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■ますます萎縮する医療 「射水市民病院の延命中止、元外科部長を殺人容疑で書類送検へ」

非常に微妙な問題であることを

最初にお断りしておきます。





ただ、

人間はいつか死ぬもので、

生死にかかわる医師が

簡単に”殺人”として

訴えられるのなら、

この国に生死にかかわる医療を行う医師は

いなくなってしまうことでしょう。








殺人容疑で書類送検…。

この結果で、医療現場では

「一度、人工呼吸器をつけると

二度と死ぬまではずせない」

という事になるでしょう。





例えば、

救急医療の現場で、

瀕死の重傷の患者さん。

家族に「人工呼吸器をつけますか?」

と聞けば、とうぜんOKになるでしょう。



でも、数ヶ月たっても

まったく回復の見込みがなく、

でも人工呼吸器をはずせば死んでしまう、

そんな状況になる方もいます。





家族は「どうにかなりませんか」と聞きますが、

医師は「日本では、これをはずすと”殺人”となります」

と答えるしかありません。




家族は、

「え!?はずせないのですか?」

とビックリします。

医師は苦渋に満ちた顔で

「はずすと逮捕されたり、書類送検されます」

と答えるしかありません。



場合によっては

脳死判定する事が可能ですが、

脳死の場合は、移植を前提にしているため、

さらに判定には超えなくてはいけない条件が

多数あります。






ガンの末期も同様です。

多くの方が、

救われる見込みのないまま、

人工呼吸器につながれています。




一度つないだ人工呼吸器をはずすことは

もう出来ません…。

殺人で書類送検されるからです。




医師は断固として、

家族の申し出を断るしかありません。



でも、これが正しいことなのでしょうか…?







射水市民病院の延命中止、元外科部長を殺人容疑で書類送検へ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080510-00000004-yom-soci
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/terminal_care/?1210388122

5月10日3時7分配信 読売新聞


 富山県射水(いみず)市の射水市民病院での延命治療中止問題で、富山県警は、人工呼吸器が外されて死亡した末期がん患者ら7人全員について、元外科部長の伊藤雅之医師(52)を早ければ月内にも殺人容疑で富山地検に書類送検する方針を固めた。
 今回の問題をきっかけに、医療現場での延命中止の是非が議論となり、県警は伊藤医師を書類送検するかどうかを慎重に検討していたが、富山地検に捜査当局としての判断を委ねることにした。

 捜査関係者らは、伊藤医師が、外科部長として勤務していた同病院で、2000年9月~05年10月、主治医などを務めた54~90歳の男性4人と女性3人について、人工呼吸器を外すなどしたことにより死亡させたとしている。

 伊藤医師が呼吸器を外さなかったケースもあるが、県警は、患者7人について報告を受けるなど治療について責任ある立場だったことを重視した。

最終更新:5月10日3時7分






”謙抑的”に医療問題に当たっている

警察、検察は

やはりまったく姿勢は変わらないまま、

医療を裁き続けます。





医師の多くが、

「能力はあるが、訴えられるのが恐くて最前線から退いている」

現状を、日本の政府は全く放置しています。




このような状況では

近いうちに医療は崩壊することでしょう。








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コメント

素人の意見ですが・・・

人工呼吸器を外したくても外せないのであれば、厚生労働省が抑制したくて仕方ない医療費はますます高騰し、病院の中で、限られた台数の人工呼吸器が、本当に必要な人に使えず、そして病人を抱えているために仕事を辞めざるを得なくなる人が増え、就労している人が減るため、税収はますます減り、そのためにまた締め付けがひどくなり・・・
と、色々な弊害がまた出て来そうですよね。

法律の保護が無いのに

医師個人の価値観だけで人の生死を多少なりとも左右したりするとこの国では刑事立件されるという事例ですね。立法の怠慢と司法警察行政の権益拡大の動きが日本をダメにしています。

  家族の関与がまったくないとは思えませんが、医師が殺人罪ならば、家族は殺人教唆になるのでしょうか? 私は法律はド素人なので、教えて頂ければ幸いです。

殺人を教唆すること。 他人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する(刑法第六十一条)。 そのため殺人罪となる。 当然、教唆者を教唆した人にも、この法律が適用される。  (はてなダイアリーサマより 有難うございました)

次の段階として、「呼吸器をつなげば延命ができたのにつながなかったから生きる機会を奪った」と殺人罪に問われる人が出るでしょうね。

国は診療報酬で延命治療を激しく抑制しようとしているのに、片一方で延命をやめた医師を殺人罪で訴える。

よっぽど医者が憎いんでしょうかね。この国は。
国民の健康に寄与し、日本の爆発的な経済発展を間違いなく下支えした医療集団を、いま、完全に切り捨てようとしています。
もう、救急医療はしてはいけない、カンボジアの地雷原より危険な領域に指定されそうです。

人工呼吸器に繋げばこの場は助かるかもしれないが、意識は回復しないまま長期化するかもしれない。
いちかばちか、やってみるか....

と思うことは過去多々ありました。
最近は、この台詞を思い出してしまいます

そう 
あの名言

いちかばちかでやってもらっては困るby K検事

「送検」の意味

 「送検」は刑事訴訟法第246条で規定されている警察の手続き(義務)に過ぎないので、「送検」したことで警察を批判することは誤りであるようです。(「元検弁護士のつぶやき」で勉強させていただきました。)
 今後、起訴するかしないかの検察の判断に注目したいと思います。

 現時点では、「送検=有罪濃厚」という「誤った」印象操作をしているマスコミを批判すべきです。

 それと、問題は、現在の法体系では、回復していない患者の人工呼吸器をはずすと「殺人容疑で捜査される」という現実です。

刑事訴訟法第246条
 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。

おだまき 様
>家族は殺人教唆になるのでしょうか?

 (はっきりと覚えているわけではないのですが、)
 理論上は殺人教唆になる可能性があるそうですが、運用上は不起訴とされているそうです。
 「元検弁護士のつぶやき」で、過去に議論されていましたので、ご確認いただければ幸いです。

もう,人工呼吸器はつけられない。

CPAで挿管したあと、
人工呼吸器に任せて他の処置をすることもできなくなりそうです。

私は絶対にはずしません
逮捕されたくないからw
家族にも、はずすと殺人罪になるからと説明してます
癌の末期の場合は、事前に家族にムンテラして
レスピは使わない方向にしてます(ホントに無意味だから)
救急は...ホント、2次救急やめてよかったーw

通行人サマ
 有難うございます。 ご指摘のブログで勉強してみます。 今後とも、宜しくお願いします。

(当時)二年目の医師が書類送検

くも膜下出血見逃し女性死亡 佐久病院医師を書類送検
http://www.shinmai.co.jp/news/20080513/KT080513FSI090008000022.htm

県厚生連佐久総合病院(佐久市臼田)で2004年10月、頭痛を訴え受診した佐久市岩村田、主婦小林美幸さん=当時(55)=がくも膜下出血で死亡し、夫の哲さん(59)夫が医療ミスがあったとして告訴していた問題で、南佐久署は13日、診察した同病院の深沢正之医師(29)=佐久市中込=を業務上過失致死の疑いで地検佐久支部に書類送検した。

受診時に小林さんはくも膜下出血の恐れを伝えたが、深沢医師はCT(コンピューター断層撮影)検査などをしなかったという。深沢医師は研修2年目で、当日は土曜日だった。

哲さんは「医師はくも膜下出血の症状をよく知らなかったようで憤りを感じる。病院側は示談を申し込んできたが断った。起訴されるか経過を見守りたい」と話した。

---------------------------------

起訴されるかどうかはまだわかりませんが、その前に「○○の症状をよく知らなかったようで憤りを感じる」という遺族コメントが全国報道されてしまうんですな。信条を考えると遺族は仕方なくもないが、報道姿勢があまりにも一方的(いつものことですが)。仮に不起訴処分でも、こんな内容で実名報道されて平気な顔をしていられるはずがない。マスコミは報道の自由を盾に、よほど救急崩壊に加担したいようで・・・・・

結果責任を取る気なんか一切無いけれど、報道たれ流しの特権は譲らないぜ!という態度に見える。

私は今は救急現場に出ることなどありませんが、この(↑)報道見たらそろそろ我々病理医も術中迅速診断あたりは止めた方がいいんじゃないかと思ってしまいました。

救急現場医師に対し、
「○○の症状をよく知らなかったようで憤りを感じる」→書類送検→このコメントがそのまま医師実名入りで全国報道。

迅速で正しく診断できなかった病理医に対しても、 
「○○の組織所見をよく知らなかったようで憤りを感じる」→書類送検→このコメントがそのまま医師実名入りで全国報道。

エエッ!?そんなのいくらでもあり得るゾ・・・・・
(こいつの応用範囲は無限に広がりますね)
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フルコースをこなしたため貧乏から抜け出せず。
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大学から地域(僻地ともいう)の救急医療で疲弊しました。
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田舎で開業、借金は天文学的数字に。


今は田舎で開業して院長になりました。
でも、教授に内緒で開業準備していたころのハンドルネーム”中間管理職”のままでブログを運営してます。

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