社会的評価を低下させる表現が含まれており、被告(=南淵明宏)は故意に原告の名誉を毀損したものであると主張して、被告(=南淵明宏)に対し不法行為に基づく損害賠償として3500万円及びうち3000万円に対する不法行為の日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを請求した事案である。



一 前提となる事実(証拠の引用のないものは当事者間に争いがない。) <編注・本誌では証拠の表示は省略ないし割愛します。>



(1) 当事者等



 原告は、医療法人社団徳洲会グループに属する医療法人社団であり、神奈川県下において、原告病院を含む複数の病院及び診療所等を設置運営している。



 被告(=南淵明宏)は、平成5年10月一日から平成8年8月13日まで原告病院心臓血管外科に勤務していた医師であり、現在は、医療法人社団丙川会の設置運営する丁原病院心臓病センターの心臓外科部長である。



(2) GVHD裁判



ア 平成5年12月、被告(=南淵明宏)が主治医を務めていた戊田松夫(以下「戊田」という。)は、原告病院において冠状動脈バイパス手術及び僧帽弁置換術を施行され、手術時の出血量が多かったために、血小板輸血を受けた。戊田は、輸血後、移植片対宿主病(GVHD)を発症し、術後14日目に肺炎を併発し、呼吸不全により死亡した。



イ 戊田の遺族は、平成8年3月ころ、戊田の死亡は日本赤十字社及び原告病院医師の過失によるものであるとして、日本赤十字社及び本訴原告である医療法人社団愛心会に対し損害賠償を求める訴え(以下「GVHD裁判」という。)を横浜地方裁判所に提起した。



ウ 平成10年10月30日、GVHD裁判第=回口頭弁論期日において、被告(=南淵明宏)は、戊田の遺族らの申請証人として出廷し、証言を行った。



エ 平成12年11月17日、横浜地方裁判所は、GVHD裁判につき、日本赤十字社に対する請求を棄却し、本訴原告である医療法人社団愛心会に対し4000万円の支払を命じる判決を言い渡した。本訴原告は上記判決に対して控訴せず、上記判決は確定した。



(3) 被告(=南淵明宏)の退職



 被告(=南淵明宏)は、原告病院を平成8年8月13日付けで退職した。



(4) 「考心」掲載内容



「考心」は、被告(=南淵明宏)による心臓外科手術を受けた患者及びその家族らにより構成される「心臓手術後の生活を考える会」(略称「考心会」)の会報誌である。



 平成12年11月26日付「考心」には、下記の部分を含む被告(=南淵明宏)の寄稿文が掲載された。



(ア) ある裁判の判決が2000年11月17日にありました。「GVHD裁判」と呼ばれる裁判です。私はこの裁判に大きくかかわって来ました。



(イ) 私が甲田市の徳洲会病院に赴任してまもなく、冠状動脈バイパス手術と僧帽弁置換術をお受けになったM氏が、術後十四日目に肺炎で亡くなられました。直接の死因は肺炎ですが、GVHDという輸血による合併症を発症した状態での死亡でした。



(ウ) S医師はその後、私がその甲田市の病院を突然に解雇された直後、その病院の常勤医師になりましたが、当時外部医療機関に勤務していたS医師がM氏を執刀したのは病院の方針でした。



(エ) M氏のご遺族は日赤と徳洲会を相手取り訴訟を提訴されました。



(オ) 私は甲田市の病院の院長から「どうして事実を家族に話したんだ!おまえはそういうところがまだまだ未熟な人間だ!」と叱られました。



(カ) 当時、GVHDで患者が死亡しても、まともに死因などを説明する医師は日本にはいなかったようです。またそうすることはむしろ医師社会、特に営利や選挙活動を主体とする病院ではタブーだったのです。私は同じ年の7月に甲田市の病院から突然クビを言い渡されました。私が現在の病院に移ってしばらくして、異例なことですが、原告側の裁判の証人として私は出廷することになりました。



(キ)出廷する日が近づくと徳洲会からの執拗な嫌がらせが丁原病院に勤務する私や病院を襲いました。徳洲会弁護士のI氏からは何度も電話がかかってきました。



(ク)M氏の裁判は日赤を動かし、多くの人の命を救ったといえます(私はクビになりましたが)。



(5) 「読売ウイークリー」掲載内容



 読売新聞社は、平成12年12月24日付け発行の「読売ウイークリー」に、「白い巨塔と闘う」「医師たちの良心」「医療ミスで証言台に立つ勇気」と題して、下記の部分を含む記事を掲載した。



(ア) Mさん(当時65歳)は1993年12月29日、神奈川県甲田市の総合病院で、HIV感染と思い込んだまま亡くなった。



(イ) Mさんは狭心症のため、同病院で冠状動脈バイパス手術を受けた。同病院は、近隣の大学病院からも患者が紹介されてくるような、全国的にも心臓外科の最先端をいく病院として知られており、Mさんもほかの病院から転院してきた。主治医は、赴任したばかりの福山晴夫医師(仮名=42)で、実際に執刀したのは、当時、他の病院に勤務していた同病院顧問のS医師だった。



(ウ) 福山医師は意を決し、遺族に対してGVHDだったことを明かし、次の3点を説明した。①輸血で起こるかも知れないGVHDという合併症のことは、85年ごろから医師の間では周知の事実だったこと②そういった危険な輸血成分(血小板)の投与に関与した自分にも責任があること③いったんGVHDになると有効な治療法はないが、日赤、あるいは病院が事前に放射線照射をしていれば、予防できた可能性が強い。だが、この病院は照射装置を備えていなかったこと。



(エ) 病院の院長は、福山医師に対して「どうして事実を家族に話したんだ!お前のそういうところが未熟なんだ」と、烈火のごとく怒鳴りまくったという。同年7月には、「君の手術は、だれも手伝わない」と院長から事実上の解雇宣告を受けた。



(オ) そして、その二年後。同じ神奈川県内の病院に移っていた福山医師は、原告側の証人として出廷することを申請された。出廷する日が近づくと、福山医師の周辺で、医療機器納入業者などが事実無根のイヤガラセ情報を流したり、病院側の代理人が何度も電話をかけてきたりしたそうだ。



(6) 「きょうの出来事」放送内容



日本テレビは、平成13年3月7日、「きょうの出来事」中で、「医療ミスで患者を死なせてしまった医師。遺族に全てを話し、病院を追われた彼は、ある決断をします。医師と患者、そして病院のあるべき姿とは。今日の特集です。」とのアナウンスの後に、「8年前、ある病院で患者の死亡事故がありました。原因は医療ミス。遺族に真実を告白した医師は病院を追われてしまいます。患者に対する責任を自らに問い続けた一人の医師を取材しました。」とのナレーションを入れ、被告(=南淵明宏)本人の説明する映像を交え、GVHD裁判及びこれに被告(=南淵明宏)が協力したことを紹介する内容の番組を放映した。上記番組中には、「ある日、甲野(=南淵)医師が出勤すると、机の上には何もなくなっていた。病院の院長は、『君の手術にはもう誰も協力しない。』と告げたという。事実上の解雇通告だった。」とのナレーションが入る部分があった。



二 争点



(1) 「考心」、「読売ウイークリー」及び「きょうの出来事」の表現は原告の社会的評価を低下させる名誉毀損にあたるか。



(2) 上記各表現は真実であり若しくは真実と信ずるにつき相当の理由があるか。また、公共の利害に関する事実にかかり、公共の利益を図る目的でなされたものか。



(3) 被告(=南淵明宏)が、上記各表現を行い若しくは各表現の情報を報道機関に提供したのは、原告の行為によって損なわれた被告(=南淵明宏)自身の名誉の擁護・回復のためになされた必要範囲内の行為か。



(4) 「読売ウイークリー」掲載内容及び「きょうの出来事」放送内容につき、被告(=南淵明宏)による報道機関への情報提供行為との間に相当因果関係があるか。



(5) 損害の発生の有無及び損害の発生があるとすればその額。



三 争点に対する当事者の主張



(1) 争点(1)について



(原告)



 上記第二の一「前提となる事実」(4)ないし(6)の各記事ないし放送内容のうち、名誉毀損にあたるのは以下の部分(以下、下記アないしウを「本件表現」という。)である。



ア 「考心」について



(ア) 「私がその甲田市の病院を突然に解雇された」



(イ) 「私は甲田市の病院の院長から『どうして事実を家族に話したんだ!おまえはそういうところがまだまだ未熟な人間だ!』と叱られました。」



(ウ) 「またそうすることはむしろ医師社会、特に営利や選挙活動を主体とする病院ではタブーだったのです。」



(エ) 「私は同じ年の7月に甲田市の病院から突然クビを言い渡されました。」



(オ) 「出廷する日が近づくと徳洲会からの執拗な嫌がらせが丁原病院に勤務する私や病院を襲いました。徳洲会弁護士のI氏からは何度も電話がかかってきました。」



(カ) 「(私はクビになりましたが)」



イ 「読売ウイークリー」について



(ア) 「病院からの数々の圧力」



(イ) 「病院の院長は、福山医師に対して『どうして事実を家族に話したんだ!お前のそういうところが未熟なんだ』と、烈火のごとく怒鳴りまくったという。同年7月には、『君の手術は、だれも手伝わない』と院長から事実上の解雇宣告を受けた。」



(ウ) 「出廷する日が近づくと、福山医師の周辺で、医療機器納入業者などが事実無根のイヤガラセ情報を流したり、病院側の代理人が何度も電話をかけてきたりしたそうだ。」



ウ 「きょうの出来事」について



(ア) 「遺族に全てを話し、病院を追われた彼は」



(イ) 「遺族に真実を告白した医師は病院を追われてしまいます。」



(ウ) 「ある日、甲野(=南淵)医師が出勤すると、机の上には何もなくなっていた。病院の院長は、『君の手術にはもう誰も協力しない。』と告げたという。事実上の解雇通告だった。」



 上記のとおり、本件表現は、原告病院において医療過誤が発生したことを前提に、その患者側に協力した医師を叱責し、解雇し、かつ、上記医師が証人として出廷するにあたり嫌がらせ行為を行ったとの内容であるところ、医療過誤につき社会的関心が高まりつつあり、マスコミでも頻繁に取り上げられている社会状況下において、上記のような表現は、原告に対し、医療過誤があった場合に解雇・嫌がらせ等の手段を用いてでも過誤事実を隠蔽する医療機関であるというイメージを植え付けるものであって、原告の医療機関としての信用及び名誉を著しく毀損するものである。よって本件表現は原告の社会的評価を下落させるものであり、名誉毀損行為にあたる。



(被告(=南淵明宏))



原告の主張を否認する。



「考心」では、被告(=南淵明宏)がGVHD裁判が原因で解雇されたことを明確に述べた部分はなく、このような意味において原告の社会的評価が低下することはない。



 また、本件表現のうち、「考心」掲載文においては被告(=南淵明宏)は原告病院につき「甲田市の病院」と記載してその名称を明らかにせず、「きょうの出来事」の放送においても原告病院の名称及び原告病院を特定しうるような情報は放送されず、「読売ウイークリー」掲載記事においても、原告病院の名称は明らかにされず、被告(=南淵明宏)名すら仮名であって、その掲載内容中に原告病院につながる情報はなかった。



 以上のとおり、本件表現により原告病院を特定することはできず、そうである以上本件表現によって原告の社会的評価が低下することもありえないのであるから、本件表現は名誉穀損にあたらない。



(2) 争点(2)について



(被告(=南淵明宏))



ア 本件表現のうち事実を摘示した部分については、真実であり、または被告(=南淵明宏)が真実と信ずるにつき相当の理由がある。



 すなわち、①戊田の遺族に対して事実をありのままに話したことで原告病院長の強い叱責を受けたこと、②被告(=南淵明宏)が原告病院長から「君の手術は誰も手伝わない」等と告げられたり、机を無断で片づけられたりしたことにより、やむをえず原告病院を退職したこと、③医療機器納入業者に対して圧力がかかったり、GVHD裁判の証人として出廷する前に病院側代理人から何度も電話がかかってきたりしたこと、④被告(=南淵明宏)が、戊田の遺族に協力したことで原告病院を事実上解雇された(すなわちクビになった)ことは真実であるし、また、そうでなくとも、真実であると信ずるにつき相当の理由がある。特に上記④については、上記①ないし③の事実や、原告が被告(=南淵明宏)の退職理由として挙げる兼職行為が原告において禁止されていた事実や丙山梅子の冠状動脈バイパス手術においてビデオ撮影のために再切開再吻合を行った事実がなく、被告(=南淵明宏)が原告病院を退職しなければならない理由が見当たらないことに照らすと、真実であると被告(=南淵明宏)が信ずることには相当な理由があるものである。



また、本件表現のうち「またそうすることはむしろ医師社会、特に営利や選挙活動を主体とする病院ではタブーだったのです。」との部分については、上記の真実である事実及び真実であると信ずるにつき相当の理由がある事実に基づいた被告(=南淵明宏)自身の公正な意見ないし論評である。



イ 社会一般の人々にとって、医療現場の事実隠蔽体質の有無は、適切な医療を受けるために医療の質を問う前提として、大きな関心事であるから、本件表現行為は公共の利害に係る事実に関する記述・発言である。



 また、被告(=南淵明宏)は、患者に対して説明義務を尽くし、患者に対する医療の透明性を確保し、ひいては医療の質を向上させようとする被告(=南淵明宏)の信念に基づいて寄稿文を作成し、または報道機関への情報提供を行ったから、これらに基づく本件表現は公益を図る目的でなされたものである。



ウ 以上により、本件表現には事実の公共性、目的の公益性及び真実性があり違法性がなく、また、そうでなくとも、真実と信ずるにつき相当の理由があるから被告(=南淵明宏)には名誉毀損の故意・過失がない。



(原告)



ア 被告(=南淵明宏)の主張を否認する。



イ 本件表現のうち事実を摘示した部分は全て虚偽である。すなわち、①被告(=南淵明宏)が戊田の遺族に対して戊田の死因等を話したことにつき、原告病院長が「どうして事実を家族に話したんだ」などと被告(=南淵明宏)を叱責したことはない。原告病院長は、平成5年12月ころ、被告(=南淵明宏)から、戊田の遺族に対して説明を行ったこと及び訴訟にはならないと思うとの報告を受けた際に、見通しが甘い旨告げたことがあるのみである。また、②被告(=南淵明宏)に退職を迫る方策として原告病院長が「君の手術はもう誰も手伝わない。」旨述べたり、被告(=南淵明宏)の机の上を突然何もない状態にしたりしたこともない。被告(=南淵明宏)が後述する丙山梅子の手術における再吻合の事実を疑われ、原告病院長に問いただされた際に、原告病院長が「そんなことをしていると誰も君の手術を手伝わなくなるぞ。」と話したことや、被告(=南淵明宏)が辞表を提出した後、被告(=南淵明宏)が事実上使用していたカンファレンスルーム机上の原告病院備品類を被告(=南淵明宏)の同僚らが整頓したことがあるのみである。また、③原告病院長はGVHD裁判の進行状況を全く知らず、被告(=南淵明宏)が証人として証言することも知らなかったのであるから、原告が被告(=南淵明宏)に対してGVHD裁判に関して何らかの働きかけを行うことはありえず、従って、被告(=南淵明宏)がGVHD裁判で証人として出廷するにあたり、原告が何らかの圧力を被告(=南淵明宏)に対して加えた事実も一切ない。さらに、④被告(=南淵明宏)が戊田の遺族に協力したことで原告病院を解雇されたという点も事実に反する。被告(=南淵明宏)は、原告病院で禁止されている兼職行為を行っていることにつき再三注意を受けたにもかかわらずこれをやめなかったこと、兼職先からベンツの供与を受けていたことが発覚したこと、及び、丙山梅子の手術において動脈グラフト四カ所のうち一本を吻合中株式会社ゲッツブラザーズ(以下「ゲッツブラーズ」という。)に提供する予に気付き、吻合部分を再切開した上再吻合し、これについて同僚らに非難されたこと等により原告病院にいたたまれなくなって原告病院を自ら退職したものである。


 なお、①ないし④の事実は被告(=南淵明宏)自身が経験した事実そのものであり、真実か否かは被告(=南淵明宏)自身が熟知している事項であるから、真実と信ずる相当な理由が存在することはありえない。



 よって本件表現は虚偽であり、かつ、真実と信ずるについて相当の理由もないものである。



ウ 本件表現は、被告(=南淵明宏)が解雇された理由について摘示するものであるところ、これは被告(=南淵明宏)の個人的な問題であり、事実の公共性は認められない。



また、被告(=南淵明宏)は、GVHD裁判の意義を利用して被告(=南淵明宏)の退職理由にすり替えることにより、被告(=南淵明宏)を正当化・美化する目的で名誉毀損行為を行ったものであり、目的の公益性は認められない。



(3) 争点(3)について



(被告(=南淵明宏))



 被告(=南淵明宏)は、原告により突然に解雇され、かつ、虚偽の事実を流布されたことにより、名誉を段損されており、本件表現はこれを回復・擁護するために必要なものであった。よって本件表現に違法性はない。



(原告)



 被告(=南淵明宏)の主張を争う。



 被告(=南淵明宏)は、原告病院を退職せざるをえなくなったことを隠蔽・正当化するために本件表現を行ったものである。



(4)争点(4)について



(原告)



 「読売ウイークリー」及び「きょうの出来事」の報道内容は、「考心」とほとんど同一であることから、被告(=南淵明宏)による報道機関への発言及び主張が上記報道内容に直結したものと認められ、被告(=南淵明宏)による情報提供行為と「読売ウイークリー」及び「きょうの出来事」の報道内容との間には相当因果関係が存在する。



 なお、報道機関について当該報道のもととなる情報提供を行った者が、当該情報提供について独自に名誉毀損責任を負うことは十分にあり得ることであり、その場合に、報道機関のみを被告(=南淵明宏)とするか、報道機関とともに情報提供者を被告(=南淵明宏)とするか、あるいは情報提供者のみを被告(=南淵明宏)とするかは、原告による被告(=南淵明宏)選択の問題であって、名誉毀損責任の成否に影響を与えるものではない。



(被告(=南淵明宏))



 原告の主張を否認する。



 本件において、被告(=南淵明宏)が報道機関に対して提供した情報は、争点②記載の被告(=南淵明宏)の主張するア①ないし③の事実のみであり、④GVHD裁判が退職に影響していることについては不確かな情報として語ったに過ぎないし、「読売ウイークリー」の表現に含まれている「医療機器納入業者などが事実無根のイヤガラセ情報を流した」との事実については、述べたこと自体ない。よって、「読売ウイークリー」及び「きょうの出来事」の報道は被告(=南淵明宏)の情報提供に基づくものではなく、被告(=南淵明宏)の情報提供行為との間に因果関係はない。



 また、「読売ウイークリー」及び「きょうの出来事」については、報道機関は被告(=南淵明宏)に対する取材のほか、種々の取材を行った上で、報道すべき事実を取捨選択し、構成し、かつ、脚色しているのであって、「読売ウイークリー」及び「きょうの出来事」の報道は、各報道機関の責任において独自に行われたものであるから、取材源である被告(=南淵明宏)の情報提供行為と「読売ウイークリー」及び「きょうの出来事」の報道内容との間に相当因果関係はないものである。



(5)争点(5)について



(原告)



 本件表現行為によって原告が被った損害は、本件表現行為の内容が虚偽であること、その影響の大きさ、動機と態様の悪質性等に鑑み、金3000万円を下回らない。



 また、原告は、本訴の提起及び追行を原告訴訟代理人らに委任し、その着手金及び報酬として合計5〇〇万円の支払を約したところ、これも本件表現行為に基づく損害に含まれるものである。



(被告(=南淵明宏))



 原告の主張を否認する。



 「読売ウイークリー」及び「きょうの出来事」では原告の特定すら困難であり、また、「考心」はごく規模の小さい限定された親睦会の会報誌であるから、本件表現により原告に損害が生じたとは考えられず、かつ、本件表現の前後を通じ、原告病院の入院患者数や売り上げが落ちた事実がないことは原告病院長も自認している。よって原告には本件表現により何らの損害も生じていない。



第三 当裁判所の判断



一 争点(1)について



(1) 「考心」について



ア 上記第二の一「前提となる事実」(4)のとおり、平成12年11月26日付け「考心」掲載文は、原告が名誉段損にあたると主張する表現を含んでおり、かつ、一般の読者が普通の注意と読み方をもって上記表現に接した場合、原告が医療過誤を起こした上、その事実を隠蔽する方針を採り、この方針に従わず医療過誤の事実を患者の遺族に説明した医師を叱責し、かつ解雇し、当該医師の医療過誤訴訟における証言により医療過誤の事実が明らかになることを嫌って執拗な嫌がらせ行為を行ったとの印象を持つものであって、医療機関である原告にとってその社会的評価を低下させるものであると認められる。



イ この点につき、被告(=南淵明宏)は、「考心」において解雇の原因とGVHDの件を明確に関連づける表現はないと主張するが、「考心」掲載文のテーマが「GVHD裁判」であるにもかかわらず、被告(=南淵明宏)が解雇された事実が3箇所にわたって掲載されていること、「死因を説明する医師は日本にはいなかった。」との記載の後に、「そうすることは」「病院ではタブーだったのです。」との記載が続いており、死因を説明したことを病院長から叱責されたとの事実の摘示の後に「突然クビを言い渡された」との記載が続いていること、GVHD裁判の意義を述べた記載の後に「私はクビになりましたが」との記載が続いていることからすれば、原告が名誉毀損にあたると主張する記載部分が、他の部分と相侯って、上記アの印象をその読者に与えるものであることは明らかであって、被告(=南淵明宏)の主張は採用できない。



 また、被告(=南淵明宏)は、「考心」掲載文中で原告の名称は明らかになっておらず原告を特定できないから原告の社会的評価は下落しえないと主張とするが、「考心」掲載文中には「甲田市の徳洲会病院」「徳洲会」との記載があり、これにより原告が明らかに特定されているから、この点についての被告(=南淵明宏)の主張も採用できない。



ウ よって、「考心」における上記表現は、原告の社会的評価を低下させる名誉毀損にあたる。



(2) 「読売ウイークリー」について



 上記第二の一「前提となる事実」(5)のとおり、平成12年12月24日付け「読売ウイークリー」掲載記事は、原告が名誉毀損にあたると主張する表現を含んでおり、一般読者の普通の注意と読み方を基準として上記表現を解釈した場合、上記表現は、表現中に記載された病院につき、「考心」におけると同様の印象を読者に与え、その社会的評価を低下させるものであると認められる。



 そして、「読売ウイークリー」掲載記事には、「神奈川県甲田市の総合病院」「近隣の大学病院からも患者が紹介されてくるような、全国的にも心臓外科の最先端を行く病院」との記載が含まれており、当時甲田市内に心臓外科手術をする総合病院は原告病院以外になかったことから、不特定多数の読者が上記記載により原告病院を特定可能であったと認められるから、「読売ウイークリー」の上記表現は、原告に対する名誉毀損にあたるものである。これに反する被告(=南淵明宏)の主張は採用できない。



(3)「きょうの出来事」について



上記第二の一「前提となる事実」(6)のとおり、平成12年3月7日放送の「きょうの出来事」放送内容は、原告が名誉毀損にあたると主張する表現を含んでおり、上記表現は、一般視聴者が普通の注意と関心をもって上記放送内容を視聴した場合に、放送中に指摘された病院につき、医療ミスについて遺族に真実を告白した医師をこのことを理由に解雇したとの印象をもつものであり、原告の社会的評価を低下させるものであると認められる。



 そして、「きょうの出来事」においては、被告(=南淵明宏)の実名及び被告(=南淵明宏)の映像が放映され、上記病院につき、「8年前」「被告(=南淵明宏)が当時いた病院」との情報が提供されており、被告(=南淵明宏)が複数の大学の講師を務め、講演を行うことも多く、新聞・週刊誌等に名前が出ることもあるなど、心臓外科分野において著名な医師であることや、被告(=南淵明宏)が経歴を公表していることから、上記の情報により、不特定多数の視聴者が原告病院を特定可能であると認められ、「きょうの出来事」の上記表現は原告に対する名誉毀損にあたるものである。これに反する被告(=南淵明宏)の主張は採用できない。



二 争点(2)について



<証拠略>によれば、被告(=南淵明宏)とGVHD裁判との関わりや、被告(=南淵明宏)が原告病院を退職するに至るまでの経緯及びその前後の事情は以下のとおりであったことが認められる。



ア GVHDによる戊田の死亡と被告(=南淵明宏)の遺族への説明



(ア)平成5年12月、被告(=南淵明宏)が主治医を務めていた戊田が原告病院において冠状動脈バイパス手術及び僧帽弁置換術を受け、出血量が多かったために血小板輸血を受けた数日後から、手術創の周囲が発赤し始めた。このため、被告(=南淵明宏)は、GVHD発症を疑い、原告病院の乙野竹夫院長(以下「乙野院長」という。) にこのことを報告するとともに、同院長の了解のもとに日本赤十字社に確定診断を依頼しその結果、GVHD発症が確定した。被告(=南淵明宏)は、乙野院長にその旨報告し、戊田の家族に対しても病名及び症状について説明した。戊田は、術後14日目に肺炎を併発し、呼吸不全により死亡した。



(イ)戊田の死亡後、被告(=南淵明宏)は、戊田の遺族に対し、戊田の死因がGVHDであることや、放射線照射を行わない血小板を輸血するとGVHDを発症する可能性があるが、輸血用血液の供給元である日本赤十字社でも原告病院でも輸血用血小板について放射線照射を行っていなかったことを説明した。また、被告(=南淵明宏)は、医療現場の実態からして、このような放射線照射を行う責任は日本赤十字社にあり、原告病院にはそのような責任はないとの見解を有しており、戊田の遺族に対してもこのような見解に基づいた説明をした。戊田の遺族らは、被告(=南淵明宏)の了解を得て、このような被告(=南淵明宏)の説明をテープに録音した。



(ウ)被告(=南淵明宏)は、戊田の遺族に対して上記のような説明を行ったことを乙野院長に報告するとともに、輸血用血液に放射線照射を行うべき責任は日本赤十字社にあり原告病院にはないことを遺族に説明したので訴訟にはならないと思うとの意見を述べた。



(エ)乙野院長は、原告病院においては、医療過誤の可能性のある事案に関しては、医師の報告を受け、病院としての対処方針を決定し、この方針に従って対応することとしているので、被告(=南淵明宏)の行動は病院としての対処方針が決定されない段階で、遺族に対し被告(=南淵明宏)の独断で説明を行った点で原告病院の方針に反するものであることを指摘し、この点につき被告(=南淵明宏)を叱った。また、被告(=南淵明宏)が輸血用血液に放射線照射を行うべき責任は日本赤十字社にあり原告病院にはないことを遺族に説明したので訴訟にはならないとの意見を述べたことについては、そのように甘いものではなく、被告(=南淵明宏)の考えは未熟であると述べた。



(オ)その後、乙野院長らと被告(=南淵明宏)の間でGVHDによる戊田の死亡の件が話されることはなかったが、平成8年3月に至って、戊田の遺族らが原告と日本赤十字社を相手どって訴訟を提起し、その訴状が原告病院に届けられた際に、乙野院長は被告(=南淵明宏)を呼んで、やはり被告(=南淵明宏)が考えたように甘いものではなかったと告げた。ただし、乙野院長は、当時、輸血用血液に放射線照射を行うことは大学病院を含めてほとんど全く行われていなかったことから、原告病院の固有の問題というよりも、日本赤十字社や輸血を行う病院全体の問題であると考えており、また、放射線照射を行うことによりGVHDによる患者の死亡を防ぐことができるなら望ましいことでもあると考えていて、この訴訟対策にはほとんど関与しなかった。



イ 丙山梅子の手術について



(ア)被告(=南淵明宏)は、平成8年1月26日、原告病院において、執刀医として丙山梅子(以下「丙山」という。)に対し冠状動脈バイパス手術を施行した(以下「丙山手術」という。)。上記手術の助手は丁川医師と戊原医師であり、麻酔医は甲川医師であった。



(イ)原告病院においては、手術経過につき手術室上方からビデオ撮影を行うことを常としていたが、被告(=南淵明宏)は、これとは別に、自己の行う心臓外科手術について手術経過の詳細を鏡視下スコープカメラを用いてビデオ撮影することとしていた。また、被告(=南淵明宏)は、原告病院に医療機器を納入する業者であるゲッツブラザーズとの間で、報酬90万円で被告(=南淵明宏)の執刀する動脈グラフトを使用した心臓外科手術手技ビデオ30本を製作して同年3月末日までに同社に提出するとの内容の業務委託契約を締結していた。


(ウ)被告(=南淵明宏)は、丙山手術についても、鏡視下スコープカメラを用いてビデオ撮影することとして、手術中のビデオ操作を丁川医師及び乙原技師に行わせた。丁川医師及び乙原技師は、手術の重要部分のみビデオ撮影を行うこととし、丁川医師が指示して乙原技師がビデオの撮影スイッチの操作を担当した。



(エ)丙山手術は、バイパスグラフトと冠状動脈を四箇所にわたり吻合することを主内容とする難度の高い手術であったところ、被告(=南淵明宏)が上記のうち一箇所の吻合をすべくグラフトと動脈を糸で縫合していた際、乙原技師は上記ビデオの撮影スイッチがオフになったままであることに気づいた。グラフトと動脈の吻合作業は、丙山手術のうち、非常に重要な部分であったので、丁川医師は、被告(=南淵明宏)に対し、「すいません、撮れてませんでした。」と告げた。被告(=南淵明宏)は、丁川医師の顔を見て、えっという表情を浮かべ、いらいらした様子を見せながら縫合をさらに2、3針進めた後、縫合する手を止め、数秒間考える様子を見せた後、縫合していた糸を切ったが、一度針をかけて糸を通した冠状動脈の辺縁はぼろぼろの状態となっていた。その後、被告(=南淵明宏)は、グラフトと動脈の再度の吻合を行った。



(オ)丙山手術終了後、助手を務めていた丁川医師や戊原医師らは、被告(=南淵明宏)が上記のとおり吻合の途中で縫合の糸を切って吻合をやり直したことにつき、確信は持てないものの、
ビデオ撮影がされていなかったことから改めてビデオを撮影するため吻合をやり直したのではないかとの印象があったため、同人らや原告病院心臓外科において同人らとチームを組んでいた丙田医師や丁野医師らとの間で、もし本当にそのような事実であったとすれば残念だと話し合った。
なお、丙山は手術後5日目に死亡したが、その死因は脳出血によるもとされた。



(カ)乙野院長は、丙山手術に立ち会った医師らが上記のように話し合っていることをほどなく知り、被告(=南淵明宏)に事情を聞いたが、被告(=南淵明宏)は、最初の縫合は吻合の具合が悪かったために糸を切り、吻合をやり直したと説明し、以後はこのような誤解を受ける行為は決して行わないと述べたことから、乙野院長も、それ以上にこの問題について調査したり、被告(=南淵明宏)の責任を問う動きを見せることはなかった。



ウ アルバイト問題と被告(=南淵明宏)の退職



(ア) 被告(=南淵明宏)は、平成7年末ころ、年内に緊急に心臓外科手術の必要な患者について、原告病院に搬送して手術を行う順番を待っていたのでは年を越してしまうので、被告(=南淵明宏)が手術の助手となる医師や手術用の人工心肺装置を操作する技師らを含む手術チームを伴って丁原病院に赴いて手術を行うことを認めてほしいと乙野院長に申し出た。乙野院長は、この件については緊急の必要性があるとのことで許可したが、あくまでもこの件に限ってのことであって、以後、恒常的に被告(=南淵明宏)が他の医師や技師らを伴って丁原病院に出かけて手術を行うことを許可したわけではなかった。


(イ)ところが、被告(=南淵明宏)はその後も、乙野院長らの許可を得ないまま、原告病院で心臓外科手術を行わない日となっていた木曜日に頻繁に手術チームと連れて丁原病院に出かけて手術を行っては一回あたり約10万円の謝礼を受け取るようになった。また、このような手術に加わった他の医師や臨床工学士らも丁原病院から謝礼を受け取っていた。


(ウ) 乙野院長は、平成8年4月ころ、被告(=南淵明宏)が原告病院の勤務時間中にこのように頻繁に原告病院の手術チームを連れて丁原病院に出かけて心臓手術を行っていることを知り、被告(=南淵明宏)や他の医師らに対してこのようなアルバイト行為を止めるように強く注意した。これに対し、被告(=南淵明宏)も他の医師らも以後はこのようなことは止める旨述べ、実際に被告(=南淵明宏)以外の医師や技師らはこのようなアルバイト行為を取りやめたが、被告(=南淵明宏)は、その後も単身で病院に出かけて同病院で手配した医師や技師らとともに心臓外科手術を行うことを続けていた。


(エ) 同年6月ころから、原告病院の職員用の駐車場に駐車の登録のなされていないベンツが駐車されていることが問題となり、被告(=南淵明宏)がこれに乗っていたことから、職員が尋ねたところ、被告(=南淵明宏)は自分で買ったものであると答えていた。



 その後、同年7月23日に原告病院の事務担当者がこの車の登録事項等通知書を取り寄せたところ、丁原病院を設置運営している医療法人社団丙川会が同年4月25日に登録した車であり、約680万円もするものであることが判明した。そこで、乙野院長が同年8月3日ころに被告(=南淵明宏)を呼んで、被告(=南淵明宏)はアルバイト行為をまだ継続しているのではないか、また、アルバイト先である丁原病院からベンツを供与されているのではないかと問いただしたところ、被告(=南淵明宏)は、当初は、アルバイト行為はもうしておらず、ベンツは自分で買ったものだと主張していたものの、上記登録事項等通知書を示されると、態度を改め、丁原病院でアルバイト行為を継続していること及びアルバイト先である丁原病院からベンツを供与されていることを認めて陳謝した。



 そして、被告(=南淵明宏)は、今後は丁原病院に出かけて心臓外科手術を行うことを止め、ベンツも返還すると申し出たが、乙野院長は、アルバイト行為をやめるよう注意したにもかかわらずその後も恒常的に他の病院にでかけてアルバイト行いベンツの供与まで受けていた以上、一緒にやっていくことはできないので辞めてもらいたい旨を告げた。すると、被告(=南淵明宏)は、一旦は、「訪問看護でも何でもしますから原告病院において下さい。」などと述べ、
涙を流して土下座する
などしたが、乙野院長が、乙野院長個人の判断だけでなく、従前の丙山手術のこともあり、今回のアルバイト問題とあわせて、他の医師や職員らの信頼が失われているので他の医師や職員らとチームワークを組んで仕事をすることができない旨を告げると、被告(=南淵明宏)も退職を受け入れた。


(オ) 被告(=南淵明宏)は、週明けの同月5日、乙野院長に辞表を提出したが、この辞表には、「私こと、甲野太郎(=南淵明宏)は、一身上の都合により、医療法人社団愛心会乙山病院心臓血管外科部長の職を辞任させていただきたく、ここに請願いたします。尚、後任には丙田春夫医師を強く推薦させていただきます。」と記載されていた。



(カ) なお、そのころ、被告(=南淵明宏)が使用していた机から、上記の通り被告(=南淵明宏)がゲッツブラザーズとの間で締結していたビデオ制作に関する業務委託契約書が発見されたことから、乙野院長は、はゲッツラザーズの担当者を原告病院に呼び出し、原告病院に断りなく被告(=南淵明宏)との間でこのような業務委託契約を締結していたことを責め、ゲッツプラザーズは、以後六か月間、原告病院に対する心臓血管外科製品の納入を自粛することとなった。



(キ)被告(=南淵明宏)は、同月31日付で原告病院を退職し、同年10月21日、退職金を受領した。



エ 退職後の事情



(ア) 被告(=南淵明宏)は、原告病院を退職した後、同年9月から丁原病院に勤務するようになり、同病院に心臓外科を開設し、心臓外科手術を続けている。



(イ) 被告(=南淵明宏)が原告病院を退職してから約一年半が経過した平成10年1月27日、GVHD裁判の第10回弁論期日において、同裁判の原告であった戊田の遺族らは、被告(=南淵明宏)を証人として申請し、同年7月28日、同裁判の第四回準備的口頭弁論期日において採用され、同年10月30日、同裁判の第11回口頭弁論期日において被告(=南淵明宏)の証人尋問が実施された。被告(=南淵明宏)は、戊田に対する手術の経過、輸血当時のGVHDに対する認識、原告病院にGVHDを予防する放射線照射装置がなかったことや、輸血用血液に対する放射線照射は血液供給元である日本赤十字社が行うべきであると被告(=南淵明宏)自身は考えていること等を証言した。



(ウ) この間、同年4月15日、ゲッツブラザーズの担当者から、被告(=南淵明宏)に対し、「先生にHeart port訪問/見学をしていただいた件が乙山の戊山技師に伝わり、院内で『ゲッツは何事につけ秘密に裏で行動する会社である。』との批判を受け、やっと一部使用再開していただいた人工弁にも影響すると、営業サイドから相談が持ち込まれました」との内容のメールが送信されたことがあったが、このことが、被告(=南淵明宏)がGVHD裁判で証人申請されていたことと何らかの関連があると認めるべき証拠はない。



(エ)また、同年10月ころ、被告(=南淵明宏)がGVHD裁判において証言を行う前に、丁原病院心臓病センターに徳洲会の弁護士のイケグチと名乗る人物から四回ほど電話があり、被告(=南淵明宏)の秘書が電話を受け、被告(=南淵明宏)に取り次ごうとしたが、被告(=南淵明宏)は電話に出なかった。したがって、この電話がいかなる用件についてであったのかは被告(=南淵明宏)は把握していない。



(2) 上記認定事実に照らして、本件表現の真実性及び真実と信じるについての相当の理由の有無につき以下に順次検討する。



ア 上記認定のとおり、

①平成5年12月、被告(=南淵明宏)が戊田の遺族に対してGVHD発症の原因や日本赤十字社や原告病院の責任の所在等について説明した旨乙野院長に報告した際、同院長が、原告病院においては、医療過誤の可能性ある事案に関しては、医師の報告を受け、病院としての対処方針を決定し、上記方針に従って対応する方針を決定し、上記方針に従って対応することとしているのに、被告(=南淵明宏)の行動は病院としての対処方針が決定されない段階で、遺族に対し責任の所在にも及んだ説明を行った点で、原告病院の方針に反するものである点を指摘し、この点につき被告(=南淵明宏)を叱ったこと、

②被告(=南淵明宏)が輸血用血液に放射線照射を行うべき責任は原告病院にはないことを遺族に説明したので訴訟にはならないとの意見を述べたことについては、そのように甘いものではなく、被告(=南淵明宏)の考えは未熟であると述べたこと、

③その後、平成8年3月に至って、戊田の遺族らが原告と日本赤十字社を相手取って訴訟を提起し、その訴状が原告病院に届けられた際に、乙野院長が被告(=南淵明宏)を呼んで、やはり被告(=南淵明宏)が考えたように甘いものではなかったと告げたことは、いずれも事実である。

しかし、このような乙野院長の発言は、GVHD発症の原因を遺族に隠蔽すべきであるとの立場に立って、被告(=南淵明宏)がGVHD発症の原因を遺族に説明したこと自体を叱責したり、未熟な人間であると非難したものでなかったことは明らかである。従って、本件表現中の、「私は甲田市の病院の院長から『どうして事実を家族に話したんだ!おまえはそういうところがまだまだ未熟な人間だ!』と叱られました。」との記載(「考心」)及び「病院の院長は、福山医師に対して『どうして事実を家族に話したんだ!お前のそういうところが未熟なんだ』と烈火のごとく怒鳴りまくったという。同年7月には、『君の手術は、だれも手伝わない』と院長から事実上の解雇宣告を受けた。」との記載(「読売ウイークリー」)はいずれも真実ではなく、また、そう信ずるにつき相当の理由も存在しないものである。



 なお、被告(=南淵明宏)本人尋問の結果中には、上記の事実が真実であるとの被告(=南淵明宏)の主張に沿う供述部分があるが、戊田の生存中、すでにGVHD発症の事実については、戊田の家族に話しており、その段階では原告病院長に何もいわれなかったとしながら、戊田が死亡した後にGVHDで戊田が死亡したことにつき戊田の遺族に話したことで激しく叱責されたとするのは不自然である上、証人乙野竹夫の証言に照らしても採用できない。



イ 次に、被告(=南淵明宏)が原告病院を退職するに至った経緯は、上記認定事実のとおりであり、被告(=南淵明宏)は原告病院の許可を得ないまま、原告病院の勤務時間中に頻繁に他の医師やその他の手術チームを連れて丁原病院に出かけて手術を行って謝礼をもらっており、このことを知った乙野院長がこのような行為をやめるように強く注意した後も、被告(=南淵明宏)一人で丁原病院に出かけて心臓外科手術を行うことを恒常的に続けたばかりか、丁原病院からベンツの供与まで受けていたことが発覚したことから、丙山手術について他の医師らの疑いを招いていたこととあわせて、乙野院長から退職を求められ、被告(=南淵明宏)もこれを了解して退いたものである。従って、本件表現中、他の表現とあわせることによって被告(=南淵明宏)がGVHD裁判に関して戊田の遺族に協力したことを原因として原告病院から解雇されたとの印象を与える表現である「私がその甲田市の病院を突然に解雇された」「私は同じ年の七月に甲田市の病院から突然クビを言い渡されました。」「(私はクビになりましたが)。」(「考心」)、「『君の手術は、だれも手伝わない』と院長から事実上の解雇宣告を受けた。」(「読売ウイークリー」)及び「遺族に全てを話し、病院を追われた彼は」「遺族に真実を話した医師は病院を追われてしまいます。」「ある日、甲野(=南淵)医師が出勤すると、机の上には何もなくなっていた。病院の院長は、『君の手術にはもう誰も協力しない。』と告げたという。事実上の解雇通告だった。」(「きょうの出来事」)との各表現は真実であるとは認められず、また、そう信ずるにつき相当の理由も存在しないものである。



 この点について、被告(=南淵明宏)本人尋問の結果中には、被告(=南淵明宏)の退職当時の状況に照らし、被告(=南淵明宏)が退職する理由がGVHD裁判の件を除いて他に存在しないから、被告(=南淵明宏)がGVHD裁判に関して戊田の遺族に協力したために原告病院を解雇されたとの表現は真実であり、または真実であると信ずるにつき相当の理由があるとする供述部分がある。しかし、被告(=南淵明宏)が退職した理由は上記認定のとおりであり、また、被告(=南淵明宏)が戊田の遺族に対してGVHDの発症やその原因について説明してから被告(=南淵明宏)の退職の時期までは二年半以上が経過していることや、被告(=南淵明宏)の退職の前後に原告病院の側からGVHD裁判に関して被告(=南淵明宏)を責めたり、同裁判について戊田の遺族に協力しないでもらいたいなどという言動が一切なされていないことに照らしても採用しがたい。



ウ 次に、上記事実によれば、①平成9年8月ころ、原告病院への医療機器の納入業者であるゲッツブラザーズが原告病院の知らないうちに、被告(=南淵明宏)との間で報酬90万円で心臓外科手術手技のビデオ製作・提供に関する業務委託契約を締結していたことが発覚し、原告病院からこのことを責められたことから心臓血管外科製品の納入を一時自粛していたこと、②その後、平成10年4月ころ、ゲッツブラザーズから被告(=南淵明宏)に対し、上記(1)のエの(ウ)の内容のメールが送信されたことがあったこと、③被告(=南淵明宏)がGVHD裁判の証人として出廷する前の時期に被告(=南淵明宏)に対して徳洲会の弁護士と名乗る人物から四回ほど電話がかかってきたことがあったことは、上記(1)に見たとおりである。しかし、上記①の事実は、被告(=南淵明宏)がGVHD裁判の証人として申請さるよりも約一年半も前のことであり、被告(=南淵明宏)が証人として出廷することとなんらの関係のないことはその時期の点に照らしても明らかである。また、上記②の事実もメール内容に照らしても被告(=南淵明宏)がGVHD裁判の証人として出廷することと何らかの関係があるものとは見られず、他にこの点を認めるべき証拠もない。更に、上記③の点についても、被告(=南淵明宏)は結局電話には出ていないのであって、上記電話がどのような用件であったかは不明であり、嫌がらせのための電話であったとは決めつけることは到底できないものである。



 そうすると、本件表現のうち、「出廷する日が近づくと徳洲会からの執拗な嫌がらせが丁原病院に勤務する私や病院を襲いました。徳洲会弁護士のI氏からは何度も電話がかかってきました。」(「考心」)、「被告(=南淵明宏)からの数々の圧力」「出廷する日が近づくと、福山医師の周辺で、医療機器納入業者などが事実無根のイヤガラセ情報を流したり、病院側の代理人が何度も電話をかけてきたりしたそうだ。」(「読売ウイークリー」)との表現は真実であると認められず、また、そう信ずるにつき相当の理由も存在しないものである。



エ また、上記各表現が真実であると認められない以上、これらが真実であることを前提とした被告(=南淵明宏)の意見である「またそうすることはむしろ医師社会、特に営利や選挙活動を主体とする病院ではタブーだったのです。」(「考心」)との表現は、公正な意見・論評であるとは到底認められない。



オ 以上によれば、その余の本件表現の公益性や公益目的等の点について判断するまでもなく、本件表現が違法性を阻却される余地はなく、また、被告(=南淵明宏)に名誉毀損の故意または過失がなかったと認める余地もないものである。



三 争点(3)について



上記二の(1)に認定した各事実に照らし、被告(=南淵明宏)が原告を突然に解雇され、かつ、虚偽の事実を流布されたものと認めることはできず、被告(=南淵明宏)が原告により違法に名誉を毀損されたと認めるに足りないから、本件表現が被告(=南淵明宏)の名誉を回復擁護するために必要なものであったとはいえず、これを理由に本件表現につき違法性が阻却されることはない。



四 争点(4)について



(1)上記第二の一の「前提となる事実」(4)に見たところと〈証拠略〉をあわせると、「読売ウイークリー」掲載内容及び「きょうの出来事」放映内容と、「考心」掲載内容は、被告(=南淵明宏)がGVHD裁判に協力したため解雇されたとの印象を読者または視聴者に与える点で共通しており、また、「考心」掲載の病院長の叱責文言と、「読売ウイークリー」掲載の病院長の叱責文言は酷似していること、「読売ウイークリー」掲載の事実上の解雇通告文言と「きょうの出来事」放映の病院長の「事実上の解雇通告」文言は酷似していることが認められる。そして、「考心」掲載文が被告(=南淵明宏)の寄稿文すなわち被告(=南淵明宏)が「考心会」に対し提供した情報そのものであることから、被告(=南淵明宏)が読売新聞社及び日本テレビに対して提供した情報も「考心」寄稿文とほぼ同一の内容であったことが推認される。



 そうである以上、「読売ウイークリー」及び「きょうの出来事」で、被告(=南淵明宏)がGVHD裁判に協力したため原告病院を解雇されたこと等を内容とする報道がなされたのは、被告(=南淵明宏)の情報提供に基づいてなされたものであると認められ、被告(=南淵明宏)の情報提供行為と「読売ウイークリー」掲載内容及び「きょうの出来事」放送内容との間には因果関係が存在するものと認められる。また、「きょうの出来事」には、上記第二の一「前提となる事実」(6)のとおり、被告(=南淵明宏)本人が説明する映像が放送されており、この点からも「きょうの出来事」放映内容が被告(=南淵明宏)の情報提供に基づいて製作されたことが認められる。



 なお、「読売ウイークリー」には「医療機器納入業者などが事実無根のイヤガラセ情報を流した」とする部分があり、上記部分は「考心」にはなく、被告(=南淵明宏)が提供した情報と相違した報道がなされたと認められるが、これは被告(=南淵明宏)の提供した「被告(=南淵明宏)に関わりのある医療機器納入業者に対し圧力をかけられるなどの嫌がらせを受けた」との情報を取り違えて報道したものと容易に認められるのであって、被告(=南淵明宏)の提供した情報を元にした報道である点及び被告(=南淵明宏)による情報提供がなければ報道されることはなかった点では他の部分と変わらないのであり、かつ、GVHD裁判の証人として出廷するに際し被告(=南淵明宏)に対して圧力がかけられたとの印象を与える点において、上記部分は、被告(=南淵明宏)により提供された情報がそのまま報道されていた場合と変わりないのであるから、この部分についても被告(=南淵明宏)による情報提供行為と報道との間に因果関係を認めることができる。



(2)そして、被告(=南淵明宏)提供にかかる上記情報は、①被告(=南淵明宏)の個人的経験にかかる事実に関するものであり、被告(=南淵明宏)により提供されなければ報道機関がこれを知り、報道することはなかったと認められること、②提供された情報は、医師である被告(=南淵明宏)自身が主治医として関わった患者の死亡事故や裁判に関するものであり、その内容にも照らしても、このような情報提供を受けた報道機関にとってこれが虚偽の情報であると疑う余地の乏しいものであった上、情報の性質上、被告(=南淵明宏)からの情報提供を受ける他にこれを裏付ける取材を行うことが困難なものであったこと、③情報の内容自体、医療事故及びこれに対する医療機関の姿勢についての関心が高まりつつあった社会風潮と合致するものであり、一旦報道機関に提供されれば、報道機関が報道することが強く予測されるものであったことが認められることに照らすと、被告(=南淵明宏)による上記情報提供行為が「読売ウイークリー」及び「きょうの出来事」の本件表現部分につながることは通常予想が可能と認められるものである。



 そうすると、被告(=南淵明宏)による情報提供行為と「読売ウイークリー」及び「きょうの出来事」の本件表現部分との間には相当因果関係が存在すると認められる。



(3)なお、この点に関し、被告(=南淵明宏)は、「読売ウイークリー」及び「きょうの出来事」における本件表現部分は報道機関の独自の責任において報道されたものであり、被告(=南淵明宏)による情報提供行為との間に相当因果関係は認められないと主張するところ、確かに、雑誌記事及びテレビ番組の編集は報道機関に委ねられているから、報道機関に対し情報提供を行った場合に、編集により取捨選択され、報道されない可能性も一般的には認められるが、本件においては、上記のとおり提供された情報自体がそのまま報道される可能性の高い性質のものであるので、報道機関が介在することにより相当因因果関係が否定されることはないものであり被告(=南淵明宏)の主張は採用できない。



五 争点(5)について



(1) 本件表現が、いずれも原告の社会的評価を低下させる名誉毀損行為にあたることは上記一に見たとおりであるが、これらの表現がなされた形態は、被告(=南淵明宏)の執筆した文章によるもの(「考心」)、被告(=南淵明宏)の情報提供行為に基づいて週刊誌の記事として掲載されたもの(「読売ウイークリー」)、被告(=南淵明宏)の情報提供行為に基づいてテレビで放送されたもの(「きょうの出来事」)とそれぞれ異なっており、また、その発表された時期も相当異なっていることから、これらを一個の不法行為と見ることはできない。



 そこで、以下、これらの個別の名誉毀損行為によって原告の被った損害額を検討する。



 なお、被告(=南淵明宏)は、本件表現がなされた時期を境に原告病院の入院患者数や収益が低下するなどの経済的損失を原告が受けたことはなかったことから、原告には損害が生じていないと主張するが、本件表現によって原告の名誉が損なわれたことによる損害は、その名誉毀損のなされた時期を境にして直ちに現れる収入の差額に尽きるものではなく、信用及び名誉を毀損されたことによる無形の損害も含まれるものであるから、被告(=南淵明宏)の主張は採用することができない。



(2) 「考心」掲載文について



 上記第二の一及び第三の一のとおり「考心」掲載文には、原告が医療過誤の事実を隠蔽しようとしたこと、被告(=南淵明宏)が医療事故の事実を患者に説明したことを叱責した上で解雇したこと、被告(=南淵明宏)がGVHD裁判で証言するにあたり嫌がらせを執拗に行ったこと等が直接的な表現で記載されており、かつ、「(死因などを説明することは)タブーだったのです。」など、原告が医療過誤の事実を隠蔽することを常としているかの如き記載もあり、これらの表現は、医療機関である原告の信用及び名誉を著しく毀損するものであると認められる。



 他方で、〈証拠略〉によれば、「考心」は被告(=南淵明宏)による心臓手術の執刀を受けた患者及びその家族で構成される被告(=南淵明宏)を中心とした団体であり、平成13年において会員数、約四〇〇名からなる比較的小規模な団体の会報誌であり、上記表現が流布する範囲は限られていると認められることや、その他の本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、「考心」掲載文に関する原告の慰謝料と、「考心」掲載文に関する原告の慰謝料は100万円が相当である。



(3) 「読売ウイークリー」について



上記第二の一及び第三の一のとおり、「読売ウイークリー」掲載記事は医療機関たる原告の信用及び名誉を毀損する表現を含んでおり、かつ、「読売ウイークリー」は全国に頒布されている週刊誌であり、購読者数も少なくないと考えられるが、他方で、同記事中において原告名が明示されてはおらず、被告(=南淵明宏)名も仮名であることが認められるのであって、これらの事実のほか本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、「読売ウイークリー」掲載記事に関する原告の慰謝料は150万円が相当である。



(4) 「きょうの出来事」について上記第二の一及び第三の一のとおり、



「きょうの出来事」放送内容は医療機関たたる原告の信用及び名誉を毀損する表現を



含んでおりかつ、上記表現はテレビ放映という方法を採ってなされたものであり、視聴者に対し強い印象を与えるものであると考えられる上、「きょうの出来事」は全国的に放送されているテレビ番組であり、視聴者数も多いと考えられるものであるが、他方で、上記番組中で原告名は明示されていないのであって、これらの事情のほか本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、「きょうの出来事」放送内容に関する原告の慰謝料は150万円が相当である。



(5)弁護士費用



<証拠略>によれぱ、原告は本件訴訟の追行を原告訴訟代理人に委任したことが認められるところ、本件事案の内容、審理経過と、「考心」掲載文に関する原告の慰謝料過、認容額等に照らすと、弁護士費用とし



第四 結論



 したがって、原告の請求は、被告(=南淵明宏)に対し



て440万円及びうち金100万円に対する平成12年11月26日から、うち金150万円に対する平成12年12月24日から、うち金150万円に対する平成12年3月7日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。



(裁判長裁判官 西村則夫 裁判官 三木勇次 杉崎さつき)



弁9の該当公判部分



本速記録末尾添付の判例時報1875号を示す



これは,当審弁護人請求証拠番号9の判例時報1875号の抜粋の写しです。横浜地裁の平成16年8,月4日という判決ですけれども,判決がその次のページにありまして,その前に四角で囲った解説の。



門野坂検察官



弁護人は,それはどういう要件のもとにお示しになろうとしているんでしようか。



裁判長



申請されている分でしょう。



喜田村弁護人



はい。申請しています。



門野坂検察官



しかし,申請されている証拠と言えども規則に従えば一定の要件を備えない限りは。



裁判長



いや,いいですよ。示してください。



喜田村弁護人



まずこれを確認しますから。



裁判長



確認するんですね。



門野坂検察官



同一性の確認というごとでしょうか。



喜田村弁護人



まず同一性の確認。



門野坂検察官



しかし,同一性の確認というのは,それは,本人が作成したものかあるいは本人が何らか関与したものでなければ,そういう同一性の確認というのはできないはずです。



裁判長



本人が載っているかどうかでいいです。確認してください。



喜田村弁護人



だからそれを今確認します。



裁判長



検察官,異議なんですか。



門野坂検察官



異議です。



裁判長



弁護人の御意見は。



喜田村弁護人



何の異議ですか。



裁判長



示すことについての異議。



門野坂検察官



要件を満たしていないというふうに考えました。



喜田村弁護人



ここに記載されている被告が証人であるということを明らかにするために示すものであり,異議は理由がないと。



裁判長



異議は棄却します。



喜田村弁護人



「被告」として「甲野太郎」という仮名になっていますけれども,これは証人のことですか。



これがどのような形でこういった文書になっているのか,側面に「判例時報」というふうに書いてあるわけですけれども,実際にこれが甲野太郎というふうになっている。



裁判長



それは仮名処理されているんですよ。



ええ。いや,ですからこれはこの判例時報をお書きになられた方に聞けばすぐ分かることではないでしょうか。



喜田村弁護人



それはそれで結構ですが,その事件は,勤務医が自分の勤めている病院の医療過誤により死亡した元患者の遺族に協力したために解雇されたと発言したため,病院がこの勤務医を名誉毀損で訴えたんですね。



はい。



判決では,この勤務医が無断で他の病院でアルバイトしたりベンツの供与を受けていることが発覚したために退職を求められ,本人もこれを了承して退職したと認定し,勤務医の発言は真実ではなく真実と信じるについて相当の理由もないとして名誉毀損の成立を認めたと,そういう判決なんですが,ごくごく概略を説明いたしましたが,そのことと横浜地裁で平成16年の8月4日の判決であるといったこと,そのことを考えて,そこに記載されている被告というのはあなたのことですか。



その仮名処理というには裁判長おっしゃるとおりそれなりの理由があると思うんですけれども,そもそも私のような一般の人間が裁判にかかわって証言するにおいて,被告人だけでなく証言する人間もそれなりに裁かれる,そのような面持ちを禁じ得ないのでありまして,本日も今日ここに向かうに至り,確かに佐藤医師が被告人ではありますけれども,私自身も日ごろの行状を裁かれるというつもりでここの法廷には参っておりますけれども,また私もこれまで49年間人間として生きてきて,多くの間違いを犯し,その間違いに気付かずいまだに過ごしていることもあろうと思いますけれども,その間違いうんぬんそれぞれが,こういった形の裁判において,それぞれ白日の下にされていくべきものなのかということにつき,私個人の利益うんぬんを考えるのではなく,こういった裁判における証言者の立場というものをある種考える意味で,この判例時報の挙げられた甲野太郎が仮に私だとして,それが今まで私自身,一審それからこの控訴審において今回で4回目,1回に3時間以上何も持たず何もメモできず尋問され,本日に至っては随分前のあなたこう言ったじゃないですか,これはどうですかと,いちいち私がまるで罪人のごとく,それはいいんですけれども,尋問される,そういったものに僕としては耐えてきたつもりなんですけれども,とにかくそういったことで証人の証言力に信憑性がないというそういう目的,弾劾証拠とでも言うのでしょうか,そういうことでこういったことをお出しになるのであれば,もっと最初の時点で,私がこの少なくとも控訴審においての時点でかかわる前に,本件における中立な証言を述べられる価値なしというふうな異議を申し立てていただければよかったのではないかなと思うんですけれども。



(証人が泣きそうな表情になったため、)



裁判長 弁護人もうそれくらいで勘弁して・・・



弁8



標目:「週刊医学新聞」(2004年2月16日)



作成者:医学書院



立証趣旨:南淵が、

「この手術室にゼニと名声が埋まっている」

と発言したことなど



証拠:略



弁8該当公判部分



本速記録末尾添付の週刊医学界新聞を示す



これは,当審弁護人請求毎拠番号8の週刊医学界新聞の抜粋の写しです。これも発言の有無の確認だけをいたします。医学書院というところからとった週刊医学界新聞というところですけれども,東京医科大学の方が証人巨という名前が出ている人に対してインタビューしていると,その結果が記載されているんですけれども,それの2ページ目を見ると,写真の下のところに発言が載っていて、証人が、この「手術室にゼニと名声が埋まっている」という発言をしたというふうな記載になっているんですけれども,証人御自身の発言ですか。



僕が発言したことになっていて,こういった形でパブリッシュされるということに僕自身が承諾したというのは事実です。



事実。



はい。







--------------------------------------------------------------------------------

[i] 「訴訟法的事実を認定するには、いわゆる自由な証明で足りる」とするのが最高裁の立場であるが(最高裁1973〔昭和58〕年12月19日第一小法廷決定・刑集37巻10号1753頁)、ここにいう「訴訟法的事実」とは、当該最高裁決定の判例解説が説明するとおり、「刑罰権の存否及び範囲を定める事実すなわち実体法的事実、換言すれば罪となるべき事実及びこれに準ずる事実(たとえば累犯加重の事由となる前科)、に対立する意味で用いられている」(最高裁判例解説刑事篇昭和58年度版491頁)。



 したがって、弁1ないし弁9は、いずれも検察官申請証人の信用性にかかる証拠であり、罪となるべき事実及びこれに準ずる事実とは関係がなく、自由な証明の対象になるものである。



 「『自由な証明で足りる』とは、刑訴法319条以下の規定に照らしての証拠能力を備えた証拠による必要はないという意味である」(前掲最高裁判例解説同頁)から、自由な証明の対象となる弁1ないし弁9は、検察官の同意なしでも、証拠として採用可能である。






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やっと読めた

さすがに長い、本当に長い。
紫色先生の怒りが静かに爆発したようなお話です。

私も取り上げようかと思いましたが、
かの名医がまた何か発言したときに
カウンターパンチに温存しておきたいと思います。

どうせそのうちされるでしょうから。

何か、ため息が出ました……

 ブログのご紹介ありがとうございました。
今後、医療裁判に証人として南淵医師が関係していい加減なことをいっているようであれば、判決文をどんどん証拠として提出するべきでしょう。
 刑事ですら証拠として認められたのですから、民事は証拠は出し放題なので、簡単に証拠として認められます。
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