2009/01/10
ネタ元は、
新小児科医のつぶやき
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20090110です。いつも大変お世話になっております。
金持ち父さんシリーズの
ロバート・キヨサキ氏は
大変重要なことを言っておりました(1)。
知識=情報+教育上の2つの記事は
一体どうしちゃったんでしょう、
というぐらい
偏っています。
>35歳の女性>重度のアルコール性肝硬変ということですが、
35歳でアルコールによる肝硬変
多量の腹水がたまる状態になるって
かなりすごい印象です。
その場合、
肝機能の低下に合わせて
凝固能(血液を固まらせる能力)
も低下することが多く、
ちょっとした傷でも止まらず、
ちょっとした事でもない出血したり、
鼻血が続いたりすることがあります。
たとえ情報があっても、
適切な教育がなければ
おかしな結論にしかならない、
ということなんですが、
医療報道ではそれが
「一般市民の正論」
としてまかり通っています。
いわば、
「間違った回答をごり押しして正解と言い張っている」
状態なのです。
われわれ医療者側からすると、
マスコミの報道は
とても感情的で、
狂った嵐のようです。
■「病院はミスを認めていた」遺族の悲痛な訴え (MBSニュース 01/09 20:27)
http://www.mbs.jp/news/kansaiflash_GE090109181900196418.shtml 「一度はミスと認めたはず」遺族が病院の対応に不信感を募らせています。兵庫県尼崎市の病院で、女性が腹部に溜まった水を針で抜く治療を受けた後死亡した問題で、遺族が思いを語りました。
「血の海の中で寝てました、血の海。だから止血もちゃんとしないで帰されて、かわいそうに…」(亡くなった女性の母親)
事故は先月4日、尼崎医療生協病院で起きました。
患者は
重度の肝硬変で入院していた
35歳の女性で、腹部に大量に溜まった水を針を刺して抜く治療を受けました。
治療したのは20代の研修医。
1度目は失敗し、2度目でおよそ1.5リットルの水を抜きましたが、その後女性が腹痛を訴え、皮下出血を起こしていたことがわかりました。
しかし病院はすぐに血を止める治療を行なわず、数日後、輸血をしましたが、女性は先月16日、出血性ショックで死亡しました。
「娘が『失敗された、痛かった』と言ったから。『失敗したんでしょ』と言ったら『はい』って」(亡くなった女性の母親)
不審に思った家族は病院に説明を求めます。
そのとき病院側は結果的に病状を悪化させたと謝罪しました。
「出血に対して十分な対応を結果的にしていなかった。甘く見ていたんだと思う」(女性の主治医~病院の説明の記録)
「腹水を抜くのに失敗したのが原因?」(女性の母親~病院の説明の記録)
「それが大きなきっかけ」(女性の主治医~病院の説明の記録)
しかし8日開かれた会見では…。
「(Q.ミスといえるのか?)ミスという言葉を使っていいかについては、今のところこちらで判断しかねている」(尼崎医療生協病院・島田真院長)
「私らの前で言っていることと娘にも謝罪しているのにあの会見は何?とすごく腹立つ」(女性の母親)
病院側は会見で「針を刺したとき偶発的に血管を傷つけたが、治療法に問題はなかった」と主張しています。
一度は謝罪しながら、なぜミスを認めないのか、遺族は病院の対応に不信感を募らせています。
産経ニュースに至っては
病院が認めていない
「ミス」
を他紙とは違い
認めたことになっています。
何を取材しているんでしょうか?
思い込みでこういった記事を書いているんでしょうか?
尼崎医療生協病院、医療過誤で女性死亡産経ニュース 2009.1.8 01:50
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090108/crm0901080151003-n1.htm 兵庫県尼崎市の尼崎医療生協病院で昨年12月、肝硬変で入院していた同市内の女性患者=当時(35)=が、腹水を抜く際に誤って針で血管を傷つけられたことが原因で亡くなっていたことが7日、分かった。病院側は「血管を刺したことで出血が止まらず亡くなった」と
ミスを認め、遺族に謝罪した。
同病院によると、女性は昨年11月27日に入院。12月4日午前10時ごろ、主治医が立ち会い、男性研修医が腹部にたまった水を抜き出すため、針(直径約1・2ミリ)を左下腹部に刺した。1度目では水が出ず、2度針を刺したという。
女性は同日夜から針を刺された下腹部が皮下出血で赤くなり、出血が止まらなくなるなど容体が急変。6日から病院側は輸血を開始したが、16日に女性は亡くなった。死因は出血性ショック死だった。
病院側は「1度目に針を刺したときは出血は確認できなかった」としているが、この際に血管を傷つけた可能性が考えられるという。
島田真院長は「主治医も立ち会っており、態勢に問題はなかったが、肝臓が悪いため出血しやすい状態だったなど危険性をしっかりと説明するべきだった。このようなことが2度とないよう取り組みたい」としている。
女性の母親(62)は病院側の謝罪にも「家に戻ってきた娘の背中は赤紫色だった。どんなに苦しかったのだろう。もっと生きたかったはず。あの病院にさえ行かなければ」と怒りを抑えきれない様子で話している。
こちらは朝日新聞。
上記2つを見た後では
極めてまともに見えるのが不思議。
研修医が血管傷つけ患者死亡 尼崎医療生協病院asahi.com 2009年1月8日
http://www.asahi.com/kansai/sumai/news/OSK200901080045.html 兵庫県尼崎市の尼崎医療生協病院は、20代の男性研修医が入院中の
女性患者(当時35)の腹水を抜く際に針で血管を傷つけ、患者を死亡させたと8日発表した。同病院は「結果的に力が及ばずに極めて残念」とコメントし、遺族にも謝罪したという。
同病院によると、患者は昨年11月27日に重度の肝硬変で入院。12月4日に主治医が立ち会って、腹部にたまった水を抜くために医療用針(外径1.7ミリ、長さ55ミリ)を腹部に刺した。1度目では水が抜けず、2度刺したという。ところがその日夜に腹部の皮下出血が確認された。その後、貧血が進み、6日から輸血したが、16日に出血性ショックで亡くなった。
島田真院長は「
腹水を抜く方法、態勢に問題はなかった。肝硬変の症状が悪化しており、出血後、患者の体に負担をかけないよう外科的処置は見合わせたが、対応が正しかったかどうか今後検証したい」と話している。
こちらは神戸新聞です。
腹水抜く手術後、患者死亡 尼崎医療生協病院 (神戸新聞 2009/1/8 12:28)
http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/0001645860.shtml 尼崎市の尼崎医療生協病院で昨年十二月、肝硬変で入院していた同市内の女性(35)が、腹腔(ふくこう)内にたまった水を抜く手術による出血が原因で死亡していたことが八日、分かった。「家族への説明が不足していた」として女性の家族に謝罪したという。
同病院によると、女性は
重度のアルコール性肝硬変で昨年十一月二十七日に入院。その後発熱し、腹腔内に水がたまっていることが確認され、細菌感染の疑いがあるとして十二月四日、水を検査するため腹腔内に針を刺す手術を実施した。
手術は主治医が指導し、二十代の男性研修医が実施。直径一・七ミリの針を左下腹部に刺したが水が抜けず、もう一度刺したという。同日夜に皮下出血していることが分かり、容体が急変。肝硬変のため外科的処置が行えないと判断し、輸血したが、十六日夜、女性は死亡。死因は出血性ショック死だった。
島田真院長は「
この手術に出血はあり得るが、肝硬変で出血が止まりにくく、結果的に病状が悪化し、死期を早めてしまった。現時点で医療過誤とは判断していない」と説明。今後、外部の医療機関などに検証を依頼する。
35歳で重度のアルコール性肝硬変、
というなら
ほとんどの場合
重度のアルコール依存症
になっていると思われます。
門脈圧亢進症にもなっているでしょうから、
静脈はぼっこり腫れていて
触れようものならすぐ出血するでしょうし、
凝固能も落ちて
血小板の減少もあって、
万が一、穿刺して出血があっても
止血のために開腹手術はできない、
…ということですから、
一定の確率で
このようになる状況であったと思われます。
このような報道が続くと、
アルコール依存症による
重度アルコール性肝硬変の場合、
穿刺は禁忌で
放置すべしとマスコミが強く勧めている
ということなのです。
マスコミさん、
自分の言っていることが分かっているんでしょうか?
一般論で、決して今回の患者さんを
言っているわけではありませんが、
若くしてアルコール性肝硬変、
という方は
刺青入れていたり、
そのせいでB型肝炎やC型肝炎に
なっている方も大勢います。
医療現場では本当に大変、
という感じの患者さんに
分類されると思うのですが…。
あまりにも医療的IQが低くて
同じ日本語を話しているとは
思えないほどの齟齬があるのは
教育が悪いのではないでしょうか?
たとえそうでも
「ミスではない」 → 「ミスを認めた」という産経ニュースの
超能力には
恐れ入ります。
(一部、用語を訂正させていただきました。ご指摘ありがとうございました)
(1)
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私のファイナンシャルIQは
それほど高くありません…。
お勧めの一冊です。