2013/06/21
あまり取り上げられていないノバルティス論文疑惑。
コンプライアンス違反だけではなく
データ改ざんの可能性があるようです。
ノバルティスの元職員は
身分を隠してデータ解析したようです。
3000人の大規模臨床試験が論文取り下げ。
教授は職を辞し、懲戒解雇必至。
でも、全然報道されていません。
これも企業努力なのでしょうか?
ノバルティス論文疑惑、バカを見るのは患者?
臨床試験に社員が身分を隠して関与。データ捏造の可能性も岡田 広行 :東洋経済 記者
2013年06月09日
http://toyokeizai.net/articles/-/14212高血圧症治療薬(降圧薬)の臨床試験で、
前代未聞のスキャンダルが持ち上がっている。スイス大手製薬会社の
ノバルティスファーマが販売する
降圧薬バルサルタン(商品名ディオバン)について、五つの大学で行われた臨床試験に
同社の社員(現在は退職)が
身分を伏せて加わっていたのだ。その社員は統計解析を担当していた。
ノバルティスはこれまで「五つの臨床試験はいずれも医師主導の試験であり、当社はデータ解析を含めていっさい関与していない」と説明していたが、5月22日にそれを撤回し、一転して関与を認めた。
これを受けて、24日に記者会見を開いた日本医学会と日本循環器学会は、京都府立医科大学を中心に実施されたバルサルタンを用いた「キョウトハート試験」について、(製薬会社社員の身分や寄付金の事実を開示しないなど)「利益相反状態の申告が不十分だった」(曽根三郎・日本医学会利益相反委員会委員長)との見解を明らかにした。
キョウトハート試験については、海外の専門誌に掲載された複数の論文でノバルティスからの寄付を受けて研究が実施された事実がまったく書かれていなかった。元社員がノバルティスの社名を隠し、大阪市立大学非常勤講師の肩書を用いていたことも判明した。
もっともここまでであれば、コンプライアンスにかかわる問題として幕引きを図ることも可能かもしれない。だが、さらに大きな問題が持ち上がっている。
データの捏造や改ざんの疑惑がくすぶっているからだ。
不自然な試験結果疑惑の火付け役となったのが、2012年4月に英『ランセット』誌に掲載された由井芳樹・京都大学医学部附属病院医師による論文だった。この論文で由井氏はランセット誌に07年4月に掲載された東京慈恵会医科大学を中心とした「ジケイハート試験」およびキョウトハート試験の結果について「ストレンジ」(奇妙)と指摘。バルサルタンを用いた患者の血圧の平均値および標準偏差と比較対照群のそれが試験終了時にぴたりと一致していることについて疑問視した。
その後、疑惑はさらに深まっていった。12年10月には日本循環器学会の複数の学会員から、キョウトハート試験に関する論文データに疑義があるとの指摘が、学会誌の編集長に伝えられた。事態を重く見た循環器学会が試験論文の責任著者およびノバルティスの執行役員にヒアリングを実施したところ、
責任著者から編集長宛てに二つの論文の取り下げをしたいとの申し出があり、12月27日付で論文は撤回された。さらに今年2月1日には、キョウトハート試験のメイン論文について、欧州の専門誌が掲載を取りやめた。
3000人以上の患者を対象とした大規模試験に関する論文が撤回されるのは極めて異例だ。
4月11日には、キョウトハート試験の統括責任者だった
松原弘明・京都府立医科大学元教授(2月28日に退職)の
発表論文14本52カ所でデータの捏造や改ざんがあったことが大学の調査で判明。キョウトハート試験は調査対象に含まれていなかったものの、同試験の信頼性は大きく揺らいでいる。
患者がバカを見るノバルティスにとって、バルサルタンは日本での売上高が1000億円を超える看板商品だ。同社は五つの臨床試験に対する組織ぐるみでの関与を否定するが、これまで臨床試験に関する論文が学会で発表されると同時に「複合心血管イベント発症の危険率が45%減少」などと大々的にアピールしていた(下写真)。
業界誌には「ディオバン発売10周年記念特別座談会」などとうたい、11~12年には8回に上る企画広告を掲載した。そこでは、キョウトハート試験など医師主導試験の責任者や学会の「キーオピニオンリーダー」が登場し、「(バルサルタンの投与群で)脳卒中の相対リスクは45%、狭心症の相対リスクは49%、おのおの有意に減少した」(前出の松原氏)などと宣伝していた。
「そもそも降圧治療間の比較で、血圧に差がないのに心血管イベントのリスクが大幅に異なることは考えにくい」
こう指摘するのは、臨床試験のデータ解析におけるわが国での第一人者として知られる大橋靖雄・東京大学大学院医学系研究科教授だ。
数多くの臨床試験に関与してきた大橋教授は次のように語る。
「キョウトハート試験など今回問題になっている試験では、プライマリーエンドポイント(主要評価項目)に医師の裁量が入る主観的な項目が多く、信頼性に難がある。そのうえ一連の試験の論文からは、データのモニタリングや監査をしっかりやっているようには見えない。それゆえ、試験結果を額面どおり受け止めることは難しい」
疑惑が深まる中で、一連の試験を主導した各大学は、データの信頼性に関する調査を開始した。しかし、カルテ保存義務の5年が過ぎていることや統計解析を元社員に任せきりにしていた疑いがあることから、真相究明は難航が必至だ。そもそも大学側に、自らの非を認める自浄作用があるのかも定かでない。結局、患者がバカを見るのかもしれない。
(週刊東洋経済2013年6月8日)
こちらが教授の論文ねつ造疑惑、退職の記事です。
元教授の14論文に捏造・改ざん…京都府医大2013年4月12日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20130412-OYT8T00891.htm 京都府立医大(京都市)は11日、2月末に辞職した
松原弘明・元教授(56)(循環器内科学)が関与した
論文計14本で52件のデータの捏造(ねつぞう)や改ざんがあったと発表した。
松原元教授らが2004年に実施した臨床研究で、学内の倫理委員会に提出した論文も含まれており、同大学は「研究者としての倫理観が欠如している」と批判した。今後、懲戒相当として退職金の返還を求めるべきかどうかなどを審査する方針。
同大学によると、11年6月頃からインターネット上の書き込みなどで不正の指摘があり、同年12月に調査委員会(委員長=木下茂副学長)を設置。松原元教授が03年まで在籍した関西医大時代も含め、1999~2011年に発表した計18本を調査した。
論文は、特定の細胞を増やす作用があるとされる幹細胞の注入で、動物の血管が増えるかどうかなどを調べたという内容。この日公表された報告書によると、01~11年の14本で、細胞などの画像の一部を切り取って別の画像としたり、グラフの折れ線を上下反転させて別の論文で使い回したりしていた。松原元教授がデータの基になる実験ノートなどを調査委に提出せず、明確に反証しなかったことから、「捏造や改ざんが行われた」と結論付けた。
松原元教授が直接捏造に関わったり、指示したりしたのかという点は確認できなかったが、
14本すべてに関与しているのは松原元教授だけであり、「松原氏の研究室の指導監督体制に本質的な欠陥があり、責任は極めて重い」と指摘した。
04年に松原元教授らが急性心筋梗塞の男性患者に行った血管再生の臨床研究については、03年に倫理委員会が研究計画を審査した際、松原元教授らが02年に発表した論文も参考資料となった。幹細胞の注入により、心筋梗塞のブタの心臓で血管が増えたという内容だったが、報告書は、血管本数が実際よりも多いように画像が改ざんされていた、と認定した。
ただし、倫理委審査では、人間に対して類似の治療を行った海外の研究例も参照しており、安全性の確認に問題はなかったとした。
この日、記者会見した木下副学長は「不正を見抜けなかったことは遺憾。今後こうした不正が起こらないようにしたい」と話した。
松原元教授の代理人の弁護士も京都市内で記者会見し、「松原元教授は改ざん、捏造をしていないし指示もしていない。事実認定の手法はずさんで、適正な調査とはいえない」と反論した。
ノバルティスのHPでは
身分を隠して、コンプライアンスには違反したけど、
データ改ざんはしてません、
という方向で切り抜けたいようです。
http://www.novartis.co.jp/valsartan/
バルサルタンの医師主導臨床研究における
利益相反の問題に対するお詫びと対応について2013年6月3日
ノバルティス ファーマ株式会社は、日本で2001年から2004年の間に開始されたバルサルタンの5つの医師主導臨床研究に、当社元社員がかかわり、かつ、研究論文に開示が適切になされなかったことにより、日本の医師主導臨床研究の信頼性を揺るがしかねない事態を生じさせたことを深く反省し、心よりお詫び申し上げます。
当社のこれまでの調査によれば、元社員は、研究によってはデータの解析などにかかわっていたことが判明しましたが、
データの意図的な操作や改ざんを示す事実はありませんでした。また、バルサルタンの医師主導臨床研究の論文に
元社員が当社の所属であることが表記されていなかったことについて、当社は、著者に対して適切に訂正を申し出ておりませんでした。
これは、利益相反の観点から不適切でした。
また、利益相反の開示が不適切であることを認識できずに、5つの医師主導臨床研究の論文を引用してプロモーションを行ってきたことにつきましても、心よりお詫び申し上げます。
外部の専門家による調査は継続しておりますが、その結果を待たずともすでに明らかとなった事実を重く受け止め、当社の社会的、道義的責任を果たすためにも早急に再発防止に取り組むことといたしました。
これまでの調査で判明した問題点とその原因
(1) 利益相反および医師主導臨床研究に対する理解不足:
これらの臨床研究が開始された2001年から2004年当時、医師主導臨床研究における利益相反を明確に規定したガイドラインがありませんでした。このため、元社員およびその上司は、製薬企業の社員の医師主導臨床研究に対するかかわり方について理解が不足しておりました。さらに、当社の教育が不十分であったため、開示の在り方についても正しく理解していませんでした。
(2) プロモーション資材の審査プロセスの不備:
当社では、研究論文を引用したプロモーション資材は、社内審査委員会の承認を得なければいけない規則になっています。しかし、この委員会は、資材が薬事承認の範囲内であることの確認や、有効性と安全性の情報が適正に記載されていることなどについて厳正に審査しておりましたが、資材に用いる研究論文を当社との利益相反の観点からチェックする機能を有しておりませんでした。また、社員が臨床研究に関与していることを記録する仕組みもありませんでした。
当社の取り組み
(1) プロモーション資材の審査プロセスの厳格化:
プロモーション資材の審査委員会で利益相反についてもチェックができるようにするため、現行審査プロセスを厳格化します。また、こうしたプロセスの変更を速やかに社内研修教材に反映します。さらに、社員のアカデミアとの兼業や社外における研究活動をモニター及び記録する社内規定を制定し、潜在的利益相反の確認と適切な対応を徹底します。
(2) 社内教育の徹底とプロモーションの自粛:
社員に対して、利益相反、医師主導臨床研究に対する法令並びに社内基準、プロモーション、コンプライアンスに関する法令、ガイドライン、業界団体ルールおよび社内行動規範を徹底的に研修し、社員教育を行います。
このため、7月1日から5日まで、当社の全ての医療用医薬品に関するプロモーション活動を停止します(学会共催のセミナーを除く)。
(3) バルサルタン関連講演会の自粛:
2013年6月から8月までの3カ月間、バルサルタン関連の講演会を自粛します。
(4) 関係役員の報酬の減額:
医師主導臨床研究の信頼を揺るがす事態を生じさせたことで関係各位に多大なご迷惑をおかけし、バルサルタンを服用されている患者の皆様やそのご家族にご心配をおかけする事態をまねいたことを深く反省し、お詫びいたします。それらの意を表するため、当社代表取締役社長はじめ関係役員の月額報酬を2カ月間10%減額することを決定しました。
今回問題となった医師主導臨床研究は、バルサルタン(製品名:ディオバン®錠)の承認取得、あるいは添付文書の改訂には使われておりません。したがって、ディオバン錠の添付文書の情報に何ら変更はございません。本剤の有効性・安全性の評価に問題がないことについて患者の皆様やそのご家族、および医療従事者の皆様方のご理解を賜りたくお願い申し上げます。
当社は、日本における医師主導臨床研究の独立と信頼の重要性を改めて強く認識しております。高い倫理観と社会的責任が求められる製薬会社として、二度と同様の行為をおこさないよう徹底した対策を講じて、信頼を取り戻すよう全社を挙げて努力してまいります。
以上
さてさて、
どうなるでしょう?
今後の報道が気になります。
もう二度と報道されなかったりしてね。
ご参考になりましたら幸いです。
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