2010/06/24
物事にはいろいろな面がある、
ということ。
以前にも複数回、自殺未遂された方が
当直しているときに搬入されたことがあります。
家族は
「病院は救って当然」という態度で、
我々は必死に夜中じゅう救命処置に
かかわりました。
なんとか救命できたあと、
翌日からぷっつりと家族は来なくなり、
患者さんも当然のように
医療費を踏み倒して
退院されていきました。
後日、半年もたたないうちに
また自殺未遂で搬入されたと
当直医に聞きました。
救急をする前に
別にすることが
あるのではないでしょうか。
まずは救急搬送側。
こころを救う:過量服薬、救命現場が警鐘 治療薬、自殺手助け毎日新聞 2010年6月24日 東京朝刊
http://mainichi.jp/life/today/news/20100624ddm001040046000c.html 自殺者が12年連続で3万人を超えた。心を病んだ人が治療を受ける機会は増えているのに歯止めがかからない。命を絶つ前に精神科や心療内科を受診していたのは半数に上るという調査もある。救えない命だったのか。医療現場から自殺対策の課題を探る。
◇精神科乱立、安易な処方も
「お薬飲んじゃったんですか」。「どこでもらったんですか」。6月初旬、東京都武蔵野市の武蔵野赤十字病院救命救急センター。救急医の呼びかけに、運び込まれた女性(37)はうつろな目でわずかにうなずく。医師3人とともに処置に追われる須崎紳一郎センター長(55)に、救急隊員が空の菓子袋を差し出す。中にあった
向精神薬約200錠はすべて女性が飲んでいた。
重症者が年間1400人搬送される都内有数の救急病院。
向精神薬を大量に飲んで自殺や自傷を図る患者は増え続ける。若い世代を中心に年150~160人。
全体の1割を超えた。搬送前に死亡が確認された人は、ここには運ばれてこない。
生死にかかわる過量服薬があまりに多いため、患者の回復後に病院が聞き取りしたところ大半が市販薬ではなく、精神科診療所などの医師が処方した薬と判明した。一度に飲んだ量は平均100錠になる。
「これほど大量なのに処方はわずか数日分。治療薬が逆に自殺行為を手助けしている」と須崎医師は憤る。
患者の一人が飲んでいた薬のリストがある。1回分が7種類。「これもこれも、名前は違うがすべて睡眠薬。1種類でいいのに。こんな処方は薬理学上あり得ない」。最も多い人は抗うつ薬4種類、睡眠薬4種類、抗不安薬2種類など一度に14種類を出されていた。複数の精神科専門医は「常軌を逸している。副作用に苦しんだり薬物依存に陥る可能性も高くなる」と指摘する。
搬送患者の通院先を調べると、
いくつかの医療機関に絞られた。便利な「駅前」が目立つ。須崎医師は「薬物治療の知識が足りないのか、患者の要求通りに出しているのか……」と不信を募らせる。
08年の全国の精神科・心療内科の診療所は3193。10年間で5割増えた。向精神薬の市場も成長し、調査会社「富士経済」によると、08年の売り上げは10年前の2倍以上にあたる約2976億円。国は自殺対策基本法で「自殺のおそれのある人へ必要な医療を適切に提供する」とうたっているが、受診が広がる中、医療機関の質のばらつきが際立つ。
過量服薬した後のケアも自殺対策の大きな柱だ。未遂者は、その後既遂に至る割合が格段に高いとされるためだ。ところが、入院させて心身両面から治療できる総合病院の精神科は診療報酬が低く、病院経営を圧迫して減少の一途。一方、勤務医は診療所を開業する。武蔵野赤十字病院にも精神科の入院病棟はない。体が回復すれば退院せざるを得ないため、心の継続的なケアは難しい。
須崎医師らは患者の家族を交えて相談し、元の医療機関へ通院するしかない場合は、主治医あての紹介状を持たせて送り出す。「自殺予防に十分配慮をお願いします」。しかし、
再び大量に処方された薬を飲んで運ばれてくる患者は少なくない。「救急で命を救っても、これではむなしすぎませんか」【江刺正嘉、奥山智己、堀智行】
==============
■ことば
◇向精神薬
中枢神経系に働いて精神機能に影響を与える物質。作用によって▽睡眠薬▽抗不安薬▽抗うつ薬--などに分類され、治療での適正な使用が求められている。物質によっては、依存性と乱用で心身に障害を引き起こす危険性がある。
こちらは処方している側。
こころを救う:さまよい12年 うつ病男性、処方200錠で自殺未遂毎日新聞 2010年6月24日 東京朝刊
http://mainichi.jp/life/today/news/20100624ddm041040071000c.html ◇「いつまで薬を飲み続ければいいのか」
「もう消えたいんですけど」。誰かが書き込むと知らない誰かが応える。「起きてると辛(つら)くなるからゆっくり休んでね」。心を病む人が集い、病状や処方薬の情報を交換するインターネットの「メンタル系サイト」。ハンドルネーム・ロボ(41)のサイトもその一つだ。うつ病と診断されて12年、診療所を転々とした。「いつまで薬を飲み続ければいいのか」。ロボの書き込みに目が留まり、取材を申し込んだ。
東京都内の心療内科にかかったのは、企業の
システムエンジニアをしていた98年。不況のさなか、自殺者が3万人を初めて突破した年だ。深夜勤務が続き、不眠に悩んだ。医師は抗不安薬3種を処方した。不調を訴えると効き目の強い薬を次々に出され、7種類に増えた。緊張や不安は治まらない。持ち帰る薬の袋だけが膨らんだ。
03年に千葉県へ引っ越し、診療所も転院した。待合室はいつも満席で2時間待ち。「調子はどう」「薬出しときます」。診察は1分で終わる。相談したいことがあっても医師は「大変だね」としか口にしない。
欠勤が続き会社を解雇された。再就職活動でうつ病と打ち明けたことがある。「君、廃人だな」。不採用通知が届いた。2年後に就職できたシステム会社でもたびたび欠勤した。父は「ぜいたく病だ。明日から仕事に行け」と言う。行きたくても体が動かない。ため込んだ処方薬200錠を口に放り込んだ。目が覚めたのは、集中治療室から病棟に移った2日後だった。
退院後、かかりつけの診療所の医師は「自殺を図るような患者はもう診ない」と告げた。医者なんて頼れない。処方せんさえもらえればいい。そう割り切り、診察を続けてもらえるよう頭を下げた。同じ病のネット仲間だけが支えだった。
◇ ◇
04年春、関西に住む一つ年下の介護士の女性がサイトを訪ねてきた。ロボが自殺を図った日、同じことをして入院したという。うつ病になってからも激務が続き、一人病と闘っていた。「ここに来て友だちがいっぱいできたよ」。そう喜ぶ彼女と付き合い始め、東京で2回デートした。1年後、突然目の前から消えた。向精神薬を大量に飲んで意識が戻らなかった。
女性が懸命に生きてきたことを知っていた。だから彼女の分まで生きようと思った。近所にできたクリニックを受診した。これまでと違う医師の助言を聞きたかった。女医は処方薬の多さに驚いた。長年服用した薬を急に切ると心身の負担が大きい。「少しずつ減薬していきましょう」。医師が話に耳を傾けてくれたのは初めてだった。4年たち、初めて薬を1錠だけ減らせた。
私はロボが住む街を歩いた。駅前のあちこちに精神科診療所がある。処方薬を大量に飲んで救急搬送される患者が絶えない診療所があると聞いた。院長は取材に答えた。
「他の病院で私の評判が悪いのは知っている。でもそれは、過量服薬するような患者をやっかい払いしないで、すべて受け入れているからだ。医者の哲学として。だから
(治療に)失敗しても試行錯誤しながらやっている」 この日診療所には200人以上が訪れた。その手に処方せんを握り、再び街に消えていく。医者も患者も出口の見えないあい路をさまよっているようだった。
病んだ心を誰が救うのか。自殺者3万人時代。ロボもその一人になっていたかもしれない。
◇ ◇
ロボのハローワーク通いは続く。気持ちが落ち込み、しばらくネットの更新を休んだ。目が覚めてカーテンを開けるとマンションの間に朝焼けが広がる。もう一度、元気に働きたい。
「ロボ、大丈夫?」。久しぶりに開いたサイトに誰かの書き込みが並んでいた。【堀智行】
==============
情報やご意見をメール(t.shakaibu@mainichi.co.jp)、ファクス(03・3212・0635)、手紙(〒100-8051毎日新聞社会部「こころを救う」係)でお寄せください。
いろいろな考え方があるのは
いいと思います。
しかし、
実際に自殺者、自殺未遂者を大量生産している
クリニックがあることも確かです。
>他の病院で私の評判が悪いのは知っている。>でもそれは、過量服薬するような患者をやっかい払いしないで、すべて受け入れているからだ。>医者の哲学として。だから
>(治療に)失敗しても試行錯誤しながらやっている」改正貸金業法といっしょで
制限を加えると
そこからはみ出す人が大量に出てきます。
あまりに制限がきついと
”闇”に流れることでしょう。
ただ、現状でいいわけではありません。
日本という国がもつ心の闇が
自殺へと導かれていきます。
「最小不幸」という気持ちの悪い概念が
全体を平坦化させ、
突出しているところの足を引っ張り、
結局は社会全体を沈没させるような国、日本。
その歪みが最終的に
現場におしよせています。
日本医療、日本の社会は
どのような方向を目指しているのでしょう?